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」ハンベエはシュラリと『ヨシミツ』を抜いて、右斜め上段に構え、ガストランタを見やった。「兄弟子のこの私を殺すつもりか。」左右を見回し、逃れられぬと悟ったガストランタは厚かましくもそう言った。或いはハンベエがフデンと自分の関係を知らず、世間の風評通り、ガストランタはフデン将軍の一番弟子と勘違いしているかも知れない。そうであれば、空とぼけて逃がしてもらえるかも知れないと一縷の望みを掛けて白々しい言葉を吐いたらしい。我が師フデンに纏(まつ)わる落し前、きっちり着けさせてもらうぜ。「兄弟子だと、笑わせるな。ネタはとっくに割れているんだ。我が師から盗み取った『ヘイアンジョウ・マサトラ』、返してもらうぞ。」ハンベエはせせら笑いながら、更に一歩一歩とガストランタに迫って行った。 一瞬蒼ざめた後、狂暴な目付きに変わったガストランタは腰の剣を抜いてハンベエに対峙した。その手にあるは言わずと知れた『ヘ" めだという事に、気付かない宮部ではない こんなに目尻を下げ、嬉しそうに笑う父を久し振りに見た のんびりとした口調は聞き覚えがある トラトラ国が優勢だったんだけど "イアンジョウ・マサトラ』である。「フデンが唯一にして一番の弟子ヒョウホウ者ハンベエ参る。・・・・・・おおおおおっ。」ハンベエは腹の底から絞り出すような威嚇の唸り声を上げると、一足飛びにガストランタに襲い掛かって行った。何と表現すれば良いのだろう。微塵斬りとでも言えば良いのだろうか。狂暴な破壊の衝動を炸裂させたハンベエは、まずガストランタの右前腕を斬り、次に刀の切っ先で右脇腹から肩口まで裂き、更に左上腕を叩き斬り、最後に素っ首を撥ねて駆け抜けていた。一挙動、旋(つむじ)風どころか、暴風雨と言うべき連続技であった。 斬られたガストランタはイマワノキワも何もあったものじゃない。薪ざっぽうのように叩き斬られて絶命した。ハンベエは『ヨシミツ』を鞘に納め、切り落とされて地面に転がっているガストランタの右手が握っている『ヘイアンジョウ・マサトラ』を引っぺがして手に持つと、次に首を失って前のめりに倒れているガストランタの死骸を蹴っ転がして鞘を抜き取り、刃を納めた。その後、ガストランタをチラッと見たが、冷ややかな目付きであった。ペッと唾でも吐きかけしそうな勢いであったが、流石にそれはせず、『ヘイアンジョウ・マサトラ』を担いで乗って来た馬に向かった。元来た道をタゴロローム軍に合流するべく戻るようであった。 総指揮官ステルポイジャン、国王フィルハンドラを相次いで失ったステルポイジャン軍に対し、タゴロローム軍は王女エレナを前面に押し立てて降伏勧告を行った。この指示はモルフィネスがエレナに献策して行わせたものである。タゴロローム軍の総指揮官であるはずのハンベエは国王フィルハンドラを討った後、戦は勝ったとばかりに己の目指すガストランタの首を追って戦場を後にしていた。ハンベエという若者はやはり人の上に立つには欠けるところがあると言わざるを得ないだろう。しかし、ハンベエの不在はモルフィネスやドルバス、そしてヘルデンからロキに至るまでタゴロロームの他の領袖にとっては反って好都合だったようだ。何故ならハンベエは、かつてバンケルクの軍を撃ち破った時に『指揮官共は皆殺しにせよ』と言った事がある。そういう容赦の無い苛烈さがハンベエにはあった。しかしながらタゴロローム軍は元々三万、対してステルポイジャン軍は七万であった。敵の方が遥かに数が多いのである。今、敵は撃ち破れ、散り散りになったとは言え、下手に戦を長引かせた場合、事態がどう展開するか予断を許さない。こういう場合は、敵全員に助命等寛大な措置を約束して速やかに武装解除するのが古今の上策である。更に言えば、もし寛大な措置を取らずに飽くまで敵全員の抹殺を遂行しようとすれば、敵は向かって来ればまだしも散り散りに逃げる危険がある。逃げた敵兵士はどうなるか。人間は・・・・・・いや、人間に限らないが・・・・・・食さなければいられない存在である。