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に別条はないが、どうも右半身が、軽くしびれておるようだ。ともに、大坂へ送る」
よかった・・・。
軽く麻痺・・・。時間がかかりすぎたんだ。
リハビリで、ADLを取り戻せるだろうか・・・。
「すみません。https://www.easycorp.com.hk/en/offshore Bank Account Opening hong kong 公司報稅おれがもたもたしたものだから・・・」
「が助かっただけでも御の字だ。それに、しびれと申しても、たいしたことはなさそうだ。卒中で助かっても、体躯が動かぬ爺様や婆様は、あんなもんじゃないからな。おぬしがいてくれたからこそ、いとこはあの程度ですんだ」
「いとこ?」
同姓でも親類ではないと、なにかの資料でよんだ記憶がある。見間違いか?それとも、じつは、そうだったのか?
「あぁ誠の、という意味ではない。たがいに呼ぶのによびにくい。なにより、説明を省ける」
なるほど。
「一番組の井上さんは、御親類ですか?」ときかれるまえに、「いとこといっておけ」的に、先手をうっているわけか。「それで、主計。もう起きて大丈夫か?」
「え?ええ、ええ」
「なればその布団、ほかに譲ってやってくれ。みな、寒さに凍えておる。屯所から、布団を運ぶ間もなくてな」
阿部らの襲撃の際、助けにきてくれた隊士たちの会話を思いだす。
「それと、兼定が・・・。はやくいってやれ」
おおっと。相棒。相棒の貞操の、もとい、体が危機だ。
井上にあらためて礼をのべると、寝ていた部屋から飛びだす。
このときみた夢のことなど、すっかりぶっ飛んでしまう。「相棒っ!相棒っ!」
伏見奉行所の見取り図などわかるわけもないが、呼びながら駆けずりまわる。
いくつもの部屋のまえを通りかかるが、どこにも相棒はおらず、野郎ばかりがひしめきあっている。
なかには、おしくらまんじゅうっぽいものをやっていたり、相撲をとっていたり、というグループもある。
いっておくが、BLチックなことをやっている者はいない。みな、違う意味で体を動かしている。
これらすべて、寒さ対策である。いや、対策ってよりかは、体を動かしておかないと、リアルに寒くて凍えてしまう、というわけである。 ある部屋のまえを通りかかったときには、なかからがぶっ飛んできた。
「ひいいいっ」
無様な悲鳴をあげつつ、かろうじてよける。
「くそっ、なんでよけやがる、主計?受けとめやがれ」
廊下に顔面から叩きつけられ、よろよろと上半身をもちあげディスってきたのは、「新選組の人斬り」を自称する大石である。
「おうっ、主計っ!うまくよけたな」
部屋のなかからでてきたのは、原田の業務上のよきパートナー、林である。
「ふんっ!どうした大石?寒いっていうから、体躯を動かしてやってるんだ。しっかりかかってこいや」
新撰組のがぶっ飛んできた。
「ひいいいっ」
無様な悲鳴をあげつつ、かろうじてよける。
「くそっ、なんでよけやがる、主計?受けとめやがれ」
廊下に顔面から叩きつけられ、よろよろと上半身をもちあげディスってきたのは、「新選組の人斬り」を自称する大石である。
「おうっ、主計っ!うまくよけたな」
部屋のなかからでてきたのは、原田の業務上のよきパートナー、林である。
「ふんっ!どうした大石?寒いっていうから、体躯を動かしてやってるんだ。しっかりかかってこいや」
新撰組の「主計、あの布団が懐かしいぞ。兼定も奪われた。今宵は、ひたすら稽古だ」
林はまた「かっかっ」、と笑う。
いや、林よ。布団ロスすぎるだろう?
移転してから、まだ一日も経っちゃいない。
それに・・・。
部屋をのぞきこむ。もともとは、奉行所の詰め所かなにかだったのか?
十畳くらいの部屋に、大石配下の自称「新撰組の人斬り」たちが、積み重なるようにして倒れている。
ガチ、パワハラ。
これはもう、業務中や訓練中に、「防御の練習」や「励ますため」といって、上司や上官にシバカレましたレベルなんてもんじゃない。
「それで林先生、相棒は?」
俊冬をみならい、わが道をゆくことにする。
「奥のほう、子どもらといっしょのはずだ」
「ありがとうございます」
礼を述べ、駆けだす。
「まていっ、主計っ。この馬鹿を、とめやがれっ」
「なんだと、大石?貴様っ、上役にたいして、なんたる口のききかただっ!もういっちょ、こいやっ」
「ぎゃーっ!」
悲鳴が、背にあたる。
職場のコンプライアンス違反を、みてみぬふりするおれ。
パワハラを黙認するおれ。
かかわりあいになって、自分の立場が危うくなることを怖れ、上司や関係部署への申告・相談をおこたるおれ。
まっいっか。
目の前に置かれたファイルを捲る松川の手が震えるのを横目で捉えた。
(どう出る?)
キーボードを叩きながら、倫子は考えて息を吸った。
倫子が決めた事…残り数日は自分が指導になったのだから責任を持ってをする事。
それが終わってもそのままなら、倫子の指導は無駄になった事になるが、その後で松川が自分の仕事の仕方で本社に行けるかどうかは彼女次第で、後は彼女の運と実力、そして仕事振りと人となりだ。
倫子は自分らしく、最後まで一生懸命に「教える」のみ、そう決めたのだ。
「花上さん!これ、過去の沢木主任の取引先の注文をファイルにした物ですよね?全部データにありますよね?」
ファイルをペラペラと数ページ捲り、直ぐに松川は顔を倫子に向けて言葉を発した。
それは明らかに納得のいかない言葉だった。
「会社のデータにはないです。売り上げとしては残りますが、会社毎に分かれていますから、会社のデータには何がどれだけ売れたかでどの会社が何を買ったかが総合的に残っているだけです。当然ですが沢木個人が扱った細かな商品まで会社のデータにはありません。沢木の補佐なら過去にどれだけどの商品を扱ったか、現在も同じ取引先はありますから頭に入れておいて損はありません。」
「時間の無駄です!同じ取引先が同じ商品を選ぶ確率なんて低いです。ましてそれは沢木主任が確認される事で、補佐は言われた事を書面にするだけです!これはお返しします。」
ずいっと、倫子の机の方にファイルが押される。
「指導担当の覚えてという言葉を拒否するという事ですか?」
「はい。」
「それは給料泥棒という事でいいですか?」
「どうしてそうなるんですか!」
「今、私は手が離せない。あなたの面倒は見れない。営業は外へ行く時間帯で残っているのは忙しい補佐のみです。手が空いた人から挨拶をと言いました。この時間をぼーっと過ごす気ですか?部長が戻るまでそれに目を通す振りも出来ませんか?あぁ…覚えられない?覚える気がないのではなくて覚えられないならごめんなさい。優秀な方だと判断して無理な仕事を振った私の見る目がなかったという事ですね。それは謝ります。ではもっと簡単な……「……覚えます。」
もっと簡単な仕事を差し上げますね、とファイルを取ろうとすると、松川の手がファイルの上に載り、倫子の言葉を停止させた。
(あ、引っかかってくれた。ランチの時の口振りからプライドは高いと思ったんだよね。)
良かったと、安堵しながら倫子は微笑みを向けた。午前中に沢木に言われた書類を作成しながら、時々、目だけを横へ動かして松川の様子を確認する。
真剣な顔でファイルを凝視し、時々ブツブツ言っては何かを思いついた様に机の上にメモ用紙を置いて、メモしていた。
(真面目な良い子だと思うんだけど…。)
それでも彼女が本当に嫌だと言うなら、自分には大事な土台だが、松川には必要のない物として、もう教えるのは辞めようと考えていた。
40分程で沢木に指示された書類の作成を終えて、倫子はパソコンから目を離して伸びをする。
「あぁ…終わった。」
「明日の訪問順に並べて沢木主任の机の上におけばいいんですよね?」
横から声が聞こえて、そうです、と返事をすると、やります、と松川が椅子から立ち上がり、書類を確認しながら並べ替えてくれた。
「ありがとう。」
戸惑いながらもお礼を言うと、松川がファイルを指差した。
「ここ、教えて戴けませんか?」
「ここ?」
驚いた顔でファイルを覗くと、松川が指していたのは黄山工業のビル建て替え時に納品したドアの品番だった。
「これがどうかした?」
「黄山工業さんは本社の内装、リフォームと、新しい支社の為にドアやキッチンを注文しています。でも6年程期間が空いています。本社のリフォームと支社屋新築、違う場所、違う時間、なのに注文は同じキッチン、同じドア、ドアノブに蝶番に関しては生産が終わってる商品です。」
「へぇ、流石は松川さんね。良く生産が終わってるって分かったわね。」
感心して言うと松川が赤い顔で倫子を見て言う。
「花上さんが最初の頃に部品やドアノブなんかの生産終了した自社商品だって、支社の自慢のって…覚えさせようとしたんじゃないですか!」
ちょっと怒り気味に言われて、そうでしたね、と倫子は肩をすくめた。
「それは良いんです!生産が終わっているのに納品されてます。数年経って同じ物をどうして、いえ、お客の要望ですからそれは仕方ないとして、ないならないと言えばいいのに、どうやって納品を?」
「あ、そこ?」
なんだそこかぁ、と言いながら倫子はノートパソコン画面を操作して、支社の倉庫、在庫のデータ画面を松川の方へ向けた。
「やめなさい!」
ようやく、本当にようやく、萌花の父親が吠える妻を制止した。
さすがに、萌花も萌花の母親も黙る。
「悠久くん。さっき明堂貿易を継がないと言ったな?」
「はい」
「では、誰が継ぐ?」
「さあ、誰でしょう? 兄の央が戻るかもしれませんが、今は何も確かではありません」
「では、要くんの所在が掴めないというのは?」
「継母は要を後継者にと望んでいましたが、本人にその意思はないようです。萌花も要と結婚すれば社長夫人になれると唆されて俺との離婚に同意したようですが」
「そ、そうよ! 騙されたのよ! 私は被害者じゃない!」
「黙れ! なんて馬鹿な真似をしたんだ!! 社長夫人なんて夢を見ずに、悠久くんと一緒にいれば間違いなかったものを!」
父親の怒声に萌花は身体を強張らせ、母親と身を寄せる。
「悠久くん、娘が大変申し訳ないことをした」と、萌花の父親は俺に頭を下げた。
さすがに、ギョッとした。
「パパ! やめて――」
「――どうか萌花を許してやってはくれないだろうか。二度ときみを裏切ることのないよう、教育をする。明堂貿易の創業者一族の一員としての自覚を――」
「――許せません。それに、俺は明堂の家を出るつもりです。明堂の名を捨て、楽と二人で生きていきます」
昨日まで義父だった男が拳を握った。
ゆっくりと頭を上げる。
「きみは優秀だ。むざむざ明堂貿易の社長の椅子を捨てる必要はないだろう。そんなに楽が欲しければ、愛人としてそばに置けばいい。萌花に文句は言わせない。だから――」
「――お断りします! 俺は楽を愛人になどしない。妻にします」
「許さん! 萌花を捨てて楽を選ぶなど、絶対に許さないからな!」
「許しなど求めていません。それに、楽の存在がなくとも萌花とはもう無理です。よりにもよって夫の兄と関係を持つなんて汚らわしいので」
萌花の母親がギリッと歯を噛む。
さぞ、悔しいだろう。
自分の言葉で可愛い娘を蔑んだのだから。
「まだご不満があるようでしたら、弁護士を通してください。では」
背中に太い注射針並みの鋭い視線を浴びながら、俺はドアに手をかけた。
「待ちなさい! 話はまだ――」
バタンッとドアが閉まる。
へぇ、結構防音効いてんだ。
そんなことを思った。
人の口に戸は立てられないとはよく言ったものだ。
明堂家の嫁が救急車で運ばれた、というたった一つの出来事から、明堂家のお家騒動がワイドショーのネタになるまでに時間はかからなかった。
最初の内容は、俺と萌花の離婚、その原因が萌花と要の不倫、妊娠にあること、更には要が萌花に暴力を振るって行方をくらましたこと。
三日後には新事実として、一年ほど前の俺の事故、央の社長辞任の理由、要の出生についてまで暴かれていた。
マスコミに嗅ぎつけられてすぐに、俺は藤ヶ谷さんに連絡を取り、全てを話し、彼の力で楽の存在についてだけでも隠し切れないかと頼み込んでいた。
幸い、萌花に姉がいることはあまり知られていないし、知られたとしても藤ヶ谷さんと結婚し、離婚した後についてまで調べられることのないように手を打ってくれた。
とはいえ、楽自身が目立たないように生きてきたから、マスコミの動きを見張っただけで、特に何をしたわけでもなかったらしい。
親父は会長として騒動の収拾に当たっている。現社長の叔父と央兄さんとともに俺も。
要は萌花と征子さんの入院騒動の最中に明堂家に戻り、金目の物を持ち出していた。
その後の行方はわからない。
征子さんは萌花の死産と要の空き巣同然の行動を知って錯乱し、今も入院している。
萌花は、退院後は実家に帰ったようで、岡谷さんの元に財産分与についての異議申し立ての連絡があったと聞いている。
とにかく、もっと金を寄こせと言っているらしい。
テーブルの奥には、一口だけ減ったカフェモカ。
初対面で心配されるほど、肌がボロボロなのだろうか。
昨日までの体調不良が、肌に表れているのかもしれない。
「気をつけます」
男性がゆっくりと頷いた。
それから、私は一日おきくらいに『エデン』に通った。
おじいさんには会えたり会えなかったりだけれど、会えた時は一緒に食事をした。
オーナーさんとも店員さんとも気軽にお喋りできるようになった。
オーナーさんは
「病院? 楽さん、どっか悪いの?」と、昌臣くんがテーブルの横にしゃがんだ。
「どこも悪くは……」
そう言ったものの、最後までは言い切れない。
気づいていながら、目を背けていた。
違う。
期待を裏切られたくなかった。
私はグラスを置き、そっとお腹に手を添えた。
「その様子だと、受け入れているようだな」
私はキュッと唇を結び、小さく頷いた。
「え? なになに? 楽さん、病気なの?」
「違うよ。楽さんは妊娠してるんだ」
昌幸さんが昌臣くんの頭にポンと手を載せた。
「妊娠?! マジで?」と、昌臣君が私の顔を覗き込む。
「ああ」
「昌幸が良縁に恵まれたかと思ったんだがなぁ」と、おじいさんが呟いた。
「最初っから、楽さんが妊娠してるから様子を見てるように言ってきたくせに」と、昌幸さん。
それを聞いて、呑気にお店に通っていたことを申し訳なく感じた。
「すみません、ご迷惑を――」
「――全然迷惑なんかじゃないよ? 大事なお客様だしね。楽さんの様子が気になったのは、じーちゃんの職業病みたいなもんだし。俺だって、ホントに見てるだけだったし」
「それでも――」
「――あれ? 楽さん、結婚してないって言ってなかったっけ? ――って! なにすんだよ!」
パコンッ! と清々しい音が店内に響く。と同時に、昌臣くんが両手で頭を抱えた。
昌幸さんが昌臣くんの頭をトレイで叩いたのだ。
「お前はデリカシーって言葉を知らねーのか!」
「はぁ? 俺はただ、結婚してないなら、兄さんにもチャンスが――って! だから痛い!!」
もう一度、パコンッ! と響く。
頭のてっぺんは昌臣くんの手があるから、今度は後頭部。
「ごめんね、楽さん。こいつの言うことは気にしないで――」
「――くくっ!」
兄弟のやり取りを見ていた私は、堪らずに声を上げた。
「ふふふっ……。ふふっ――」
「――楽さん?」
「ご、ごめんなさい。……だけど、だって……くくっ! すごくいい音がして――」
お腹を抱えて笑う私を三人が目を丸くして見ている。
笑っているうちに、涙が滲んできた。
こんなに笑うのはいつ振りだろう。
ずっと、苦しかった。
突然の事故から、ずっと。
悠久と一緒にいた時も、こんな風に声を上げて笑うことはなかった。そんな余裕はなかった。
幸せで楽しかったけれど、心のどこかで終わりを覚悟していたから。
それはきっと、悠久も同じだったと思う。
だって、高校生の頃の悠久は、良く笑っていたから。目を細めて、声を上げて、心から楽しそうに笑っていた。
彼の笑顔が、好きだった。
「――ふふっ。……ふ……」
悠久の子供がお腹にいる。
きっと、いる。
この子との出会いが、私の生きる希望になる。
この子がいてくれたら、私は笑える。
「医者人生の最後に、楽さんの子供を取り上げたいねぇ」
おじいさんの言葉に、涙が溢れた。
「よろしくお願いします」
産まない選択肢はなかった。
「――ねぇ! 聞いてるの!?」
雑音でしかない甲高い声に、俺は歯を食いしばった。
「あの家政婦! 私に少しは運動しろとか言うのよ!? 偉そうに! 私は明堂家の大事な跡取りを妊娠しているのよ? 何かあったらどうするつもりなのかしら! 食事も、マズいし!!」
うんざりだ。
目の前の書類に集中できない。
中東で反政府デモが起こり、輸送が遅れている。
このままでは、多額の損失を出してしまう。
「あの家政婦はクビにして! もっとベテランの、雇い主に口答えなんかしない人を雇ってよ! あと、ベビーシッターも! 生まれてから決めたんじゃ遅いわ。ただでさえお腹が重くて眠れないんだから、生まれた後はゆっくり眠りたいの」
なんとかして、納期に間に合わせなければ。
「悠久も! いい加減マンションに戻ってよ。身重の妻を一人にするなんて、夫婦仲が悪いと噂にでもなったらどうするのよ!」
実際に悪いんだから問題はないだろう。
「子供の名前も考えなきゃ! お義父様にはつけさせないでよ。古臭い名前なんて嫌よ!」
俺はキラキラネームの方がよほど嫌だが、関係ない。
俺の子じゃないのだから。
「明堂貿易の後継者なのよ? 時代に合った、インパクトのある名前じゃなきゃ!」
安心しろ。
その子が明堂貿易を継ぐことはない。
こんな会社、俺がぶっ潰してやるんだから――!!
取り分け今日の合戦ではまだ十六歳のフィルハンドラという、生きてあればこれから後花も実もある人生を送れたかも知れない少年の命を我と我が手で断ち切っていた。合戦のナライとは言え、ハンベエも悄然として胸塞ぐものが無いわけでも無かった。 師の下を離れ今日に至って、突拍子もなく強くなった事を無論ハンベエは自覚していた。ただそれを最初の頃のように無邪気に喜びも出来ず、逆に或いは自分はとんでもない化け物になってしまったのかも知れないと複雑な気分になっていた。そんなハンベエの鬱屈をよそにタゴゴローム軍の大部分は敵の降伏を受け、戦勝に安堵していた。三万人いたタゴゴローム軍は一万八千人に減っていた。傭兵騎兵団もレンホーセンに付いて行った二百騎はほとんど無傷であったが、ハンベエに付き従った百騎は二十八騎になっていた。多くの犠牲を払ったが、それでも勝つ事が出来たのは幸運な事であった。 後は、四天王セイリュウが纏めた敗残兵一万人が降れば今回の戦は終りである。待てよ、四天王と言えばもう一人スザクと言う奴がいたはずである。奴はどうしたのだろうか。ガストランタと同じように風を喰らっ" もう何度、久我さんが何気なく発する一言に胸を躍らせてきただろう 「……じゃあ、今も寝たフリしてくれれば良かったのに」 間一髪で久我さんが私の体を支えてくれたため 久我さんとの交際は、思いの外順調だった"て逃げてしまったのだろうか。いや四天王と称され、武勇のほどを認められていた男である。流石に逃げはしなかった。ただ配下の連隊はステルポイジャンの死後に起こった軍の総崩れに合わせて散り散りに雲散霧消してしまっていた。ハンベエがガストランタを追って戦場を後にした頃、スザクは同じ戦場の別の場所で百数十人のタゴロローム兵士を向こうに回して一人大立ち回りを演じていたのである。馬はとうに倒れたものか徒歩(かち)立ちであった。既に死を覚悟しているらしく、回りを十重二十重に取り囲まれても少しも慌てず、左右に一対の剣を握って迫り来るタゴロローム兵士達を一人一人と倒して行った。 手強いスザクに手を焼いたタゴロローム兵士達はいっそ遠巻きにして、弓で討ち取ろうかと相談したが、今日の激戦で槍部隊にも弓部隊にも矢を残している者はほとんどいなかった。それに、負け戦の最後に死を覚悟して孤軍奮闘する勇士を遠矢でなぶり殺すと言うのも人情として為し難いところではあった。この期に及んでスザクが逃亡も自決もせず木っ端兵士を斬り続けているのは、恐らく己の最期を飾るべき好敵手の出現を待っているのだと兵士達は容易に察した。こんな時こそ、ハンベエやドルバスが出て来れば良いのだが、ハンベエは既に戦場を離れており、ドルバスの所には連絡が行っていないらしい。さあ困ったぞ、下っ端兵士じゃ手も足も出ない。どうしたものやらと取り囲んでは見たものの引け腰の兵士達。勝敗定かならず、伯仲の争いの時には死をも恐れなかった猛兵達も、こうして勝利を手にした後は下手な怪我はしたくないと欲が出て来て、いっかなスザクを攻めきれない。そこへ、フラリと現れた人物がいた。秋晴れの昼間の空のように色鮮やかなマントを風に翻していた。裏地は燃えるような赤である。イザベラであった。レンホーセンと共にステルポイジャンの本陣を奇襲し、ステルポイジャンの死亡直後にレンホーセンの尻を叩いたこの本性不明の女は、その後は味方の戦いに加わる事もせず、風に流るる木の葉のようにふわふわと戦場を見て回っていたのである。それにしても、いつもながら衣裳は何処で調達してくるのだろう。タゴロローム兵士の間を緩やかな風のように抜けて前に出たイザベラは、「おや、見知った顔が死に切れずに、亡者のように足掻いているじゃないか。