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はみはられています。おそらく、薩摩の盗賊団の斥候かと」
俊冬が、副長に告げる。
かれには、お見通しなのである。
緊張とともに、がひきしまる。
「副長、城内の見張りがやってきます」
そのタイミングで、蟻通が報告にきた。
「よし、https://www.easycorp.com.hk/zh/offshore
https://www.easycorp.com.hk/zh/deregistration
https://www.easycorp.com.hk/zh/deregistration 揉め事は避けたい。とっととゆくぞ」
「承知」
外にでると、俊春と鳶が、眠り込んでいる見張り番たちの背を、櫓の石垣にもたせかける作業をおえたばかり。
安富と久吉は、いつでも出発できるよう待機している。
俊冬が、錠前に鍵をかける。
見張り番たちは、いかにも居眠りこきましたって態である。
これで、しばらくを稼げる。
八軒屋浜に向け、出発する。 もうこれ以上、馬車に積み込めない。
「野郎ども、そろそろ引き上げるぜ」と、山賊や盗賊の親分がいいそうなタイミングで、原田が扇立てのまえで考え込んでいる。
「おっ、こりゃなんだ?」
「やけに古めかしい扇ですな」
それに気がついた永倉と島田が、ちかづいておなじようにいろんな角度から鑑定しはじめる。
「どれ、扇いでやる」
「やめとけ。紙魚がいそうだ」
「いたって、飛びやしないだろう?」
「かような問題か?」
永倉と原田がいいあっている。
もしや、と思って二人の間をすり抜け、それにちかづいてみる。
ああ、やはり・・・。
「だめですよ。これは、歴史的価値のあるものです。家康公の「金扇の馬印」です」
「ええ、そんな昔の?なら、ぜったいに紙魚がいたな」
「おう、だからいったろうが、左之」
思わず、がくっとずっこけてしまう。
原田、永倉、問題はそこじゃない。
「なにやってる。さっさとずらかるぞ」
積み荷の状況を確認にいった副長が、戻ってきた。俊冬、尾関と沢が一緒である。
「土方さん、紙魚だらけの金扇だってよ。どうする?」
「ああ?左之、そのくれぇ、懐にいれてもってけるだろう」
「ええっ?きこえなかったのか?紙魚だらけっていったろう。いやだぜ」
「なら、金扇なんぞ、ほっとけ」
「副長、金扇って、ただの金扇では・・・」
いいかけて、ふと思いだす。 寝静まった町に響くのは、馬の蹄と荷車がきしむ音のみ。
さすがのおれたちも、だれ一人口をきく者はいない。
ってか、寒すぎて、口までかたまってしまってる。
全員、一応変装している。着物に尻端折り・・・。
このくっそ寒いなか、こんな恰好で夜の大坂の町をあるいてる。
たちよ。地球は、こんなにありのままでいてくれてます・・・。
環境保護関連ってわけではないが、おれたちは、城のぼっとん便所から汚物を回収する農民を装っている。
そういえばきこえはいいが、バキュームカーで乗りつけ、吸い上げ、つぎの提携場所へ向かう、というわけではない。
三台の荷車に、数個ずつ桶を積んでいる。
そこに、たっぷり入っているわけである。もちろん、入っているものはいうまでもなく「アレ」、である。
その「アレ」を準備したのは、双子である。
ってか、勝手にお膳立てし、おれたちに薄ら寒い恰好をさせ、まさに作戦開始のときになってはじめて、どういう設定になっているのかをしらされた。
副長もふくめ、「なにゆえ、これ、なのだ?」と、全員が声にだすことなく心中で尋ねたであろう。
もちろん、「の温暖化現象など、想像もつかない。
未来の
のみぞしる」で、答えが得らることはないが。
こんな恰好に、得物を帯びるわけにはいかない。ゆえに、三台の荷車にふり
わけ、それぞれの得物をのせている。
「之定」がないと、左腰がすーすーする。
「いっぱしの二本差しのつもりか?しゃらくせぇ」と、自分で突っ込んでおく。
それにしても、ううううさぶっ。唇が、紫色になっているに違いない。
こんな苦行をしいるとは・・・。
これはまさしく、苦行以外のなにものでもない。いったい、なんの因果でこんな薄着を?
いや、薄着なんてレベルじゃない。
だって、薄っぺらな麻の着物一枚。しかも、尻端折りをしているので、女子高生のミニスカ的に太腿が露になっている。
いい
「俊冬殿、江戸の
「まったく、朝っぱらからやかましいのう、主計?わたしの可愛いお馬さんにむかって、「ぎやあああ!」とは、いったい、なにごとだ?」
声が降ってくる。
焦点を合わせると、安富と相棒が、見下ろしている。そして、「宗匠」も。
胸の上で、いまだ「豊玉」が馬面をのせ、はむはむしながら眠っている。
動態 紋 昔、再放送でみた「ムツOロウの動物王国」か?
馬の小便を呑む、的な?
そうだ。
昨夜、副長と双子と打ち合わせをおえてから、双子と一緒に相棒の様子をみにきたんだ。
それから・・・。眠ったというわけだ」
安富のにやにや笑いをみつつ、「あたためあいながら」というフレーズを口中でリピートする。
「ちょっ、安富先生、なにかされませんでしたか?」
寒気がする。これはなにも、真冬の早朝だからってわけではないはず。
「なにかされませんでしたか?それは、どういう意味で申しておる」
安富の乗馬用の鞭が、「ひゅんひゅん」と鋭い音を立てている。
たしか、「宗匠」は叩かれるのがきらいといっていたような・・・。
ってか、重い。
馬面、「豊玉」、頼むからその馬面、どけてくれ・・・。
ギャング映画の名作中の名作「ゴッド・Oァーザー」、あの衝撃のシーンが脳裏をよぎる。
「双子に直接きけばよかろう?なぁ、兼定、「豊玉宗匠」?」
そこ、二頭を同時に呼ぶときは、一気に呼ぶのか?
「豊玉宗匠」、と。
「さぁ邪魔だ、どいてくれ」
寝ているおれの腕やら脚やらを、鞭で容赦なくぶつ安富。
早朝のきれるような寒さに、ピシッ、ピシッ、と鋭く響く。
「痛いっ!痛いですよ、安富先生。どきたくても、「豊玉」の頭が重くて起き上がれません。ってか、「宗匠」、脚ーっ、蹄のさきがおれの脚にのってるーっ!ってか、相棒、なんで「朝っぱらから、なにやってんだ?馬鹿たれっ!」
「うわっ、主計さん、犬と馬に踏みつけにされてるね」
「主計、蓆の上で動物相手に寝るなんざ、おまえらしいな」
「おほっ、才輔のの鋭い痛み、けっこう、いいだろう?」
副長、泰助、永倉、原田の声が、上から落ちてくる。
局長や斎藤や島田も子どもたちも、白ーいの鋭い痛み、けっこう、いいだろう?」
副長、泰助、永倉、原田の声が、上から落ちてくる。
局長や斎藤や島田も子どもたちも、白ーい
!」
そのとき、朝の静謐をやぶりまくるばかりか、空気をよまぬ男がやってきた。
熱き海の男、こってこての江戸っ子、油ギッシュ釜次郎こと榎本艦長である。
「ちっ、朝っぱらからうざい野郎がきやがった」
副長のつぶやき。
(だーかーらー、これからずっとお付き合いするんですってば)
つい、心中でリプッてしまう。「局長、副長、釜次郎殿が、おりいって頼みがあるとおっしゃいますので」
「ああ?おめぇら、もう城にいってたのか?ちったぁを休め・・・」
副長は、榎本を伴ってきた俊冬にいいかけ、思いだしのであろう。
双子は、薩摩の軍服から、幕府側のどこかの隊の軍服に着替えている。
城とともに果てようとしている幕府側の人々を、さっそく説得にいってくれたのである。
「副長、お気遣い痛み入ります。なれど、深更、いい気分転換ができましたので」
俊冬は、男前ので、こちらをみる。
「おほっ!いい気分転換って、やはりアレ、だよな、アレ?」
「ええーっ、アレってなんですか、原田先生?」
「どんなにいいことなんですか、原田先生?」
原田のアレ発言に、子どもたちがすぐに喰いつく。
いやちょっとまて。まってくれ。アレって?アレってなんだ?
ににやりと笑みを浮かべ、こちらへ
「立ち話もなんです、榎本殿。さあ、なかへ。朝餉は?」
おれのパニックをよそに、局長が榎本の肩を組まんばかりに親しげに誘い、宿のなかへと導く。
「城にはろくなもんがねぇんで、まだなんにも喰っちゃいませんよ。ありがたい。ぜひともよばれましょう」
うれしそうな榎本の声。宿のなかから、笑い声まできこえてくる。
一瞬、食事をたかりにきたのか、と勘繰ってしまう。
「飯だ、飯だ」と、リアル児童とそうでない児童たちが、つれもって宿のなかへはいってゆく。
「ちょっ、ちょっとまってください。アレっていったいなんなんです、俊冬殿?」
双子にちかづくと、俊冬の肩をつかむ。
「アレ?気にするな」
俊冬は、
「「豊玉」に抱きつくなり、そのまま眠ってしまったのでな。ゆえに、馬たちと兼定と双子とともに、
相棒は、鳶と山崎へ向かって匍匐前進しつづけている。
なにをやってる。動け、動いてかれらを護るんだ。
自分を叱咤する。
静寂・・・。
俊春の恫喝の効果かどうかはわからないが、一瞬、銃撃がやむ。
ざっとみたところ、easycorp
三十名ほどの小隊。
腹ばいになり、やっとのことで匍匐前進を開始する。
袂がまくれあがり、前腕がむきだしになる。砂利が、容赦なく皮膚を裂く。それでも、つづける。すこしずつまえにすすみ、相棒に追いつく。
鳶と山崎。さらに向こう、敵の小隊に向かう俊春越しに、敵が射撃体勢に入っているのがみえる。
敵の小隊との距離は、100メートルもない。
いくら俊春でも、三十丁の銃からいっせいに発射されるを、斬ったりよけたりつかんだり、できるわけない。たぶん・・・。
俊春は自分が囮になり、敵の気をおれたちからそらそうとしてくれている。
前方に、をはしらせる。
鳶と山崎がいる位置から左側に、幕府軍が応戦用につくりかけていたのか、土嚢が積まれている。
ってか、積まれているというよりかは、放り投げられたって感じである。
這いつくばれば、かろうじて頭が隠れる程度。高さにすれば、30センチあるかないか、といったところか。
これぞまさしく、「頭隠して尻隠さず」である。
プリップリのムッチムチの尻なら、土嚢からとびだし、尻にが当たってしまう。
よし、大丈夫。三人とも小柄である。
三人とも、モデルもびっくりなほど、臀部には尻えくぼが、背にはヴィーナスのえくぼがあるはず・・・。
おれに関しては、にくるまえ、尻えくぼをみた気がする・・・。
くそっ、もっと筋トレしとくべきだった。それに、にきて、太ってしまったし・・・。
ってか、それ、いま考えるべきことか?
こんなときでも、突っ込んでしまうおれっていったい・・・。 兎に角、二人をあの土嚢に連れ込む。
そして、俊春の後顧の憂いを断つ。
「相棒、二人を、あそこにひきずりこむ」
相棒と顔を並べ、いいながら指で指し示す。
こちらの動きを察知されれば、向こうは撃ってくる。慎重に動かねば・・・。
雪で濡れた地面。
着物は、泥だらけになっているだろう。相棒の毛皮もまた。
左腰の「之定」が、邪魔である。このときばかりは。
おれたちが接近していることに、鳶が気がついてくれた。
こちらへを向けてきたので、指で土嚢を指し示す。
おれたちの距離は、4~5m。
山崎は、仰向けに倒れている。
意識がないのか、ピクリともしない。
鳶に、口の形だけで怪我はないかと問う。
すぐに、かれはでまずいっぽいことを伝えてくる。
動悸が、はやまる。
兎に角、いまは土嚢に隠れることが先決。
鳶は、怪我をしていない。山崎だけ引っ張ればいい。
をかすかに左右に振る。それから、指で山崎を示し、をわずかにあげ、俊春をみる。
さすがである。俊春は、おれたちの動きを察知している。
かれのあゆむ速度が、わずかにはやくなる。「いかがいたした?撃たぬのなら、遠慮なく、こちらからゆかせてもらうぞ」
俊春の怒鳴り声は、あきらかに敵をびびらせたようである。
恐怖に耐えきれず、引き金をひいてしまった兵がいる。
なにかが起こったとしても、この体勢からではみえない。ってか、すぐ横でガン見してても、わからないであろう。
兎に角、三発の銃声が鳴り響いたときには、俊春は三発のをどうにかしたはず。
「村正」で弾丸斬りしたか、超神速でよけたか、掌でつかんだにちがいない。
またしても訪れる静寂。
かれが、敵の注目を集めてくれている間に・・・。 陸自の隊員も、「グッジョブ!」といってくれそうなほどの速さで匍匐前進。掌を伸ばし、山崎の肩をつかむ。
相棒も、鼻づらを伸ばし、山崎の袂を噛む。
鳶は、おれたちとは反対側の山崎の肩をつかみ、同時にひきずりはじめる。
前方より、ごろごろとなにかを転がす音がきこえてくる。山崎をひきずりながら、また
の負傷者から、おれたちも大坂城へと退く旨もきいたであろう。
ゆえに、みずから大手門に立ち、出迎えようと・・・。
局長に会えたのは、割り当てられたちいさな部屋のまえである。
通常は、
| 香港 信託 公司 排名 |
その部屋に、入ろうとしたときのことである。
双子が機転をきかせ、探しにいって連れてきてくれたのである。
局長は、だれかれかまわず、肩やら頭やら体を叩きまくる。
いつもなら、その荒っぽい「局長バンバン」を受け止める隊士たちも、いまは立っているだけがやっとである。
ふらつき、そのまま廊下に倒れたり、壁や障子に叩きつけられたりと、ここにきて致命傷を負ってしまったっぽい。
だが、みな、嬉しそうである。ふらつきながら、笑顔で局長に挨拶する。 それから、そのちいさな部屋に入る。
そこに詰め込まれると、隊士たちは力尽き、柱や壁、障子や襖にもたれ、座ったまま落ちてしまう。
狭すぎて、子ども一人すら寝転ぶことができない。
「副長、負傷者をみてまわってきます」
医療担当も兼任している山崎は、欠伸を噛み殺している。
「ならば、わたしたちもまいりましょう。なにか、お手伝いできるかと」
ここまで荷駄を曳いてくれた「豊玉」と「宗匠」を厩へ連れてゆき、装具をはずし、飼葉をやってきた久吉と鳶が、申しでる。
馬フェチの安富は、ともに眠るといい、厩にいるという。
山崎は逡巡したようだが、口角をあげ、二人の肩を叩く。
「疲れているだろうに・・・。すまぬ。助かるよ」
それから、局長と副長に一礼すると、大広間のほうへと去ってゆく。
「無理しやがって。あいつも、疲弊しきってるだろうに・・・」
副長の呟き。
それから、ちいさく深呼吸する。
さきほどから、局長がなにかいいたそうにしているのがわかっていて、それに応対しようということか。
「局長・・・」
「土方君、いや、歳っ、源さんは?源さんは、どうした?ああ、はやくも幕臣との折衝か・・・」
「かっちゃん、いいからきいてくれ・・・」をちかづけ囁く。
「ここじゃぁなんだ・・・」
「副長、さきほど通りかかった石垣のあたりでしたら、だれもこぬかと」
俊冬の提案にしたがい、だれもが無言のままあゆみだす。
副長は、局長のいいほうの肩をつかむと、を真っ赤にはらしている。
もちろん、おれもおなじように真っ赤になっている。
相棒をまたせている通用門をとおりかかると、相棒のまんまえで榎本が胡坐をかいている。
せっかくの軍服が、土にまみれるのもかまわず。
相棒は、我慢強く榎本とにらめっこをしている。
「釜次郎殿、かようなところでなにをされておいでです?」
俊冬が、声をかける。
榎本は、掌をひらひらさせながら応じる。
「この狼、なかなか肝がすわってるじゃねぇか」
「狼ではありませんよ、榎本艦長」
一瞬、敬称を迷ったが、とりあえず艦長といっておく。
「犬です。ドイツの犬です」
「なんと。そういえば、異国で似たような犬をみかけた気がするな」
オランダであろうか。かれの留学先である。
オランダ原産の犬種も、数種類ある。
たしか、シェパード系、ウルフドッグ系がいるはず。
が、どちらも、もうすこしあとに交配されたかと記憶している。
とはいえ、より狼にちかい犬がいたであろう。
いや、いっそ狼か。
「いやいや、毛玉みたいな犬より、よほどいい」
でたーっ、毛玉。
永井といい、榎本といい、モフモフ系はすべて毛玉に相当するのか?
を向けてくる。
雲間から、太陽があらわれた。ささやかな筋状の光が、地上を射す。
榎本の油ギッシュな頭髪が、てかてかしている。
ついでに、これぞ「カイゼル髭」、と熱くいってしまいたいほど立派な髭も。
マッチをすってかれに放り投げたら、「人間火の玉」化しそうである。を戻しつつ、うんうんと頷く。
(名付けた理由は、そこじゃないんですー)
まさか、副長ファンで、その佩刀からとった、なんてこと・・・。
それこそ、副長にBLチックな感情を抱いていると、勘違いされてしまう。
つい先日、ああ、あれはつい先日だったのか、ずいぶんとまえのように思えるが・・・。
兎に角、伊庭のこともある。これ以上、腐隊士と思われるのは、遺憾である。
「兼定です」
「ほう・・・。刀か?なるほど、たしかに、鋭そうだ」
榎本は、相棒に
「おめぇの犬かい?名は?」
榎本が、
熱弁してしまう。
正直、井上の気持ちが理解できない。
「歳さんは、もう一人ではない。おぬしらをはじめ、新八や左之、斎藤がいる。大坂までゆけば、若先生がいる」
試衛館道場の先代と、呼び分けていたのであろう。
隣で、俊冬が息を呑む。
「どこが、どこが悪いのです、井上先生?」
そして、意味不明なことを尋ねる。
「さすがだな、俊冬。歳さんやおぬしら双子を相手に、ここまで隠し通せた。わたしも、まだまだ捨てたものではなかろう?」
「病気、いえ、病なのですか?いったい、どこが・・・」
井上は、大坂へとむかっている副長をみるように、うしろへを送る。
それから、それをおれたちへと戻す。
「以前、隊士全員が松本法眼に診てもらったことがある」
松本良順。蘭方医で、数すくない新撰組の支持者の一人である。
以前、その松本が隊士の健康診断をおこなったことがある。まだ、である。
これが日本初の健康診断であるとかないとか・・・。
それは兎も角、結果は、あらゆる意味で惨憺たるもの。ブラックすぎた。
その結果にもとづき、法眼は労働環境の改善を副長に直訴し、副長はただちにそれに努めた。
「総司もそれで病がわかったが、わたしもわかった・・・。腹部にしこりがあってな。ずっと癪だと思っておったが・・・。胃の腑が悪いらしい」
そんな・・・。胃癌?胃癌だというのか・・・?
「総司より深刻だといわれた。いつ死んでもおかしくない、ともな。ここまでこれたのが、自身でも驚きだ。まぁ抜けたところで、助かるものでもない。ならば、このまま隊務をつづけたい。松本法眼を説得するのに往生した」
末期癌。この時代、Ⅹ線や胃カメラがあるわけではない。自覚症状なら、たしかに癪と思うかもしれない。
触診でわかったのなら、ステージⅣ。転移している可能性も否めない。
痛いだろう。苦しいだろう。
だれにも悟られず、フツーに隊務をこなし、動きまわっている。
こんなこと、できるわけない。精神力だけで、もつはずもない。
ここにも、すごい「もう充分であろう?総司は、総司なりに生きようとがんばっている。若先生は、歳さんがいてくれる。その歳さんは、おぬしらがいてくれる。わたしの役目はおわった。痛みに、病に殺されるのなら、らしく死にたい。そう思うのは、わがままなのであろうか?」
かけるべき言葉もない・・・。
情けないが、励まし、反論、どんな言葉もでてこない。たとえ思いついても、口からでるのは薄っぺらなものばかり・・・。
心情においては・・・。
わかっている。
井上のいうことは、よくわかる。
だが、わからない。わかっているが、わからない。
「それでも、それでもやはり、生きてほしい。一日でも長く。あきらめないでほしい・・・」
あきらめないでほしい?
化学療法も手術も放射線治療もないというのに?
治るどころか、痛みや苦しみしかないのに、前向きにがんばれと?
またしても、自分の無力を痛感する。不甲斐なさにうちのめされる。
やはり、おれは役立たず隊士・・・。
溢れる涙を隠すため、慌ててうつむく。
一滴、二滴と、涙が凍てつく地に落ちてゆく。
そこでやっと気がつく。 自分でも、無茶ぶりはわかっている。
痛み止めも点滴もない。どれだけの痛みなのか、わかるわけもない。ないないづくしのなかで、本人に、痛みにのたうちまわってでも、我慢して戦場を駆けずりまわれ、といっているようなもの。
「副長や、おれたちだけではありません。泰助が・・・」
史実では、泰助は、死んだ叔父の頸を抱えて逃げるのである。その重みに耐えかね、それでもがんばってあるきつづける。
みかねた大人が説得し、淀城のちかくにある寺に、刀とともに埋めたと伝えられている。
十一、二歳の子どもである。叔父の頸は、あらゆる意味で重すぎる。
甥の名で、井上ははっとする。
「泰助は、泰助は強い子だ。そりゃぁ、わたしからみれば甘ったれた餓鬼だが、泰助は泰助なりにがんばっている。あの子も、八王子千人同心、武士の子。帰郷する際には、胸をはり、叔父の戦死を伝えてくれるであろう・・・。おおっ、兼定、どうした?」
相棒が井上の脚許に座り、かれをみ上げている。