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だから、と言葉を続ける。真っ直ぐな瞳で坂本を見据えた。
「高杉さんもそうですが、坂本さんにも感謝しています」
「感謝……がか?」 https://blog.udn.com/29339bfd/180140221 https://plaza.rakuten.co.jp/carinacyril786/diary/202312080003/ https://blog.goo.ne.jp/mathewanderson/e/79e39eb0db260911f9ace23b5898cbce
「ええ。私の真の性を知りながらもとして接してくださった。本来、女の言葉は軽んじられます。男であるかのように見せねば取り合ってすら貰えぬ世であるというのに、貴方は初めから違った……」
そう言えば、坂本はフッと笑う。参ったと言わんばかりに両手を上げた。
「ワシの負けちや。そがに言われたら、何でも答えざるを得んぜよ。……受け売り、それでええんじゃ。ワシもセンセらの受け売りばかりちや。けんど、そうして志は磨かれて広がり、やがて国が作られゆうが」
穏やかにそう言う坂本のことが大好きだと桜司郎は思った。沖田に抱くような男女のそれではなく、人間としてである。「大政奉還のことやったか、どこまで知っちゅう?」
「徳川公が持っている政権を天子様へお返しすること……ですか」
「そうじゃ。その目的は分かるがか?」
その問いに、桜司郎は言葉を詰まらせた。永井のそれを借りるならば、倒幕派を抑え、帝の下で権力を握り続けるための方便である。しかし、あくまでもそれは幕府側の見方に過ぎなかった。
「ええと…………。詳しくは、あまり……」
「ほうか。人の数だけ捉え方は沢山あるろう。…………けんど、そもそもワシが大政奉還を急いだことには理由があってのう」
坂本はそう言うと、突然ずいと距離を詰めてくる。対面から真横へ座ると、声を潜めた。
壁に耳あり障子に目あり、と警戒しているのだろう。
「今はまだ口外せんと、誓えるかの?」
「はい」
桜司郎は力強く頷くと、真剣な表情になった。
それを見た坂本は頷き返してから口を開く。
「…………噂には聞いちゅうかも知らんが、長州や薩摩ら西国の藩が幕府を相手に、を起こそうとしゆうがよ」
その言葉に桜司郎はドキリとした。戦となれば必ず人が死ぬ。街が焼け、多くの町民が家を失い路頭に迷う。
それをやろうというのか。
「けんど、向こう側にもそれを望まん御仁がおる。政権が幕府から離れたら戦は起こらん……そう思うたワシはそん人らと協力して、大政奉還を進めたがよ。……幸運なことにも、ワシの属しちょった土佐藩は慶喜公と近しい間柄やったき」
急な流れに見えた大政奉還は、一触即発を避けるための策だったのだ。
「という事は……戦は起こらないのですね」
「ああ、起こらん。起こさせん。そのためにこの坂本がわざわざ京まで来たがやき。無論、反対意見もあるろうが……結果的に丸く収まればええだけの話しじゃ」
にやりと笑うと、手にした盃を天へ掲げる。
「いずれは朝廷や徳川幕府だけじゃのうて、薩摩も長州も会津も、みなで物事を考える世にしたい。身分問わずにみなが話せる世じゃ。そう心をひとつにすれば、海の向こうの大陸にも渡り合える──そう思わんか?」
その壮大な計画に、桜司郎は一瞬ぽかんとする。遠い昔に、"身分を無くした世を作りたい"と誰かが言っていた気がした。
「……ええ……ええ!すごいです、坂──抜六さん!」
桜司郎は思わず興奮気味に声を上げる。
それに対して坂本はシッと指を立てつつも、満更ではなさそうに笑った。
やがて二人は外へ出る。夜の冷え込みが目立つようになっていた。ぶるりと身体を震わせながら、黙々と歩く。坂本は河原町三条にある材木商の酢屋へ泊まっていると言った。
四条大橋へ差し掛かったあたりで、不意に坂本が立ち止まる。
「……のう、桜司郎」
「はい?」
「もし……、もしワシの計画が失敗した時は、国のことよりも己の居場所を守ることを考えるがぜよ」
計画が失敗、それは"坂本の死"と"戦が起こること"を意味する。
胸の奥にじわりと嫌なモヤが生まれた。
その表情を見た坂本はニカッと歯を見せて笑い、桜司郎の背を叩く。
「
指定された祇園の一室へ向かうと、そこには変わらずに人懐こい笑みを浮かべる坂本がいた。
桜司郎を認めるなり、すくっと立ち上がり腕を広げてくる。
「わはは、桜司郎!久方振りじゃのぉ。元気やったか?ワシはこの通りぜよ」
「坂──、抜六さん!……ええと、この腕は?」
「こりゃ欧米式の挨拶ちや。http://carinacyril786.e-monsite.com/blog/--3.html https://www.evernote.com/shard/s729/sh/f6d10c6e-79a1-1363-a3ca-451abbcfd519/Q2dx6XpmW7AUAZ-38oa4sx1AJNKp7CDogWQFfi3RmXFrBEQweRdgRG83nQ https://blog.udn.com/29339bfd/180140185 疚しい気持ちは無いき、ワシの胸に飛び込んじょれ」
相変わらずの距離の近さに驚きつつも、素直にその胸に収まった。すっぽりと覆い隠されるほどの長身であり、まるで大型犬でも抱いているのではないかという程に熱い。
「い、痛いですって」
再会を喜ぶように坂本は背中をバシバシと叩いてきた。欧米はこんなにも激しい挨拶なのかと思いつつ、暫くしてから離れる。
「来てくれて嬉しいきに。ささ、座っちょくれ。酒を交わすぜよ」
坂本はそう言うと、どっかりと胡座をかいて座り、近くにあった盃を桜司郎へと手渡した。そしてその中へ酒を注ぐ。
「有難うございます。抜六さんもどうぞ」
「おっとと……すまんのう」
桜司郎も注ぎ返すと、互いに盃に入った清酒を飲み干した。
「なかなか連絡すまんかったのう。そう言うたら、高杉のことは知っちゅうか」
「はい……。亡くなられたとおうのさんから文を頂きました」
「ほうか……。ワシも長崎に居ったき、人伝に話しは聞いちょった。……正直、実感が湧かんぜよ。人の死いうがは、どうも慣れんもんちや」
大きな肩を竦め、寂しげに坂本は呟く。
隙間風が行灯の明かりを揺らし、顔の影を深くした。きっとその目には高杉のみならず、これまでに見送ってきた友が映っているのだろう。
大切な人が居なくなったとしても。昨日も今日も、明日も、これから先も変わらずに日常は続いていく。なんて時とは無常なものだろうか。
しかしこのように時の流れを恨みながら、人は歴史を紡いできたのだ。それでも時々、世の理に抗いたくなる。
「……生きていくために、別れと向き合わなければならない。そう分かっているのに、割り切れないものです」
「ほんまに、ほうじゃのう。……って、しんみりしてもうた。いつか、日ノ本が今よりも平和になったら、共に長州へ行って高杉の墓へ参るぜよ」
そう言うと、坂本は歯を見せて笑った。「そうですね……、約束ですよ」
「分かった。その為には、もうちっくと気張らんといけんにゃあ」
その言葉に、桜司郎は先日永井から聞いた大政奉還の件を思い出した。坂本に会ったら聞こうと思っていたことも。
だが、気軽に聞けるほどの信頼関係があるかといえば、無いだろう。ただ坂本の人懐こさと、高杉という共通の知り合いが居たことによる偶然出来た縁だ。
──それでも知りたい。
ダメで元々だと、拳を軽く握った。そして唇を引き結び、僅かに身を乗り出す。
「あの…………」
「ん、?」
「大政奉還、について知りたくて……」
それを聞いた瞬間、坂本の表情が変わった。
何かを見定めるような視線を桜司郎へ向ける。
「わ、私……。馬関で貴方に国を知るようにと言われてから、よく考えたんです」
その脳裏には、馬関で坂本に言われた言葉が浮かんでいた。
『として生きると決めた以上、世を……この国を知らにゃあならんぜよ。高杉らぁが何を思うて反発しゆうのか、今の幕府の政治が続けばどうなるがか』
それ以降、桜司郎なりに世の中と向き合った。佐幕派である新選組、一和同心を掲げる伊東、倒幕を志す高杉、そして誰かが泣く世を変えたいという坂本。
それぞれの思いを知れば知るほどに、見えぬ壁を感じることもあった。だが、それでも知らぬよりはずっと良いと思えるようになった。
「世や人の思想に触れ、意見も交わすようになって。その意見とやらも、ほとんど受け売りですが……。少しずつ自分の目指す道も見えるようになってきました」
「そこは大事ない。この武家政治は徳川様よりもずっと前……七百年前の鎌倉政権より続くものぞ。いざ朝廷へと返上遊ばされたところで、すぐに指揮を取ることは適わぬだろう。朝廷の一家臣ではあるが、徳川が中心となるに違いない……」
永井はニヤリと笑う。
つまりは、政権を朝廷へ返上することで所謂倒幕派の反発を抑え、朝廷の下で政権を握り続けようという考えなのだ。
「成程…………」 https://www.evernote.com/shard/s729/sh/354f8ad1-2d8a-82e8-3354-30081923d2f1/D65NhzpmC0qhMWI_gPShhjuHuy8SWARYvbipoPWJ44B8xIAf8pSCBnZ0yw https://blog.udn.com/29339bfd/180140172 https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/122400121
「この大政奉還の建白書はより出されたものとの事じゃ」
その響きに、桜司郎は前に聞いた坂本の言葉が浮かぶ。
『変わることは怖いものがやない。生きとし生けるもの、変わるのが当たり前がよ。目を向けようとしやーせん方が怖い。これからは変化に順応しようとするものが生き残る時代やき』
そしていつか侍の時代が終わるとも彼は言った。
この変化こそがその始まりなのだろうか。「鈴木君、といったか」
ぼんやりとしているところへ、永井から声が掛けられた。
「は、はい」
背筋を伸ばし、真っ直ぐに視線を返す。
「君はこの話しを聞いてどう思う」
そのように問われ、桜司郎は近藤をちらりと見た。意見を申していいのか許可を得るためである。
近藤は小さく頷いた。
「せ、僭越ながら……。政に疎い私にはこの策が吉と出るか、凶と出るかは分かりかねます。しかしながら、天子様の元で皆が心をひとつに日ノ本を立て直せるのであれば、さして悪い方には転ばぬのではないでしょうか……。変化を恐れてはならぬかと」
それを聞いた永井は目を細める。
「変化を恐るるべからず……。同じことを申した御仁を儂は知っておる。この建白書の原案を書いた者だ。土佐のという上背のある男でな」
その名前に桜司郎はぴくりと眉を動かした。
──土佐と聞いた時にもしやと思ったけれど。やはり坂本さんだったんだ。
「坂本というのは、あの寺田屋での銃を打ったという…………」
「うむ。その坂本だ。儂も何回か会っておるが、気風の良い爽やかな男だよ。彼奴と話しておると、不思議とその通りになるような心地にすらさせられる」
目尻の皺を深める永井を見て、桜司郎は無意識のうちに何回か小さく頷く。
ついこの間までお尋ね者となっていたというのに、今や幕府側の人間からの覚えも良いとは流石だと思った。
「しかしながら永井様。土佐は倒幕派であるとも聞きます。斯様に信頼なさるのも考えものかと」
「近藤君、確かにそなたの言う通りじゃ。しかし、土佐の実情は内部で揺れておると聞く。少なくとも先導する男が死なぬ限りは、安泰じゃろう。……むしろ、土佐に西国の暴発を抑えて貰うように仕向けた方が、徳川様の手を煩わせぬ故都合が良い」
永井は、土佐の内情を知った上で坂本らの意見を取り入れるというのだ。坂本ほどの影響力と説得力のある男の言を、西国の藩らもそう無碍には扱えまいと踏んだのである。
「……成程、そういうお考えでしたら」
「実はな、その坂本が京へ来ておるのじゃ。手出しは無用。取り締まることが無きよう、隊にもよくよく伝えてまいれ」
「ははッ」
桜司郎は近藤に倣って頭を下げた。しかしその頭は既に別のことでいっぱいである。
──坂本さんが京にいる。会いたい。会って、大政奉還の意図を直接聞きたい。 やがてその願いが通じたのか、坂本から文が届いた。今度は屯所へ届けられたのではなく、まさかの巡察中に町娘が恋文を装って渡してきたのだ。
未練や怨念といった強い思いが、刀に取り憑いてしまうと言いたいのだろうかと桜花は小首を傾げる。
「そ……その力とは一体どういう物なのでしょう。書いてありましたか?」
桜花の問い掛けに、吉田は小さく頷いた。書物の頁を何枚か捲り、指をさす。
「──君の薄緑は武力を向上させ、僕の鬼切丸は知力を向上させる。もう一振りの短刀は、縁が強い者の予知夢を見る。https://lilly.99ing.net/Entry/1/ これら三振りを集めれば願いが叶うとのことだ」
つまり、武をもっ https://johnsmith786.futbolowo.pl/news/article/news https://www.beclass.com/rid=284b3cb655467259ce4c て敵をねじ伏せ、知をもって敵を惑わせる。短刀とは本来守り刀であるため、予知夢で縁が強き者を守るということだろう。即ち天下を制することが出来るという事だ。
まるで夢物語のような話しではあったが、現に痣が顕現している以上は信じざるを得ない。
「……願い…………」
──もしこの話が本当ならば、あの紙に書いてあったこと……"未来"という場所へ帰ることが出来るかも知れない。それがどのようなところかも分からないけれど、きっとそこが私の居場所なのだ。
ぼんやりとした世界に光が差し込んだかのような感覚がする。
そんな桜花とは裏腹に、吉田は心が晴れずにいた。
何故ならまだ二つ隠していることがあるのだ。
一つ目は、一度刀を所有し紋が刻まれてしまうと、その者が死ぬか、刀から拒絶されるまで主を変えることが出来ないということだ。つまり刀身のみが手に入ったとしても、真価を発揮することはない。
二つ目は、願いを叶えるためには何かしらの贄が必要となることだ。それが何であるかは分からない。他人の命か、あるいは自身の命か。
刀を揃えるだけで願いが叶うなど、そう上手い話が有る訳が無いのだ。
──話すべきじゃろうか?否、さすればこの関係性には疑心暗鬼が付き纏うようになる。短刀が手に入ってからでも遅くは無かろう。「──さん、吉田さん」
遠慮がちな手が肩に触れ、吉田はハッとした。
「ご、ごめん。ぼんやりとしていた。もう一度言うてくれんか」
「吉田さんの願いって何かなと」
「僕の願い…………」
その問い掛けに再び思案顔になる。視線を落として何も無い畳を見詰めれば、意識が過去へ引っ張られた。
それを見た桜花は、申し訳なさそうな表情で吉田の機嫌を伺うように覗き見る。
「あの、無理に言わなくても、大丈──」
「…………にもう一度会いたい……」
独り言のように呟かれたそれは、何処か寂しさを感じさせる。
「先生?」
復唱された言葉を聞き、吉田は思っていたことが口から滑り出ていたことに気付いた。手のひらを唇に押し当てる。
──僕は今なんと……。
志士として、国の名誉を取り戻すことを願わなければならぬはずだというのに。自身のを思うとは軟弱者だと己を恥じた。
ちらりと桜花の顔を見ると、自分の言葉の先を待つようにジッと見詰めてくる。それは癖なのだろうが、心まで覗くようなその瞳はまるでを彷彿とさせた。余計なことまで言ってしまうのはそのせいだということにする。
「……前に言った、お師さんのことだ。つまらない話しだから、聞いても面白く無いよ」
少しだけ突き放したように言ってみるが、むしろ桜花は目を大きくし、首を横に振った。
「吉田さんのお話しはいつも面白いです。ぜひ聞かせてください」
『あにうえのお話しがききたいです』
その好奇心や好意に似たものを隠そうともしない姿は、に居る年の離れた妹と被る。
「…………君は、物好きだね」
自分の話しなぞ聞いたところで、何の足しにもならぬというのに。何故聞きたがるのか。だが、全く不快では無いものだから、不思議だった。
思わず笑みを零せば、桜花はぼんやりとした後にみるみる頬を朱に染める。
「そして、……変だ」
「へ、変……ですか」
──男だというのに、女のような顔をしよる。そしてそれを愛らしいと思ってしまう僕もおる。これを変じゃと言わずに何と言うのか。
「……冗談だよ。先生のことだったね。名は
として身を売り、かの金を得、何とか生計を立てようとしていた。だがに罹り、見るも無惨な姿になってしまったのである。
日々周囲から蔑まれ、病を患っても治療する金など無く、一生働き続けるだけの人生など誰が楽しいものだろうか。ならば、これ以上苦しむ前にいっそ自分の手でと考え、女の家からそのまま持ち出した刀で二人を一息に突いた。
それから自分も後を追おうとしたが、それは母の手によって止められた。母を殺めることへの戸惑いのためか、刺し傷は急所から僅かに外れていたのだろう。
まだ息のあった母は最後の力を振り絞って、素手で刃を掴みそして首を横に小さく振り、微笑みながら血を吐いて死んでいった──
つい過去を思い出し、https://john.anime-movie.net/Entry/1/ https://andrea.99ing.net/Entry/1/ https://carinacyril786.futbolowo.pl/news/article/news 自己嫌悪に陥る。
「吉田様…………」
白岩はポツリと恩人の名を呼んだ。丁度一年前、や非人といった最下級身分で成る、が吉田の提案で結成されたのである。
幾百年に渡って継がれてきた悪しき身分制度を何ら疑問に思わず、受容している幕府は可笑しい。命に貴賎はあってはならぬ、と彼に出逢って初めて思うことが出来たのだ。生まれた頃から、自らを下賎な者だと思い続けて来た為に、目から鱗だった。
──あの方に賭けると決めたんじゃ。夢を見させてくれた礼を尽くさねば、あの世の母上や弟に顔を向けられん。
は、貴方様の御為に」
彼の為なら、間者でも人殺しでも何でもやると決めたのだ。
目の前の畑にある水溜まりに夕陽が反射し、その眩しさに目を細める。
白岩は空を仰ぐと立ち上がり、壬生の屯所へと足を向けた。 一方で壬生寺では、勇之助が家から持ってきた凧を子どもだけで揚げ始めた。へとへとになった松原と山南は寺の階段へ座ると、その様子を微笑ましそうに見ている。
桜花は遠慮がちに離れた場所で一人立っていたが、
「鈴さん、そないなところで立っとらんと、こっち」
見かねた松原が手招きをした。おずおずと頷くと、少し距離を開けてその横へ座る。
「子どもらと遊ぶんは心が洗われるようで、ええなァ。なあ、山南センセ」
「ええ、全くです。近頃は物騒な話しばかり耳にするものですから……」
「不逞浪士がこそこそと動いとるみたいやしな。……鈴さんも遣いで街へ出ることもあるやろうし、気ィ付けりィな。新撰組の屯所の使用人なんざ、ええや」
突然話しを振られ、桜花は視線を子どもたちから松原へと向けた。
「カモ……?」
「せや。ワシらに恨みを持つ者はぎょうさんおる。そんでも新撰組に喧嘩打って勝てるモンは居らんやろ。そこで矛先は弱い方へ向くんが人間っちゅうもんや。特にの奴らは過激な奴が多いからのう」
長州という単語にドキリとする。脳裏には褒められて嬉しいと笑う吉田の表情が浮かんだ。彼を見ているせいか、どうも"過激"という言葉は似つかわしいものに思える。
顎を伝う汗を手拭いで掬いながら、口元をさりげなくそれで覆った。昔から直ぐに顔に出てしまうからである。
「そう、なんですか。……でも、皆が皆悪い人じゃ無いのでは……」
そしてポツリと呟いた。それもそのはずで、少なくとも桜花にとっては、長州の出の高杉も桂も吉田もどれも恩人なのである。
それを聞いた山南は涼し気な目元を細めた。
「それはそうでしょうね。根っからの悪人など恐らく居ないかと。ですが、天子様より入京を禁じられているのにも関わらず、わざわざそれを無視して入ってくる者達に良い人など居りましょうか……。何か良からぬことを企んでいると言っているのも同然です」
その言葉は正論中の正論であり、桜花は俯く。高杉自身も八月十八日の政変で追い出されたと言っていたことを思い出した。
ただ。