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「お茶をお持ちしたんですけどお邪魔したらアカンと思って……。」
「そうか。喋り過ぎてちょうど喉が乾いたとこやった。」
宮部は弱々しく笑うと座っていた位置に戻って胡座をかいた。
「丁度いい。一旦休息を取りましょう。このまま話しても何も進展しないでしょう。」
久坂の提案に張り詰めていた空気が緩んだ。だが上座の乃美と桂の表情は厳しいまま。
二人のその表情は久しぶりに見た。宮部の持ってきた話は相当問題ありな案件なんだと察知した。
『よく見たら知らん人混じってる……。』https://www.liveinternet.ru/users/mathewanderson/post503781271// https://www.bloglovin.com/@mathewanderson4/12462593 https://mathewanderson7.pixnet.net/blog/post/142357651
名前の知らない藩士はたまに居るが顔はちゃんと覚えている。だから顔の知らない人物は藩邸の人間じゃないのは分かった。
普段感じない物々しい雰囲気に妙な胸騒ぎと居心地の悪さを感じて三津はそそくさと退散した。
その後話し合いは長時間に渡り,ぞろぞろと部屋から出て来た皆の顔はげっそりしていた。
宮部が訪れてからまぁまぁな時間が経過していた。
『もうみんな出はったかな。』
後片付けをしようと部屋を覗くと中にはまだ宮部が居た。その傍らには見知らぬ男と,吉田に久坂,入江に杉山も残っている。乃美と桂も上座に座ったままだった。
「あの……お茶淹れ直しましょうか?」
恐る恐る声をかけると全員の視線が三津に集まった。
「おぉ三津さんか。もう出るから構わん。ほれ松田こちらが桂さんが芸妓よりも熱を上げとる三津さんや。」
『また余計な事を……。』
桂は額に手を当てて俯いた。確実に三津の機嫌を損ねると思ったが三津は緊張した面持ちで松田に初めましてと頭を下げていた。
「松田重助です。もしや土方から寝取ったと噂の女子がこちらの?」
「何ですかその噂。」
松田と三津が同時に桂の方を見た。
「それはデマだ。三津は元々私の三津だ。」
そのデマを流したのは紛れもなく桂自身だがそれは言えない。
「でも火のない所に煙は立ちません。それに以前噂になった土方の女も三津と言う小柄な女子だと……。寝取りましたよね?」
「松田さん違いますよ。土方はわざと三津を自分の女かのように我々に思わせて捕縛の囮に使ってただけです。」
吉田が三津の名誉の為に土方の女ではないと助けに入ったがそれが更に話をややこしくしてしまった。
「ん?桂さんの女なのに土方の女で囮?」
「壬生でこき使われてましたけど土方さんの女ではないです。願い下げです。」松田は怪訝そうな顔で三津を凝視した。
「壬生に居た事があり土方とも面識はある?」
「ちょっとばかし土方さんに借りがあったので返してました。」
「なるほど。宮部先生この三津殿の力を借りれば屯所の襲撃は可能なのでは?内部の構造に詳しく奴らの行動や考えを熟知してるなら……。」
松田の言葉に全員が三津を見た。宮部は縋るように三津の両腕を掴んだ。
「三津さん後生だ!力を貸してくれ!頼む!」
酒の席で見た宮部とは程遠い衰弱しきって濁ったように光のない目を向けられ,三津は戸惑いよりも恐怖を感じた。何が宮部をこうしてしまったのか。
「やめて下さい宮部さん,この件に三津は関わらせないで下さい。」
空かさず吉田が間に割って入って三津を背中に隠した。
「しかしこうしてる間も古高は拷問を受けてるだろう。一刻も早く助け出さねばっ!」
三津は帰りもこのままでいいんだけどと思ったが,出来ればアヤメにいい思いをさせてあげたいからそこは黙って飲み込んだ。
「じゃあ行きますね〜。」
入江が先頭に立ち悠々と馬を走らせた。
歩けば結構な時間がかかる場所も楽にあっという間に着いた。
ただ乗り慣れてない三津とアヤメは揺られた事によるお尻の痛みと若干の吐き気に見舞われた。
三津とアヤメは裸足になって少しだけ着物をまくり上げて川に足をつけた。二人で並んで石に座って川面を見つめる。https://freelancer.anime-voice.com/Entry/70/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-81.html https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2024/03/post-942129.html
「水も綺麗で冷たくて気持ちいいんですけどね……空気も美味しいんですけどね……でも……これは私には刺激が……。」
「強いですよね……。」
二人が川面から視線を動かせない理由。それは目の前で無邪気に川遊びを楽しむ三人が着物を脱ぎ捨て褌一枚で鍛え上げられた裸体を見せつけてくるから。「って言うか寒くないですか!?まだ泳ぐには早くないですか!?」
「早い!まだ早い!」
水は冷たいのに二人の顔から熱が引くことはない。
「足より頭突っ込みたい……。」
三津の呟きにアヤメは首がもげるぐらいに激しく頷いた。
「でもほら……アヤメさんしっかり見てた方がいいですよ……。」
「いえ……大丈夫です……夏になれば皆さん藩邸内では大体半裸ですんで……。去年死ぬほど見てます……。またこの時期が来たんですね……。苦行です……。」
あぁ……見たくもないのに見せつけられるのか……。げっそりした表情のアヤメの背中を優しく撫でた。
「二人ともまだ気分悪いです?大丈夫?」
俯いたままの二人が心配で久坂が近付いて顔を覗き込んだ。
「だっ……!いじょーぶなんですけど目のやり場がない……。」
近付いて来たのが久坂でまだ良かった。三津は恥を忍び消え入りそうな声で顔を上げられない理由を告げた。
「あっそれで。そのうち見慣れますから。」
大丈夫大丈夫と笑って吉田と入江の方へ戻って行く久坂の引き締まったお尻を見て二人は撃沈した。そんなもん見慣れるはずがない。
「もう開き直って凝視するか……。」
三津が思い切って顔を上げると,
「ねぇ桂さんで見慣れてる癖に目のやり場がないってどういう事?」
見事に割れた腹筋が現れて開き直ろうとした事を激しく後悔した。
「大して見慣れてもないし吉田さんと小五郎さんでは別物ですからね。」
「何で三津の方が動揺してんの?アヤメさんはこんなに堂々としてんのに。」
「え?」
横を見ればいつの間にかアヤメは顔を上げていた。だがその目はとてつもなく遠くを見ている。
「そう言えば去年も嫌って言うほど見せつけられたの思い出したらどうって事ないなぁって思えてきて。何なら目に焼き付けとくべきですよ。」
そう言ってるが遠くを見つめている。
『アヤメさんが壊れた……。』
「いやぁ思ったより寒いっ!」
体を震わせながら笑顔で入江が近付いて来た。均等のとれた肉体にその笑顔は卑怯だ。目に焼き付けとくべきと言ったアヤメだが思いっきり体を捻って背を向けた。
「もう少し暑くなったらまた来よう。今度は桂さんも連れて来ようか。武勇伝を再現させる舟はないけど。」
久坂が喉を鳴らして笑った。
はて桂の武勇伝とは?三津は何の事?と目を丸くして久坂を見た。「桂さんから聞いてない?萩で代々語られる武勇伝。」
笑いを噛み殺しながら聞いてくる吉田に三津は首を横に振った。
「桂さん子供の頃萩の川で舟をひっくり返しては遊んでたんだって。」
男とは不思議な生き物だ。そんな遊びの何が楽しくてやっているんだ。
悪餓鬼が何を考えてるかは分からないが,遊んでいた場所,過ごした土地には興味がある。
以前にも話で聞いて行ってみたいと思った場所。
「その犯行現場の川,いつか連れてってあげるよ。さぁもう帰ろうか。風邪引きそう。」
三津の考えが読めたのか吉田はそう言って岸に上がると用意していた手拭いで体を拭いた。
「アヤメさん!大丈夫?どこか痛みますか?」
すぐさま久坂はアヤメの側に寄って背中を擦って宥めにかかった。
「サヤさん何があったんです?」
アヤメが事情を説明出来る状態じゃない。今日は事件が重なるなと溜息をついて吉田はサヤに説明を求めた。https://mathew.99ing.net/Entry/2/ https://mathewanderson.futbolowo.pl/news/article/news-1 https://www.beclass.com/rid=284d7b665ed801973a91
「いつも買い出しに行く八百屋さんでちょっと揉め事があって……。」
何やらここで買った野菜が粗悪品だったから支払った金を返せと言う客と八百屋の店主が揉めて取っ組み合いにまでなったと言う。
運悪くそのとばっちりを受けたアヤメが突き飛ばされて腕を怪我したらしい。
「骨に異常はなさそうですが捻挫ですかね。当分物を握るのも力を入れるのも痛むと思います。桂さんに事情を説明してしばらくお休みしましょう。」
久坂は手当てをしましょうねと優しく声をかけながら自室へ連れて行った。
「私らは小五郎さんに話に行きましょうか。私がアヤメさんの分までキッチリ働きますんで!」
「それが妥当だけどまた厄介事に巻き込まれる気がしてならないんだけど。」
やる気満々の三津に不安を抱きながら吉田と入江も二人に付き添って桂の元へ向かった。
「と言う訳で,アヤメさんが良くなるまでお休みさせてもらって私が代わりを務めます。」
三津は事情を説明していいでしょ?と小首を傾げてみせたが桂の表情は渋い。
なかなか了承してくれないので三津はさらに押した。
「今から新しい人雇うにしてもすぐ見つかるか分からへんし,新しい人来たらアヤメさんが戻ってくる場所なくなるって不安になるかもしれませんし。」
「それはそうと君は買い出しには行けないからなぁ。そこだけ誰かに頼まざるを得ないね。」
「それはやめた方がいいと思います。こうやって私に突っかかって来る人が二人いたって事は他にも同じように思ってる人は多数いるはずです。
そんな人らは女の仕事になんで自分が時間を割かなアカンのやって言うと思うんで。
それにサヤさんと私の女二人の方が案外目立たへんし大丈夫やと思うんですよ。」
自分の頬を指差しながら苦笑する三津に桂は胸の前で腕を組んで唸った。三津の言う事は一理ある。
「そのお顔は突っかかった身の程知らずの仕業ですか。大丈夫ですよ三津さん,その方には私の方からもお灸を添えさせていただきますね。」
笑顔で怒るサヤに全員がごくりと唾を飲んだ。「桂様,ご心配なのは分かりますが私としても勝手の分かっている三津さんに手伝っていただくのが一番です。」
サヤはそう言って深く頭を下げた。サヤにそう言われてしまったら反対出来ない。
「分かった。しばらくはそれで様子を見よう。ただし出かける時は必ず誰かに行き先を伝えてくれ。」
「分かりました。」
これで本格的に女中業が出来ると三津はうきうきした。今まではお手伝いと言う状態でどこか気を遣われながら仕事をもらっていたから,それがなくなると思うと嬉しくて仕方がない。
「だが今日はその格好で仕事をさせる訳には……。」
そう言われて三津はハッとして頭のてっぺんの結び目に手を置いた。
「取ります!取ります!流石にこれでは駄目ですもんね!」
手拭いを解いて湿布薬をはがした顔を見て全員の顔が顰められた。
赤みは引いたもののまだ腫れてるように見える。
「ホンマに……女子に怪我負わす男共の気が知れませんわ。」
サヤが怒りで体を震わせた。滅多に怒らないサヤが怒っている。激怒である。
「サ……サヤさん大丈夫ですよ!ちゃんと私からも仕返ししますんで!」
サヤの怒りの鎮め方は誰にも分からない。三津も自分で何を口走ってるんだと思いながらもこれしか言葉が思いつかなかった。
「仕返し……いいですね。一緒に仕返ししましょう。」
サヤの笑みがより一層深まった。私も鬱憤が溜まってたのと呟いたのは誰もが聞かなかった事にした。
「桂さん久坂です。よろしいですか?」
その声に部屋の中に張り詰めていた空気がようやく緩んだ。
「入りなさい。」
「そんな酷い殴られ方したのか。そうだよなそんだけ赤く腫れてたらな。」
吉田の殺気が増す一方でそんなに酷い顔になってるのかと三津は殴られた頬をさすった。
「三津さんの手前刃傷沙汰は避けたがやはり斬れば良かったか。」
「それが手っ取り早くて良かったが廊下汚すとサヤさんに。」
「怒られる。」 https://lilly.99ing.net/Entry/3/ http://johnsmith786.futbolowo.pl/news/article/news-2 https://www.beclass.com/rid=284d7b765eeba496108a
杉山と吉田は一瞬黙りこくってぶるっと体を震わせた。斬る斬らぬの話をする男達を震え上がらせるサヤとは一体何者なのだろうと三津は思う。
「違うこんな話をしてる場合でない。三津さん部屋へ送ろう。久坂が戻れば診るように頼んでおく。」
杉山は行こうかと流れるように三津を連れて行った。吉田は拳を握りしめ桂の部屋へ行った。
「失礼します。桂さんさっき三津が。」
「あぁ絡まれてたね。杉山が助けてくれたようだが。」
文机に向かい下を向いているがその背中からは怒りに満ちた殺気が溢れ出ていた。
「分かってたなら何故助けに出なかったのです。」
吉田は障子を閉めて静かにその場に正座した。
「私が出れば余計に拗れる内容だったからね。三津の様子は?」
「結構な力で殴られたようで。頬が腫れてましたよ。杉山が部屋まで連れて行きました。それより何で三津は杉山を。」
「松助さんって呼ぶんだろうね。以前から気になっていた。そこは追々三津に確認するよ。それより何か掴めたかい?」
そこでようやく桂は吉田の方へ振り向いた。穏やかそうな顔の割に苛立ちが勝り文机を指でとんとん叩く。
「彼女の名は小夜と言い堀川の宿,藤屋に下宿してます。最初は三日ほど滞在すると言っていましたが五日から七日と引き延ばしてるようです。
お伊勢参りのついでに京見物に来たとの事です。」
「京見物で壬生寺ねぇ……。」
「お伊勢参りも京見物も口実で実際は壬生狼の誰かに会いに来たのかと。」
「その誰かは玄瑞からの報告を待とうかね。あと三津殴った奴は私が処するから手出ししないでね。」入江は昨日小夜が立っていた場所を訪れた。入江の予想通り小夜はまた同じ場所に立っていたが今日は様子が違う。
『また絡まれてる……。』
どっかの誰かさんと同じだなと笑って距離を詰めながら様子を窺った。
「せやからちょっと付き合ってくれたらいいんやん。」
「ですから私はここで待ち合わせを!」
「いやいやずっとここ立ってるの知ってるから。足疲れてるやろ?座って休みぃな。」
小夜が思うより小夜は目立っていた。京女とはまた違った色香がだだ漏れだ。
『立てば芍薬座れば牡丹,歩く姿は百合の花。まさにあの人だね。』
行き交う人はちらちらと見るが我関せずと助けようともしない。
「遅くなって申し訳ない。すみません私の連れなんで気軽に触れないでいただきたい。」
入江は小夜の肩を抱いて引き寄せると絡んでいた男ににっこり笑いかけた。あからさまに疑いの眼差しを向けて去ろうとしない男に入江は舌打ちをした。
「何見てんだよ。二度と目ぇ開かねぇようにしてやろうか。それともこっから動きたくない?それなら両足斬り落としてやるよ。」
笑った目を見開いて失せろと威した。いつの間にか周りの冷たい視線が向けられてるのに気付いた男はクソッ!と小さく吐き捨てて小走りで逃げた。
「また会いましたね。」
入江が手を離すと小夜は深々と頭を下げてお礼を述べた。
「よほど会いたいんですね。その恩人に。」
「はい……。その方々も今の貴方様のように助けて下さいました。なので京を立つ前にどうしてもお礼が……。」
「でも折角その人らにも助けてもらったのに同じような目に遭ってたら駄目でしょ。」
それには返す言葉もなく小夜はそうですねと項垂れた。
昨夜は入江のせいで目が冴えて眠れなかった。
三津は欠伸を噛み殺しながら早朝から朝餉の準備をしていた。
三津とは正反対に入江はしゃきっとして朝餉を食べに現れたもんだから腹立たしくて仕方ない。だが関わらないのが一番。三津は相手にするまいと誓った。
しかし洗濯物を干しているところへ入江はやって来た。アヤメと行動しているのに平然とやって来た。
「三津さん怖い話があるんだけど聞いてくれない?」 https://carinaa.animegoe.com/Entry/3/ https://mypaper.pchome.com.tw/carinacyril786/post/1381764853 https://edward.anime-voice.com/Entry/3/
「怖い話?出来たら聞きたくないですね。」
入江の笑顔が胡散臭くて嫌な予感しかしない。軽くあしらってピタリとアヤメに寄り添うが入江はめげずについて来る。
「良かったらアヤメさんも聞きます?怖い話。」
あろう事かアヤメにさえ話を振った。入江に話しかけられただけでも震える程なのに怖い話なんて誰が好んで聞くものか。そう言うのは苦手ですと逃げてしまった。
「あっ!」
三津が引き止める前にその姿は消えてしまった。普段話しかけない癖にアヤメに声をかけたのはわざとか。
『アヤメさんが逃げ出すの先読みしてたな。』
「あー行っちゃった残念。」
全く残念そうではない笑顔の入江を上目で睨んでアヤメが置いて行ってしまった洗濯物に手を伸ばした。
「何ですか?怖い話って。」
「昨夜ですね,あれから部屋に戻ったらですね。」
まさか幽霊を見たとでも言うのか?入江は怪談話を信じる口なのか。他人事として聞き流そうとしていた。
「ねぇ何処に行ってたの?って私の布団に寝そべって稔麿が待ってたんですよ。」
「え!?」
流石に反応して入江に振り返ってしまった。何故吉田が入江の部屋に?しかも布団に寝そべって待ってた?
「ね?怖いでしょ?」
三津は無言で首を縦に振った。それは怖い。あの時間に布団で待ってるだなんて吉田は何を血迷ったのか。
とうとう男女の見境もなくなったのか。おまけに何処に行ってたの?なんて嫉妬心丸出しで。
「三津さんの所に行ってたのは勿論黙ってます。何とか誤魔化してますから三津さんも何か言われても寝てたから何も分からないとしらばっくれて下さいね。」
それにも激しく頷いて答えた。吉田がそっちに目覚めたなんて他言出来ないとボソボソ独り言が出てしまった。
『三津さんも何か勘違いしてそうだけど面白いからいっか。』
しばらくこの状況を楽しんでみるかと入江は気付かれないようににんまり笑った。「九一ここに居たのか。」
久坂の声に二人が振り向くと出かける支度を整えた久坂とその陰に隠れるようにしている吉田が居た。
「お出かけですか?」
入江を探してたと言うことは三人で何処か行くんだろうけど,その予定があるのにここで油を売ってこの男は何してるんだと三津は隣りの入江を一瞥した。
「三津さん体調悪いです?顔色が少し悪いような……。」
久坂は三津の目線に合わせて屈んで目の下にうっすら出来たクマを凝視した。
「いえ?昨日は寝付きも良くてぐっすりでしたよ?」
三津はここぞとばかりにぐっすりを強調した。昨夜は何ら異常はなかったのを主張しておいた。
「そうですか?九一の部屋から稔麿の声がして騒がしかったからもしかしてその声に起きてしまったのかと思って。
お前らはあんな時刻に何騒いでたんだ。」
久坂は吉田と入江の顔を見て問いかけたのに何故か三津がギクッと体を揺らした。
「あぁ稔麿がどうしても話したかったみたいでね。俺らの今後について。」
入江はにやりと口角を上げ吉田は目元を引き攣らせた。
『俺らの今後……。』
三津は思はず体を仰け反らせた。それを堂々と久坂の前で言うなんて実は入江も前向きに検討してるとでも言うのか。目眩で膝から崩れ落ちそう。