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こんな可愛い妹を泣かす男が現れたら容赦しないと三津は誓う。するとフサがキリッとした顔で三津に向けた。相変わらず目元が吉田に似てるなと少し見惚れた。
「まず姉上が幸せになるべきです。」
「私充分幸せよ?働けるし,ご飯も食べられるし,みんなと過ごせる。こうやって当たり前の毎日を生きてるのが幸せ。」 https://ameblo.jp/mathewanderson/entry-12846539592.html https://www.liveinternet.ru/users/mathewanderson/post504388631// https://www.bloglovin.com/@mathewanderson4/12525953
失った時の喪失感を思えば幸せなんて小さくていい。それに幸せばかりが続くと怖いから,たまに戒めのように少しばかりついてない日もあっていい。
「控え目やなぁ……。他に何か願いある?」
一之助に言われて三津はそれならと笑みを浮かべた。
「私より長生きしてください。みんな私より長く生きて欲しいです。」
一之助はにこにことそう言う三津をぽかんと眺めた。他に願う事など山程あるだろうに。
「……そうね。大丈夫,ここでのんびりみんなで歳とろ。しわが増えても腰が曲がってもこうやってみんなでお茶飲みながら他愛も無い話したらいいそ。
今日はあの三人から痛い思いさせられとるけぇ体休めよ。ね?」
「そうやな。明日から働くならしっかり休んだ方がええわ。すみちゃんとフサちゃんは俺が送ってくけぇ文ちゃんあと頼むわ。」
三人を見送ってから文は一応怪我がないか見せて欲しいと着物を脱ぐようにお願いした。
三津はそれで安心してもらえるならと居間で着物を脱いで見せた。
「うん,そんな酷い傷はないみたい。良かった。」
寒いのにごめんねとすぐに着物を羽織らせた。三津はいつもご心配おかけしてすみませんとひたすら謝った。
「長生きって……新ちゃんさんの事?」
聞きたかった事を背中に向かって問いかけた。
「そうですね……。あの人を思い出にしていくと,あの人が慰めてくれた新ちゃんの事をどんどん思い出してきて。
以前みたいに後を追おうとは思わへんし,新ちゃんの分までしっかり生きて幸せになろうって思うんですけど,そう思わせてくれたのはあの人なんやなぁって。」
海じゃなくて川に向かったのはそんな事を考えてたからかもしれない。
着物を整えて文と向かいあった。文はどこか申し訳なさそうな弱った顔をしていた。もしかしたら隠してた便りの事を気にしてるのかもと思った。
「また職務放棄して迎えに来たらどうする?」
「もし来たら……今度はちゃんとあっちの話も聞いてお互いに話し合ってさよならします。」
その時は,文も読んだ上で自分の気持ちは揺らがなかったと説明するつもりだ。
桂が納得するまで何度でも伝える気でいた。文にはそれが本当に三津が導き出した答えなのか,後に引けない意地なのか判断出来なかった。どっちにせよ桂の下では幸せになれないと思うところは文も変わらないからいいのだけど。
それともう一つ気になった事。
「独り身やなくて入江さんとの結婚選んだのは何で?」
すみがさっき言ってたように,まだ一人を楽しんでも良かったのに。
「あの……恥ずかしいんですけど……。長府に戻った時,阿弥陀寺やなくて白石さんのお宅に泊まることになったんです。」
頬を赤くしてもじもじしながら言葉を紡ぐ三津を文は可愛いなぁと思いながら眺めた。その話のどこが恥ずかしいのだろうと続きを聞いた。
「その時九一さん引き止めてくれなかったんです。寂しいって言う癖にあっさり“またね”って。私それがすっごい嫌でまだ離れたくなくて,九一さんのとこに戻ってまだ一緒に居たいって言っちゃったんです。みんなの前やのに……。
みんなの前やのにそんなん言うって……私九一さんの事大好きですよね?」
上目で恥ずかしそうに白状する三津が,文にとって抱きしめて締め上げたいぐらい可愛かった。
「何なん?その可愛い話。あの男何でさっさとこっち来んかね?こんな可愛い嫁が待っちょるのに。」
「でも九一さんね,私にあの人の事考え直す時間取ってもいいと思うって言ったんです。」
「は?何言っとんあいつ。」
『とうとうあいつって言った……。』
色んな仕打ちをしながらも歳上である事は考慮して“入江さん”と呼んでたのに。とうとう格下げされたか。
いや,今はそれは置いておこう。
「多分何か考えがあってやとは思いますけど。」
「んーでも入江さんの言い方にもちょっと気になる事があるそっちゃ。
三津さんがもし身篭ったらどっちの子か分からんくても育ての親になるって言ったんよね?」
「はい。」
「一之助さんが三津さん幸せにしてくれたらいいそっちゃ。三津さん絶対裏切らんもん。」
「無理無理!俺は泣かす自信しかない!三津さん泣かせたくない!すみちゃん無責任にそんなん言わんで!
それに三津さんが入江さん選んだんやけぇ……。」
気まずい空気にしないでくれとちらっと三津を見た。https://www.evernote.com/shard/s729/sh/a88afa47-81cb-adcd-9ba1-d61776d4da4a/TBqXAFyE0BWQwZdJW1-jQz8zqb__YAMukZ9-O0qmdofNmwUjUbq5-upQ3A https://blog.udn.com/79ce0388/180452919 https://blog.udn.com/79ce0388/180455434
「一之助さんにはもう幸せにしてもらってますよ?お陰様で働きやすいしこうやって雑談にも混じってくれはって。」
面倒みの良さに助かってますと嬉しそうに笑っている。
「そう言う意味やなくて……。」
「余計な事言わんで。」
一之助は瞬時にすみの口を塞いだ。
文がそう言うとこ鈍いよねぇと若干呆れてるように自分を見てくるから,三津は何が?と首を傾げてフサに説明を求める。
「姉上はもっと殿方に好かれてるのを自覚なさって下さい。」
「それは私を自意識過剰にしてより駄目な女にしようとしてる?」
「何で変なとこで捻くれとるそ?
吉田さんに入江さんに木戸様に。後は幕府側の副長に斎藤やった?求婚までされとるのに自意識過剰な訳ないでしょうが。」
「文ちゃん,なんか思ってるより恋敵多い……。」
幕府側の奴らって?知らない事だらけで一之助には衝撃の連打だ。「姉上はどの殿方にも愛されております。もう少し自信をお持ちになって下さい。」
年下のフサに真面目に叱られた。何故そんなに卑下するのかと吉田と似たような事も言われた。やはり血の繋がった兄妹だなと口元が緩む。
だが何故と言われても元々自分に自信はない。
「自信がないのもやけど,まず自分を好きになられへんからねぇ……。」
永遠の悩みだとぼやいたところで一之助が口を開いた。
「俺は三津さんの気持ち分かるわ。俺も自分に自信がない。
苛々しやすくてすぐ顔に出る。頭も大して良くない。思った事も後先考えずに言ってしまう。良いとこなんか一つもない。」
容姿だけは人並み以上。ただそれだけだ。
容姿も周りがそう言うからそうなのか?と思うぐらい。だけどただそれだけのモノに女は集まる。
その中でも気持ちが通い合う女子に出逢えたのに裏切られた。自分の価値が分からない。
「容姿いいの羨ましい……。私容姿も人並みではないんで……。」
三津は自分を鼻で笑った。
あの三人娘には大して可愛くないと罵られた。色気も無い。聡くもない。唯一幾松には胸の形は褒められたなと遠い目をした。
「でも俺,三津さんの話聞いて一つだけ自信持って言えること見つけた。
桂様よりは人としてまともやと思う。」
真剣な顔で言う一之助を三津はぽかんと見つめたが,徐々に笑いが込み上げてきた。
「確かに。一之助さん真面目やもん。」
三津がくすくす笑うと一之助はどこかほっとしたような表情をした。
「三津さんはあの三人より常識あるし断然可愛いからな。あの子ら性格も可愛くない。」
毒づく一之助に同意して文とすみも違いないと笑った。
「ほら三津さん。思った事がすぐ口から出る一之助さんが可愛いって言っとるんやけぇそれは信用出来るやろ?」
にやりと腹黒い笑みを見せる文に一之助はしまったと口を閉ざした。
「お世辞でも一之助さんに言っていただけるのは有り難いです……はい……。」
三津は顔を赤く染めてぼそぼそとお礼を言った。恥ずかしそうに視線を散らす三津の肩にすみがぽんと手を置いた。
「三津さん,一之助さんがお世辞なんて言うと思う?」
「すみちゃん俺の事見下しとるやろ。確かに言わんけども。」
確かに思ってない事は言えない質ではあるが,その言い方は馬鹿にしてるだろと不満を顕にした。
「良かったですね!姉上!一之助さんは心から可愛いって思っていらっしゃいます!自信を持って下さい!」
フサが両手をぐっと握って自分の事のように喜ぶ。
君が一番可愛いよと誰もが思った。
「三津さんに骨抜きにされた軟弱野郎って自分で言っとったそ。木戸様。」
「なぁ今更やけど木戸様って桂様の事やんな?名前変わったそ?」
話の腰を折って申し訳無いがずっと気になってたと一之助が言った。文は改名した旨を伝えて,自分は嫌がらせでその名を呼んでると片口を上げた。
「三津さんに関してはもはや名前で呼んどらんしね。」
「あの名前は慣れへんし,もう終わった関係やから小五郎さんなんて馴れ馴れし過ぎるからもう呼ばないようにします。」 https://www.liveinternet.ru/users/carinacyril786/post504337978// https://www.bloglovin.com/@carinacyril/12523306 https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/145038163
呼び方が定まらないからしばらくはあの人と呼ぶつもりだ。
「骨はちゃんと戻ったんやろか?」
すみも喉を鳴らして笑った。
「私は戻らんと思うわ。最後とか言っときながら諦めちょらんと思う。だって三津さんへの執着心凄いもん。」
「そんなに惚れ込んどるんか……。」
一之助は桂と接点がないから全く想像つかんと目を瞬かせた。まず内面が分からない。知ってるのは名前だけである意味想像上の生き物みたいだ。
「えっそんなんでうちの愚兄と夫婦になって大丈夫?逆恨みで斬られたりせん?」
すみの言葉に三津以外の全員身を震わせた。想像すると怖すぎる。
「それはないと思いますよ。あの人刀抜きませんから。逃げてばかりで男らしくないとか,腰抜けとか言われても血を流す争いはずっと避けてました。」
「刀抜かんのは今でも信じとるんや?」
すみがにんまりと笑って見てくるから三津は歯切れの悪い“まぁ……”を呟いて小さく頷いた。
「そう言う所も好きやったんや?」
今度は文がにやにやと聞いてくる。三津は頬を赤らめて無言で頷いた。そこへすみが更に追討ちをかける。
「やっぱりまだ好き?」
「人としては。」
それ以上でも以下でもないと苦笑した。
「再会した時何話したか聞いていい?」
文の目がまたキラキラと輝いた。単純に男女のあれこれの話が好きなんだなと三津は理解した。
「まず大号泣されたからそれをなだめるとこから始まったんで。」
大人の男の大号泣は,文以外の三人に衝撃を与えた。文は一度聞いているから何とも思わなかったが,一之助は同じ男として引くと言った。女の前で泣くなんてあり得ない。
「木戸様も入江さんも三津さんの前では泣いたり出来るんよね。そこまで曝け出せる程なんよ。」
「えっ愚兄も泣くそ!?三津さんの前では泣くそ!?」
すみは三津の両肩に手を置いてガクガクと前後に揺らした。激しく揺さぶられて答えられない三津の代わりに文が口を開いた。
「やけぇ三津さんの前では全然違うって言ったやろ?三津さんはどんな姿も受け入れる器の大きさなそ。
そこに男はみんな甘えるそっちゃ。んで,木戸様は甘えるだけ甘えて三津さんに何もしてやらん。入江さんはしっかり三津さん甘やかす。」
「まぁ……そうですね。でもあの人も何もしてくれなかった訳やないですけど。
贈り物は沢山してもらったけど,私が欲しかったのは一緒に居る時間やったんで。
政で忙しいあの人にそれを求めるのは無理ですよね。
私もあの人に何をしてあげられてたんですかねぇ?」
尽くしてたつもり。寄り添ってたつもり。理解してたつもり。
何一つ自信を持って出来ていたと言い切れない。
全て“つもり”であって,桂にとって充分だったかと言われたらそうじゃないと思う。
だから不安や不満を抱えていたと思う。
「三津さんはたっぷり愛情注いどったやん。やけぇあんだけ甘えとったんよ。
そんな大事な相手を私が取り上げたようなもんやね……。」
文が余計な事をしたと謝るから三津は全力で首を横に振った。
「私達二人で解決せなアカン問題にみんなを巻き込んだんです。みんなは助けようとしてくれただけです。こちらこそ巻き込んでごめんなさい。でもホンマにもう終わりですから。」
「それで最後に抱かせろって?あの人。」
文は単刀直入に聞いてきた。三津はそんなあけすけな言い方はされてないと苦笑するしかない。
「一生忘れないようにしてやるみたいな感じでした。」
「何か恨みこもっとるようで怖いんやけど……。」
一之助の中で桂の印象は随分悪くなった。三津はそんなんじゃなかったと否定したが一之助の疑いを持った目は変わらなかった。
「あの人にとって私が最後の人って言ってました。今まであっちこっちに手を出してるから説得力ないですけどね。」
「最後の感想は?」
文の容赦ない質問に三津は返答に困った。ちらりと見れば一之助も気不味そうにしている。
「めっちゃぐいぐい来ますね。まぁ……変わらないと言うか……。半分寝てたんで私。」
「そんな時に寝るなや。」
流石に一之助も口を挟んだ。
『おはぎ食べて一旦休憩しよ。』
貰ったおはぎを大事に抱えてお茶を淹れに言った。
先におはぎは久坂達の前に備えて,自分はお茶で喉を潤して一息ついた。
それからまた送られてきた文に手を伸ばした。
“乃美さんが美味しい外郎を見つけたから君を呼びたいと言っている。無論反対だ。それなら私が三津に贈るし,美味しそうに頬張る顔は私だけのモノだ。独占欲が強くて申し訳無い。好きだから仕方ない。
どうしようもないですねと呆れ顔で笑う顔も想像できてしまう。本物に会いたい。”
“寂しいとばかり嘆く男は嫌いか?でも寂しいのは事実だ。君の声も表情もすぐ目に浮かぶのに,温もりだけは感じられない。https://johnsmith123.pixnet.net/blog/post/146092960 https://ceye92.webmepage.com/mathewanderson https://suzanwines.blogspot.com/2024/04/blog-post_11.html
寂しい。そう思うのは私だけかい?どんな私でも受け止めてくれる君がいないと寂しい。君は私の拠り所だよ。唯一無二の存在だ。
どんな君でも愛してる。全てが愛しい。”
『小五郎さんが好きな私を,私は自分で否定してたんですね……。』そのままの自分をここまで愛してくれていたのに,居てくれるだけでいいと言われたのに,何故それを素直に聞き入れられなかったんだろう。
挙句に昨日は何と言った?謝罪の言葉も口説き文句も聞き飽きた?
ふざけるな。自分で自分の頬を引っ叩いた。
『聞き飽きるほど言ったのは私が全然理解せんかったからや……。』
分かってない,伝わってないと思うから桂は何度も何度も伝えてくれていた。
それを微塵も理解していなかった。
「阿呆や私……。」
自分自身に呆れて物も言えない。
それでも別れた事にそれ程の後悔を感じないのは,“桂の女”と言う肩書から解放されたからかもしれない。
「小五郎さんごめんなさい……気持ちは凄く嬉しい……。気持ちが通じた時の嬉しさは今でも忘れてません。
でもやっぱり私には劣等感を取り去れない……。」
入江と過ごして感じた安心感の方が心地よくて離れ難い。変な虚勢も張らなくていいし,背伸びをしなくてもいい。何も意識しなくていい心地よさを入江に感じた。
桂の傍ではそれが出来ない。どうしても劣らないようにと無理をする。素直で居られない。自分で自分の首を絞める。疲れる。
『それに私はじっとしてるの無理やったし。まずそこよね。』
三津は動いて役に立ちたかった。その一点だけお互いに譲れなかったんだ。でもそこが三津には一番重要な部分だったのかもしれない。
「私よりも幸せになってください……。」
文の束を胸に抱いて強く願った。自分よりも幸せな毎日を過ごして欲しい。
『白石さん,幾松さんごめんなさい。小五郎さんの気持ちはしかと受け止めました。だけどやっぱり戻れません。』
入江が前に言ってたように,桂も然るべき時に然るべき相手と夫婦になるだろう。例えそこに愛のないモノだとしてもそれが運命なんだ。
「兄上,私九一さんと幸せになりますね。」
喜んでくれますか?と話しかけた時,玄関先からガタガタっと派手な音と駆け込んでくる足音が二つ。
「三津さん大丈夫!?」
部屋に飛び込んできた二人を三津は口を半開きにして見つめた。
「すみさん?フサちゃん?どしたの?」
「どしたの?やない!お客さんが三津さん暴行受けてるの見たって教えてくれたそ!!」
内緒にしておこうと思ったのにもうバレてしまった。面倒な事にすみはすぐにやり返しに行こうと言う。ひとまずすみを宥めなければ。
「すみさん,その必要はないです。私がここで幸せに暮らしてるのがあの人達には最高の嫌がらせになりますから。」
三津はふふんと得意げに笑った。