まだまだ暑さの厳しい今日も,お寺の境内には三津と子供たちの声がよく響く。
「三津姉ちゃん覚悟っ!」
木の枝を刀に見立てて少年たちが斬りかかる。
「させるかぁ!」
その枝を払いのけ,次々と少年たちを斬り倒してゆく。
そしてくるりと振り返り得意気に笑みを浮かべた。
たすき掛けで仁王立ちする三津の姿は勇ましい。
威勢良く枝を突きつけながら,最後の一人が立ちはだかる。
三津は少年の目線に腰を落とすとにっと笑って,頭をくしゃくしゃと撫で回した。
「口の利き方に気をつけや,宗。」
頭を撫で回した手で今度は両頬を摘むと左右に引っ張った。
「宗やなくて宗太郎や。」
悔しそうに三津を睨んで頬を摘む手を払いのけた。
三津は,はいはいと微笑んで優しく頭を撫でた。
順番に他の子供たちの頭を撫でていく。
それが遊びの終わりの合図。
「もう帰るん?」
少年たちがつまらないと口々に呟くのが堪らなく可愛いくてついつい長居をしてしまう。
「これでもお三津は忙しいねん。会いたくなったら店までおいで。」
少年たちを宥めてから,またねと手を振って背を向けた。
『お遣いの途中やからな。遅くなったら何言われるか…。』
トキに怒られる自分を想像して青ざめていると,
「隙あり!」
宗太郎の声と共に三津の後頭部に激痛が走った。
「いっ…たぁいっ!」
頭を押さえて振り返ると宗太郎がやってやったと言わんばかりに胸を張っていた。
宗太郎のまだ遊びたりないと訴えてくる眼差しに三津はふっと笑みを浮かべた。
そして拳を天高く振り上げて宗太郎を追い回す。
「こら!待ちな!」
宗太郎は逃げ回りながら三津が相手をしてくれるのを喜んだ。
その賑やかな声に誘われて境内を見つめる青年が一人。
追っかけっこの様子を羨ましそうに眺めていた。
「おい,さぼってるんじゃねえよ総司!」
名前を呼ばれ振り返れば苛立ちを全面に出している男の姿。
「土方さん。さぼってなんかいませんよ,人聞きの悪い。」
それでも境内を見つめる総司の視線を苛々しながら辿ってみた。
「楽しそうでしょ?」
総司は無邪気に笑って境内を指差した。
その先には子供たちとそれに負けないぐらいに走り回る少女がいた。