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久坂は吉田と話がしたくて部屋へ向かった。
素直に応じてもらえるとは思ってないし,話になるかも分からない。
「稔麿,少しいいか。」
ここは強行突破で返事を待たずに部屋に踏み込んだ。
「何?」https://andersonking.anime-navi.net/Entry/2/ https://john.anime-movie.net/Entry/2/ https://andrea.99ing.net/Entry/2/
稔麿は壁に背中を預けて項垂れていた。素っ気ないと言うより元気がない。
「そこまで惚れ込んでるとは思わなかった。すまない。」
「何でお前が謝る。」
久坂は胡座をかいてから軽く頭を下げたが,吉田はそれを鼻で笑った。
「俺だってこんな筈じゃなかったさ。」
左手首に着けた紐の輪っかを眺めた。
「下げ緒か?」
久坂も手首にはめられた紐をしげしげと見つめた。
「御守だ。いや…願掛けかな…。」
吉田は手首を高々と翳して悲しげに目を細めた。
その哀愁漂う表情に,久坂はこれは重症だと唸り声を上げた。
『恋煩いは専門外だ…。』
その晩,久坂は桂に部屋へ呼ばれた。
浮かれて弛みきった顔をしてるかと思いきや,桂は涼やかな顔で待ち構えていた。
「お話とは?」
久坂が腰を据えるなり桂はすぐに聞きたかった質問をぶつけた。
「どうして私に手を貸した?」
待ち合わせ場所にひょっこり現れた久坂。
ここで会ったのは偶然か必然か問うと,さぁ?とはぐらかした。
桂はまた吉田の為に足止めに来たんだとばかり思った。
だけどもその予想は簡単に裏切られた。
「先程あっちの路地裏で綺麗な娘さんをお見掛けしたのですが,男に絡まれてましてね。
その男がどうも曲者で私では太刀打ち出来ないのですよ。
どうか助けてあげていただけないでしょうか?」
態とらしく困った素振りを見せてそう言った。
桂はすぐに意味を理解したが,久坂が何故こっちに手を貸す様な事をするのかが分からなかった。
もしかしたらそれも三津と会わせない為の嘘かも知れないと思ったが,
「早く行ってあげて下さい。」
お願いしますと頭を下げたのだ。
「どうしてあんな真似を?私達の間を取り持っても君には何の得もないだろう。」
そう問えば,久坂はまた困ったように笑みを浮かべた。
「損得勘定で動いた訳ではないですよ。稔麿を裏切った事には罪悪感を感じてるんですから。」「あの子桂さんの為に必死なんですもん。
貴方の身を案じて…何かあれば後を追うとまで言ったんですよ。」
「後を追う?そんな事言ったのか三津は。」
大袈裟だと思ったが三津ならやり兼ねない。そんな事させられないなと苦笑した。
「大事な方を亡くされたそうですね…。だからでしょうか,桂さんを失いたくない思いと遺されたくない思いがとても強くて。」
「それで手助けを?」
その問いかけには少し黙り込んで目を伏せた。
それからゆっくりと視線を上げて桂を見た。
「ふと文を思い出しました。」
萩に残してきた我が妻の顔がちらついた。
それを聞いて桂の顔が綻んだ。
「もし私に何かあれば文はどうするのだろう。私からの便りでしかこちらの状況を知り得ない今,何を思って過ごしているのだろう。」
大丈夫だと信じて穏やかに過ごしていてくれたらいいが,次に届く便りが不幸を報せる物かも知れないと不安を抱きながら過ごしてはいないか。
そんなどうしようもない考えが浮かんだのだと話した。
「今日桂さんに会えなかったらこの子はどうするのだろうと考えた時,お二人を引き離す事は出来ないと思いました。
後を追うと話した彼女の目は死を覚悟した武士の如く鋭かったのですから。」
「待つ者はとても強い。明日があるかも分からぬこの身を案じて毎日を過ごしている。我々はそれに支えられている。」
頭が上がらないねと笑い,それには久坂も頷いた。
「ただ……振り回され過ぎです。貴方も稔麿も。」
ここは言っておかねばならぬと姿勢を正して厳しい口調になった。
「やる事はしてるさ。職務には支障ない。」
「いいえ,周囲を巻き込み過ぎてます。彼女が桂さんにとって大切な存在なのは分かりますし否定もしません。
ですが少しは自重なさって下さいね。」
「肝に命じとくよ。」
久坂に言われてはしょうがないと渋々返事をした。
「でも今日の三津綺麗だったろう?」
得意気に口角を上げてくるものだから久坂も流石に盛大な溜息をついた。
「えぇとっても!まぁ自分の愛しい人が何しても一番ですけどね!」
惚気ける桂に,分かってねぇなこの親父!とまでは言えなかった。
だが自分なら功助とトキを説得して三津にいつもの生活を与えられるのではないかと思っていた。
『でも二人のあんな様子見たら…。ねぇ…。』
甘味屋を訪ねた時,二人がらしからぬ面持ちで店の前を右往左往していて,それをお客達になだめられてるのを見てしまった。
それなのに今三津を連れて帰ってしまえば,きっと二人は尋常でない喪失感を味わい,心臓も呼吸も止まってしまうのではないかと思わされた。http://eugenia22.eklablog.net/-a215337987 https://carinadarling.wordpress.com/2024/01/28/%e3%80%8c%e7%8e%a9%e5%85%b7%ef%bc%9f%e3%81%a8%e3%82%93%e3%81%a7%e3%82%82%e3%81%aa%e3%81%84%ef%bc%8c%e5%bd%bc%e5%a5%b3%e3%81%af%e7%a7%81/ https://domoto63.blog.shinobi.jp/Entry/26/
「三津,女将と旦那を悲しませてはいけないよ。一緒に謝ってあげるから今日は帰ろう。」
今日は家に帰してやる。今日は。
『俺にしては随分と優しくしてやってるんだぞ?』
いつもの三津なら"吉田さん変なもん食べた?"と柄にもないとからかってきただろう。
でも三津にそんな余裕はないらしい。
「帰ろう。」
身を剥がした吉田はくるりと振り返り歩き始めた。
小さな足音が後ろからついてくる。
「後ね…。」
続きを言う前にふぅ…と息を吐いた。
「何ですか?」
三津はしょんぼりとした顔で首を傾げた。
目の前の吉田は右手で後頭部を掻いた後にもう一度小さく息を吐いた。
「桂さんなら元気だから。」
出来ればこの名前は出したくなかった。だけどもこんな三津は三津じゃない。もうこれしか手段が思い浮かばなかった。
どんな反応を見せるかさえ予測不能。
立ち止まりちらりと視線を寄越してみれば,
「良かっ…た…。」
今にも泣き出しそうに潤んだ瞳が微笑んだ。
『悔しいけど仕方ない…。』
「…変な顔。」
「元からですぅ!」
三津はぽろぽろと零れる涙を拭いながら悪態をついた。
吉田はふんっと鼻を鳴らした。
『いつもの三津に戻ったら絶対連れて帰ってやる。』吉田に連れられ帰宅した三津は二人にこっぴどく叱られる事はなかった。
吉田とお客達が,三津が不憫でならないと訴えたから。
それには三津もしゅんとした。危険なのを承知の上で壬生へ出向いたのにこの有り様だ。短期間とは言え,喧嘩もしながら自分を受け入れてくれた彼らとすっぱり縁を切る事となってしまった。
「みんなホンマにごめん!いっぱい余計な心配かけて…。でも日常で何が起こるか分からへんのは私だけやなくてみんなも同じやと思う…。せやから今まで通りさせてもらわれへんやろか。」
店番もしたい散歩もしたいみんなと喋りたい甘えたい。
完全に前と同じ生活を送るのは出来ないかもしれないが,その時その時を受け入れていく覚悟はしている。
「心配も迷惑もかけずいる方が難しいでしょう。かけてしまうのが当たり前だ。
まぁ,三津が危なっかしくて心配なのは別問題だけどね。」
吉田はふふっと笑うと他のみんなも"あー…。"と声を漏らした。
「ねぇどういう意味?」
貶されてる事は分かる。口を尖らせ不貞腐れる。
それでも久しぶりに和やかな空気の輪に入れたことで三津は内心安心していた。
こうやって場の雰囲気を和らげてくれた吉田に感謝しなければならない。
「ごめんな三津…。危険なのも分かっとって送り出した自分等が阿呆やったと思ったんや。」
すまなかったと頭を下げる功助に三津の胸は痛んだ。
「ううん,おじちゃんとおばちゃんは私の背中を押してくれただけや。それにほら!私生きてるし元気やから!ね?自分等の事責めんといて。」
あの時を思い出してと二人の手に自分の手を重ねた。自分が正しいと思うなら貫けと背中を押した。三津も間違った事はしていないと胸を張った。ただそれだけの事じゃないか。
『やれやれ,手のかかる親子だね。さぁて…そろそろ帰らないと面倒臭い事になるかな。』
「後は三人でよく話し合えばいいよ。まぁ…三津がどうしようもなく心配と迷惑をかけるようなら俺が嫁に貰って面倒見てあげる。いつでも迎えに来るよ。」
吉田はじゃあねと後ろ手を振って店を出た。
お客達は来年は嫁に行けそうやなと冷やかし,三津は顔を赤くしてむきになった。
『来年は…どうなるんやろ…。来年も…その先もここで笑ってたい…。』
それだけで充分だ。
桜司郎が去った頃合に、隣の部屋へと続く襖がそっと開いた。そこは戸が閉め切られているせいか、中が殆ど見えぬほど暗い。闇の中からは眉間に皺を刻んだ男が現れた。
土方は立ったまま壁に背を預け、腕を組みながら桜司郎が去った廊下の方を見やる。
「…………普通に生きろ、か。あれだけ戦場に揉まれた奴にお前さんも残酷なことを言うぜ」
「今までは良かった。https://highforum.net/call-and-put-another-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-purchase-and-vend/ https://highforum.net/trade-stocks-commission-free-fxtm-global-online-trading/ https://newbacklink.com/call-and-put-other-trading-4-strategies-for-long-term-investors-to-buy-and-vend/ だがこれから先、新撰組は落日の時を迎えていく。もし捕まった時に女子だとバレたら、辱めを受けるだけだ。……それは悔やんでも悔やみきれないだろう」
「なら、どうしてそれを言ってやらない」
近藤はフッと微笑むと、目を瞑って首を横に振った。
「あの子の性格を考えても見ろ。突き放さないと、新撰組から離れようとしないじゃないか」
「……お前さんが嫌われ役になる必要なんざ無いんだぜ。そういうのは昔ッから俺の役目だったろうよ」
「嫌われるのに役目も何も無いさ。歳にばかり、そういうのをさせる自分に嫌気が差しただけだ……。今更だけどな」
そう言った近藤は、何処か吹っ切れたような様子だった。まるで数年前に浪士組として上京すると決めた頃のように、己の意志を強く感じさせる。
色々と喪って上り詰めたところから下り始めた今、やっと地に足が付いたのだろうか。
「……いつから、あいつが女だと気付いていた?」
「いつだったろう。薄々な……」
「そうか……。……済まねえ、実はそれには俺も一枚噛んでいた」
先程の言が本意でないにしろ、女であることを追放理由にされては、それを知りつつ隊に残した身としては目覚めが悪い話しだった。
バツが悪そうな表情をした土方を見て、近藤は淡く笑む。
「……それも知っていたよ」
「なッ、」
というものだろう。……お前たちがそうするのが良いと思ったことは、俺にとってもそうなのだから」
土方達がやりやすいように、あえて愚鈍な振りをしていたというのだ。やはり敵わない、と土方は瞳を伏せる。 一方で、桜司郎はまさに呆然とした様子で廊下を進んでいた。己の足が何処へ向かおうとしているのかすら、よく分かってはいない。
──荷物を纏めなきゃ。ああ、挨拶もか。
そんな頭でも、そのようにやらねばならぬことは分かる。存外に冷静な自分がいることが驚きだった。
部屋へ入ると、少なすぎる荷物をサッと風呂敷へ纏める。殆どは京の八木家へ預けてきてしまったため、直ぐに終えてしまった。
溜息すら出ない中、懐から何重にも手拭いに包まれたものを取り出す。はらりと解かれたそこからは、銀細工の簪が出て来た。
「…………沖田先生……」
甲府の戦から戻ってからは、彼にまだ会っていない。この医学所には居ないのだ。居場所すら教えて貰っていなかった。
命を賭けて行軍の足止めをし、近藤を頼むと重々に言われていたというのに、その切なる頼みすら果たせずに去ることになってしまったのだ。
あれほど性別がバレぬようにと言われていたのに、この大事な時期に露呈してしまうなど呆れられてしまうだろうか。会いたくて堪らないが、どの面を下げて行けば良いのかと目を瞑る。
その時、戸の前に人の気配を感じた。
「…………榊、居るだろうか」
ハッとした桜司郎は、慌てて簪を仕舞う。ぼんやりと滲んだ目元を拭うと腰を浮かせた。
「ど、どうぞ」
「……失礼する」
春の空気と共に旅装束に身を包んだ山口が入ってくる。
「山口さん……、その格好は。──」
ここを出て行くのかと言いかける前に、山口が口を開いた。
「副長命令でな。急遽、一足先に会津へ向かうこととなった。あんたは先行隊へ名を連ねて居なかった故、挨拶にと」
「そ、そうでしたか。会津を気にかけてらしたから、良かったですね」
「ああ。……気分が優れぬか?顔色が悪い」
何を決めたのか、と近藤は探るような視線を向けた。
すると、土方はやれやれと肩を竦めると何処か気恥ずかしそうに、笑みを見せる。
「俺は、ずっと近藤さんを支えていくと──」
迷いの無いそれを聞いた瞬間、https://jeffreybd567.dailyhitblog.com/13198204/trade-stocks-commission-free-fxtm-global-online-trading https://status-video-app93692.digiblogbox.com/34351764/call-option-put-options-best-option-call-put-tips https://alexisdx692.blogadvize.com/13373902/trade-stocks-commission-free-fxtm-global-online-trading 爽やかな草の匂いが鼻腔を掠める。浪士組として上洛をする前、多摩川の畔で二人で大の字になりながら、共に誓ったことを思い出した
年を食えども変わらぬ瞳に、近藤の心は揺れた。干からびていた土に水を与えられたような、はたまた錆びた戸に油を差されたような──泣きたい気持ちになる。
己が権力に目が眩み、刀を持てなくなり、一人孤独に足掻いている間も土方の心は傍に居てくれたのだ。
「と、…………」
言葉に表せないほどの気持ちが胸に湧き上がる。同時に鼻の奥がツンと熱くなり、唇が震えた。
「やはり、俺はその呼び方が良いや。なあ、勝っちゃん」
ニッと歯を見せて笑うと、ポンと肩に手が置かれる。
もう抑えきれなかった。
「歳……。歳、歳ィ……。すまッ、済まねえ……ッ。おれ、俺は……ッ」
嗚咽と共に、ぼろぼろと熱いものが頬を伝う。涙など何時ぶりに流しただろう。武士としての威厳もへったくれも無かった。
「ホント、馬鹿だよ。お前さんも、俺も……。これで振り出しだ。いや、それ以上に大変かも知れねえ」
「済まねえ……ッ」
「……大丈夫だ。勝っちゃんと俺が居れば、どうにでもなる。そうだろう?」
幹部も隊士も殆どを失ったというのに、土方は不敵に笑う。何処からその自信は湧いてくるんだと言いたいほどだ。
思えば、昔からそうだった。二人揃えば怖いもの知らずで、どんな苦難でも乗り越えてきた。 ひとしきり泣いた後、近藤は土方へ己の考えを伝えた。やはり会津へ直ぐ行く気にはなれないのだと。
だが、それを聞いても驚く様子はない。むしろ想定内だと言わんばかりに、あっさりと頷いた。
「……済まない、歳。会津へ恩を返さねばならぬということは重々承知している。しかし、まだ心が決まらぬのだ。甲府での敗走が情けないのは勿論だが、まだ俺の中で幕府の……将軍家の行く末を見定めたいという気持ちがある」
愚かだろう、と言えば土方は首を振る。
「勝っちゃんが将軍家へ並ならぬ忠誠を誓っていることは、よく知っている。無論、俺も同じ思いだ」
「歳……」
「会津には山口を行かせよう。奴ならば上手いようにやってくれるさ。後で合流でも問題は無い」
その言葉に近藤は頷いた。土方が山口を良く使い、それに山口も応えようとしているのは知っている。近藤とは違う信頼関係がそこにはあった。
「俺たちは五兵衛新田へ行こうと思う。実は、もう話しを付けてきてあるんだ」
そこの名主である金子という男は非常に協力的だった。将軍のお膝元というだけあり、まだ戦火を見ていない市井の者たちは薩長よりも幕府寄りなのだ。
「お前、いつの間に……」
「援軍が見込めねえことは分かっていたからな。それよりも次の陣を探していたんだ」
戦い続けることこそが、新撰組だと土方は言う。
流石は抜け目のない男である。一歩先の根回しに関しては右に出るものは居ないだろう。
「流石だ。俺が諦めようとしている間も、お前は前を向き続けていたのだな」
「やめろ、そんな大層なものじゃねえ。……まあ、そうと決まれば明日明後日にでも此処を発つ。山口と榊には俺から言って──」
土方は膝を立てようとするが、近藤がそれを押しとどめた。
どうやらまだ何かを言いたそうであることを察すると、座り直す。
それを見ると、近藤は俯いた。膝の上においた拳を僅かに握るなり、意を決したように口を開く。
「……歳よ。もう一つ、勝手を許してくれるか」
「お前さんが勝手だなんて今更だ。尻拭いはしてやるから、好きにしてくれ。……で、それは一体なんだ」
「……もう一人自由にしてやりたい
へついて行くつもりなのかい。あの人は、俺たちに、になれと言ったんだ!それは例に漏れずアンタのことも!それでも──」
「ついて行く」
迷いすら感じさせない程に、土方は即答した。
それを聞いた二人は、https://appssimilartowhatsapp70369.blogoscience.com/13268583/what-is-an-option-put-and-call-option-explained-stock https://firemagic09.bravejournal.net/ https://hectorfy098.shotblogs.com/call-option-put-options-best-option-call-put-tips-22906856 視線を交わすと僅かに項垂れる。原田は片手で後頭部を掻いた。
「…………こんな世で無けりゃあ……。否、男が泣き言を言うのはみっともねえ。いつか、また。どこかの戦場で会えることを願っている。歳さんほど、味方にして心強い人は居ねえしなッ」
「有難うよ。……山口と榊、総司には会って行かねえのかい。寂しがるぜ」
「会わない。寂しがられたら、決意が揺らいじまうからよ。……アイツらもだ、分かってくれる。──息災でな、歳さん」
そう言うなり、原田は背を向けた。
だが、永倉は立ち竦んだまま動かない。元々情に厚く、仲間を何よりも大切に思ってきた男だ。いざ別れのときを迎え、その心中には複雑な思いがあるのだろう。
それに気付いた原田は肘で小突いた。
「行こう、新八」
「ああ…………。武運を祈っている。歳さん、皆……」
「お前らもな。死なねえように気張れよ」
土方の声に後押しされるように、永倉は原田と共に門へと歩いていく。
──どうして。どうして、出て行こうとしているの。どうして副長は何も止めないの。どうして……
その光景を黙って見ていた桜司郎は、思わず小屋から飛び出しかけた。しかし山口の腕に阻まれる。
抗議の声を上げようとしたが、言葉にする前にそれは失われた。
様々な思いが浮かんでいるのだろう、目の前にいる山口の瞳には悲哀の色が湛えられている。それに怯んだ桜司郎は再度永倉らへと視線を向けた。
すると、門前で俯いた彼の目元からは光るものが落ちる。
それを見てしまったからか、何も言えなくなった。 暫くの間、土方はそこから離れなかった。怪訝そうに医師達がその横を通り過ぎるが、それすら目に入っていないようだった。
空が燃えるような色へと変わった頃に、漸く医学所の中へと戻っていく。寂しげに伸びた黒い影が、いつまでも桜司郎の瞼の裏に焼き付いては離れなかった。
それを見送った後に、山口と桜司郎は小屋から出る。思えば、こうして二人で盗み聞きをしたのは初めてでは無かった。山南と土方の最後の会話もそうして聞いたことを思い出す。
同じことを考えていたのか、山口は逡巡の後に口を開いた。
「……副長は思いを殺すのが上手くなった。山南さんの時はあれほど心を乱していたというのに」
それだけの別れを経験し、それ以上に背負うものが増えたということだ。
「…………どうして、思いを殺さなくてはならないんです」
「経緯は分からぬが、彼らにとってそれが最善だと副長は判断したのだろう。個人の感情は二の次だ。……良いか、上役から話しがあるまで永倉さんと原田さんのことは問うてはならない。脱退だと聞かされても、心を乱すことなく受け入れるのだ」
その言葉に、桜司郎は瞳に困惑の色を浮かべる。
「それが武士であり、組織のためでもある。幹部が慌てては、下の者に示しが付かんだろう」
武士や幹部と言われては、それ以上食い下がれなかった。
「……分かりました」
俯いた桜司郎を横目で見ながら、「ただ……」と話しを続けた。
「原田さんが気になることを言っていたな。確か、家臣になれ……と言われたとか」
「まさか、あの局長が……」
役職はあるものの、そういった上下関係を嫌っていたのは近藤のはずだ。だからこそ、旧知の者は気さくに言葉を交わしていた。それなのに、今更ながら家臣になれとは可笑しな話しである。
「ああ、らしくない。邪推すべきでは無いが、もしかすると……」
眉を寄せ、山口は瞳を伏せる。
「もしかすると、何ですか」
「…………局長は、解隊しようとしているのではないか……と」