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指定された祇園の一室へ向かうと、そこには変わらずに人懐こい笑みを浮かべる坂本がいた。
桜司郎を認めるなり、すくっと立ち上がり腕を広げてくる。
「わはは、桜司郎!久方振りじゃのぉ。元気やったか?ワシはこの通りぜよ」
「坂──、抜六さん!……ええと、この腕は?」
「こりゃ欧米式の挨拶ちや。http://carinacyril786.e-monsite.com/blog/--3.html https://www.evernote.com/shard/s729/sh/f6d10c6e-79a1-1363-a3ca-451abbcfd519/Q2dx6XpmW7AUAZ-38oa4sx1AJNKp7CDogWQFfi3RmXFrBEQweRdgRG83nQ https://blog.udn.com/29339bfd/180140185 疚しい気持ちは無いき、ワシの胸に飛び込んじょれ」
相変わらずの距離の近さに驚きつつも、素直にその胸に収まった。すっぽりと覆い隠されるほどの長身であり、まるで大型犬でも抱いているのではないかという程に熱い。
「い、痛いですって」
再会を喜ぶように坂本は背中をバシバシと叩いてきた。欧米はこんなにも激しい挨拶なのかと思いつつ、暫くしてから離れる。
「来てくれて嬉しいきに。ささ、座っちょくれ。酒を交わすぜよ」
坂本はそう言うと、どっかりと胡座をかいて座り、近くにあった盃を桜司郎へと手渡した。そしてその中へ酒を注ぐ。
「有難うございます。抜六さんもどうぞ」
「おっとと……すまんのう」
桜司郎も注ぎ返すと、互いに盃に入った清酒を飲み干した。
「なかなか連絡すまんかったのう。そう言うたら、高杉のことは知っちゅうか」
「はい……。亡くなられたとおうのさんから文を頂きました」
「ほうか……。ワシも長崎に居ったき、人伝に話しは聞いちょった。……正直、実感が湧かんぜよ。人の死いうがは、どうも慣れんもんちや」
大きな肩を竦め、寂しげに坂本は呟く。
隙間風が行灯の明かりを揺らし、顔の影を深くした。きっとその目には高杉のみならず、これまでに見送ってきた友が映っているのだろう。
大切な人が居なくなったとしても。昨日も今日も、明日も、これから先も変わらずに日常は続いていく。なんて時とは無常なものだろうか。
しかしこのように時の流れを恨みながら、人は歴史を紡いできたのだ。それでも時々、世の理に抗いたくなる。
「……生きていくために、別れと向き合わなければならない。そう分かっているのに、割り切れないものです」
「ほんまに、ほうじゃのう。……って、しんみりしてもうた。いつか、日ノ本が今よりも平和になったら、共に長州へ行って高杉の墓へ参るぜよ」
そう言うと、坂本は歯を見せて笑った。「そうですね……、約束ですよ」
「分かった。その為には、もうちっくと気張らんといけんにゃあ」
その言葉に、桜司郎は先日永井から聞いた大政奉還の件を思い出した。坂本に会ったら聞こうと思っていたことも。
だが、気軽に聞けるほどの信頼関係があるかといえば、無いだろう。ただ坂本の人懐こさと、高杉という共通の知り合いが居たことによる偶然出来た縁だ。
──それでも知りたい。
ダメで元々だと、拳を軽く握った。そして唇を引き結び、僅かに身を乗り出す。
「あの…………」
「ん、?」
「大政奉還、について知りたくて……」
それを聞いた瞬間、坂本の表情が変わった。
何かを見定めるような視線を桜司郎へ向ける。
「わ、私……。馬関で貴方に国を知るようにと言われてから、よく考えたんです」
その脳裏には、馬関で坂本に言われた言葉が浮かんでいた。
『として生きると決めた以上、世を……この国を知らにゃあならんぜよ。高杉らぁが何を思うて反発しゆうのか、今の幕府の政治が続けばどうなるがか』
それ以降、桜司郎なりに世の中と向き合った。佐幕派である新選組、一和同心を掲げる伊東、倒幕を志す高杉、そして誰かが泣く世を変えたいという坂本。
それぞれの思いを知れば知るほどに、見えぬ壁を感じることもあった。だが、それでも知らぬよりはずっと良いと思えるようになった。
「世や人の思想に触れ、意見も交わすようになって。その意見とやらも、ほとんど受け売りですが……。少しずつ自分の目指す道も見えるようになってきました」