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冷めきった目で向かい合う二人の方へ桂がちらりと振り返る。
『二人のあの顔……喧嘩か?松子が謝れと言ったように聞こえたが……。』
仲裁に入ろうかと口を開きかけてすぐに閉じた。
『夫婦喧嘩は犬も食わんと言うし,他者が口出しするものでは……。待て,松子の夫は私であってあの二人は夫婦じゃない。』
自分は何に遠慮してるんだと首を横に振って気を取り直した。
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「背後で険悪な空気を醸し出さないでくれないか?気になって歩けんのだが……。」
「険悪ではないです。松子が玄瑞が遊び人やったのを信じんのでどう伝えようかと。」
「兄上が遊び人かどうかは一旦置いといて,小太郎さんが弄んだ女子達に謝って欲しいだけです。
男共は女子を何やと思っとるんですか。ただ都合よく扱うだけの軽い存在ですか。」
入江を睨んだ後に桂にもその目を向けた。
『口を挟むんじゃなかった……。』
巻き添えを食らった桂は条件反射ですまんと謝った。
「小太郎,お前も素直に謝っとけ。玄瑞ほどじゃなくても遊んでただろ。」
「木戸さんに言われたくないですねぇ。」
「言っときますけど小太郎さんの悪事は文さんから密告書いただいてますからね。」
「申し訳ありませんでした。」
全部知ってますと言われた入江は傷付けたであろう女子達に誠心誠意謝りますと体を折りたたむ勢いで謝罪した。
『文ちゃん何を暴露したんだろうか……。その前にこいつも何をやらかして来たのやら……。』
離れていても常に感じる文の脅威。
「ずるいわぁ……。私の過去は知らんでいいってあれ程言ったのにぃ……。と言うか気持ちの整理がついてから自分の口で言いたかったわぁ……。」
入江は両手で顔を覆い,体を左右に振ってその絶望感を表した。
「どっちにしろ私の感想はホンマに四人共“ろくでもないな”に尽きますんで。」
「四人……?えっ私ら全員分晒されたそ?玄瑞も?稔麿も?晋作も?」
入江は両手を外して真っ青な顔を見せた。予想外過ぎて思考がついてこないらしい。
三津がゆっくり頷いたのを見て口から魂が抜けかけた。
「もう一つ言わせてもらうと小太郎さんの記憶から消えてる物もあるでしょうから想定の数倍の悪事が書かれてたと思っていただければ。」
三津からの更なる追い打ちを受けた入江は膝から崩れ落ち両手を地面につけて項垂れた。
「最っ悪だ……。」
『この台詞今朝私が言ったなぁ……。』
桂は四つん這い状態の入江を哀れみの目で見つめた。そして自分にこれ以上の災難が降り掛からない事を切に願う。三津は入江の前にしゃがみ込んでその左肩をぽんぽんと叩いた。
「過去の事はもうどうにもならないので。」
「ねぇそれ慰め?逆に心臓をぎゅって握り潰されてる感じするんやけど。」
「慰めではなく事実です。」
『ここは小太郎を庇ってやりたい所だが間違いなく私にも火の粉がかかる……。』
桂は風前の灯火状態の入江を助けてやりたいが,そうすれば自分も同じ目に遭うのが怖かった。
確実に三津はとどめを刺して来るに違いない。文が何か入れ知恵をし,手札まで与えていると察した。
「事実やろうけど……事実やろうけど今の私は全てを三津に捧げちょるんやからもう帳消しでいいやろうがぁぁぁ!!!文ちゃんの鬼ぃぃぃ!!!」
『小太郎が壊れた……。』
入江が地面に拳を打ち付け出したのを見て桂はどん引きした。自分の知っている入江はこんな奴じゃない。
「だから前にも言いましたけど,された側はした側と違って心に深く傷として残るんですよ。忘れるにしても時間がかかるんです。
それを肝に銘じてもう同じ過ちを繰り返さん事です。」
三津は冷静に打ち付ける拳をさっと両手で握って止めた。
「だとしても過剰だったのは反省するよ。」
『それにこれからは離れて暮らす。三津の言う干渉し合わない暮らしをさせてあげられる。』
これも自分から三津への愛だ。
京へ連れて行くのはまだ多少の不安は付き纏うものの,入江も居るし何かあれば駆けつけられる距離である事は安心出来る要素だ。
「私も準一郎さんを少しでも安心させてあげられるように努めます。」
「じゃあ家で大人しくしててね。歩く問題児さん。」 https://keiichi76.anime-festa.com/Entry/25/ https://mis2231.atgj.net/Entry/31/ https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202404270000/
桂はくすりと笑って三津の頬をさらりと撫でた。それからいつものように二人を先導して歩いた。
「家の中では流石に問題は起こさんわな。」
「起こしません。」
いい加減問題児扱いはやめてくれとむくれた三津の耳元に入江は顔を寄せた。
「分からんで?懐妊って事件起こすかもしらん。」
「は!?」
思わず声を荒げてしまった。桂もそれに反応して振り返ったが,にやにや笑う入江を見てまた何か言ったなぐらいにしか思わなかった。
そこにいちいち首を突っ込んでいたら予定通り進めない。
桂が何も言わなかったのをいい事に入江はまた三津にだけ聞こえる声で続けた。
「男の子と女の子,両方欲しいと思わん?」
ふふっと笑う声に一瞬で全身の血液が沸き立った。やっぱりあれやこれやを想像した。家族のいない三津にとって子供に恵まれた家庭は憧れだ。
『子供は欲しいと思うけど……。』
三津はにこにこ笑う入江を直視出来なかった。
『いやいやまたからかわれてる。これは愛情表現ではあるけど本気やない。
いや……からかわれてるは失礼か……。』
本気ではないと言うのもきっと失礼だ。
やり場のない“好き”をどうにかする為にこの手段を選んだ。
だから入江はまだ自分に愛情を抱いてくれてると言う事。
そしてそれは,
『私がそうやと信じたいんよな……。』
自分もまだ入江に恋心があるが故に,互いの気持ちが冷めてない確証が欲しい。
『相変わらず気持ちの落とし所のない関係や……。』
桂とも以前より夫婦になれているが変な関係だなぁとふとした時に思うのだ。それを見てみぬふりをしてやり過ごす。
『今はこれでいい。今は……。』
きっと転換点は訪れる。今までに何度もそれがやって来たように,この関係にもいつかそれはやって来る。
それは然るべき時に訪れて,然るべき判断を自分は下すのだろう。
『今までもそうやった。何が起こるか分からへんのに今悩んでも仕方ない。
その時が来たら,自分がどうしたいかを考えればいいんですよね?兄上……。』
では,今入江にすべき返答とは。
こちらは真面目に返してみようか。三津は入江の顔を見上げた。
「そうですね。男の子も女の子も欲しいですけど,それがどちらであれ元気な子が生まれてくれたらいいです。
私は今まで準一郎さんと何度も営みましたが身篭る気配はなかったです。
ですから養子を迎えるのも一つの案だと思ってます。」
「そうやなぁ。養子をもらうのもありやな。それでも私は父親として愛情を注ぐ。」
入江も真面目に返答した。どんな形であれ父として生きると答えてくれた。その返答に三津は穏やかに微笑んだ。
やった,まともな会話に戻ったぞ!と心の中で喜んだ。
「じゃあ……。」
「でもその前に,私との子をつくる努力はしてくれんそ?あの一回では満足出来んのやけど?」
『戻った……。交わしたはずの話題に戻った……。
兄上……何故この人を生かしたのですか……。』
次に打つ手が思い付かなくて,三津は恨めしそうに入江のにこやかな顔を見つめた。唇を噛みしめ口角はだだ下がり。
「そう言う顔ももっと見せて欲しいわ。私だけに。」
面白いと同時に可愛いと愛おしいが込み上げて来るからそう言ったのに,
「言い方が遊び人っ!」
「玄瑞ほど遊んどらん。」
失礼なと真顔で返した。
「兄上と弄んだ女子達に謝れ。」
三津は半目で睨み返した。
「木戸さんの許しあるから今夜から松子と一緒の布団で寝ようかなぁ。」
入江は無言で歩く桂の顔をちらちら見た。その顔はにたにた笑って明らかに反応を窺って楽しんでいる。
『そんな挑発に乗ってたまるか。』
凛と澄まして聞こえないふり。三津も“まぁたからかって”と呆れた顔で歩いている。
「松子,黙認や。今晩は私に極上の癒やしを……。」
三津はその極上の癒やしを想像して入江の背中を思い切り叩いた。
「いってぇ!……松子,何想像したそ?私は松子の按摩で極上の癒やしを与えてもらおうと思ったのに……。」
「なっ!狡いっ!」 https://www.evernote.com/shard/s729/sh/4f919ec3-3cce-6f7f-4875-eb2dbf66f5fe/qZVr6GXIWzuR-0EQN2A5HJa5GoibtDhHbfaG3wAy-tnoHFSbIK6z_zVt8g https://blog.udn.com/29339bfd/180552870 https://classic-blog.udn.com/29339bfd/180559345
三津は言い方に悪意があるぞと噛み付いた。だが確かに“極上の癒やし”に過度に反応したのは自分だと自覚してる。だからより一層恥ずかしくて死にそうだ。
「狡いの意味が分からん。松子が勝手に私とのあれやこれやを想像した癖に。
私を見る度にそんな事考えとったんやな。照れるわ。」
嬉しそうに顔を赤らめやがるから三津はもう一発背中を叩いた。
「松子,どうせなら尻を蹴ってくれと……。」
「ご褒美は与えません。」
「すまん,ちょっといいか。
九一,お前塾生時代に文ちゃんの前でしていた事をまんま三津の前でやってるな?」
流石に桂が割って入った。こうやって愛しの我が妻が穢されていってると思うと腹立たしい。
それに昨日の夜に悪ふざけはもうしないと言ったばかりじゃないか。
「小太郎です。もぉ昨日散々九一って名前で呼ぶから……。」
「えっやっぱり昨日は……。」
「松子,いらん想像力を働かすな。小太郎,純粋無垢な松子を返せ。」
これ以上ふざけたら本当に許さんと桂は目で訴えた。その背後からもどす黒い殺気を感じ取った入江はいつものようにへらへら笑って謝った。
「ごめんなさい。でも一言言わせてもらうと,松子はまだ純粋無垢やから下世話な話で赤面するし,私と木戸さんの関係も信じそうになっとるんで松子は変わっちょらん。」
「だとしても松子の前では下世話な話は控えろ。文ちゃんとは違う。」
「文ちゃんと違うのは重々承知しとりますよ。だって反応が全然違うけぇ。やけん松子の可愛い反応見たくてつい。」
入江は愛おしそうに三津の顔を覗き込んだ。三津は可愛いと言われて嬉しいが,今は素直に喜べなくてふいっと顔を反らした。
「でもまぁ文ちゃんにも好きな子いじめたくなるのは分かるが嫌われるだけやって言われたし控えます。松子に嫌われたくないけぇ。
それとももう嫌いになった?」
そっぽを向いたままの三津に甘えた声で問いかけた。その問いに三津はまさか!とすぐに振り返った。
「そんなんで嫌いになったりしません。」
「じゃあ好き?」
にこにこ笑って小首を傾げる入江に,三津はやられた……と項垂れた。
桂の前で好きと言わせる気だと気付いた時にはもう手後れ。
ちらっと桂を見れば,正直に言っていいよと既に面倒くさい感じにしょげている。
三津はげんなりした顔で入江を見上げた。
「はいはい……二人共好きですよ……。」
「うわぁすんごい投げやり!」
表情からして全然気持ちこもってないなと声を上げて笑った。
「ほら見ろ。以前の三津なら“そんな事言わせんとって”って恥じらって上目で睨んで来る愛らしさがあったのに。お前のせいでこんな風に……。」
「え?木戸さんに対してはようこの顔しちょりましたよ?愛が重すぎてうんざりみたいな。」
入江に文句を言えばそれ以上に殺傷性の高い言葉が返ってきてぐさりと桂の胸を突き刺した。
「やっぱり私の愛は重いのかい?」
哀愁を漂わせ,しょんぼりした目でちらちら三津の様子を窺った。更に面倒くさい状態になったじゃないかと三津は入江を横目で睨んでから溜息をついた。
「愛が重いと言うか過保護ですね。それは私の行いからそうなってしまったので仕方ないと言うか何と言うか……。」
自由のきく右手で目を擦り,重みの感じる左腕の方を見て言葉を失った。
衝撃が強過ぎて顎が外れそうになった。驚きの余り声すら出ない。
「おはようございます……。起きたらこのような状態で……。起こしていいものか分からずに……。」
「おっ!起きろ九一っ!!お前何でこんなっ……!!」
桂は左腕で入江に腕枕をしており,入江は桂の胸に寄りかかって寝間着をしっかり握って眠っていた。
桂は変な汗をかきながら必死に左腕を引っこ抜いた。そのお陰で入江の頭は布団に落ちた。
「いで……。あーいつの間にか寝ちょった。おはようございます。松子もおはよ。」
入江はへらへら笑って二人の顔を見上げた。
「おっおはようございます……。あの……昨夜はその……一線を……?」
三津は顔を赤らめながらやっぱり二人はそう言う関係?と気まずいようで好奇心も抑えられない眼差しを向けた。
「ないっ!!絶対ないっ!!それなら私は君を抱きたいっ!!」
「朝から大声で何言ってるんですか。事情は後で聞きますんで支度してください。」
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三津は私は外に出てますよと冷たくあしらって部屋を出た。
「最っ悪だ……。」
桂は両手で顔を覆って項垂れた。その背中を入江が優しく擦った。
「私で良ければ慰め……。」
「いらん。」
瞬速で断った。「ホンマに心臓に悪いから止めてくださいね。」
三津は起きてその光景を見て心臓止まるかと思ったんだとぼやいた。その小言に桂は黙り込み,入江はからから笑った。
「ごめんって。私は松子の布団に潜り込みたかったんよ?でもそんなんしたら後々この人が面倒くさいやん?」
三津はそれは分かるけどと不満げな表情を浮かべた。
“京に戻るんやなって思ったら稔麿と玄瑞の顔がちらつくそ”
そんな事言われたら心配になるに決まってる。それを笑って誤魔化すから三津は茶化すなと怒った。
「そこは置いといて,その時言いたい事や伝えたい気持ちは出来るだけ隠さんと言ってくださいね?余計な事は言う癖に肝心なのは言わへんのやから。」
桂は二人の会話を無になって聞いていた。
『今回も上手く小太郎に恩を売られた……。稔麿達の事は嘘では無いが……。』
それに今回は妥協でも桂が入江を受け入れて胸を貸したが,そこは話さなかった。あくまで自分が勝手にと言い張った。
朝餉の時,さぁ説明してもらおうかと三津に迫られたのを入江が上手く嘘でかわした。
「ほら,三人同室やけぇ松子に膝枕してもらったり抱きしめて元気貰ったり出来んやん?やけぇここは木戸さんで我慢するかぁって寝とる所に勝手に潜り込んだそ。」
「だから妥協でも私に求めるな。私は二人の好きなようにしろと許可は出してる。」
「でも木戸さんも松子に求めるんやし,二人から求められたら松子が疲れるでしょう。
添い寝程度で満足しちょるんやけぇええやないですか。減るもんやないし。」
「私は目に見えない色んな物がすり減っとる。」
そんな二人を三津がまぁまぁと宥めた。
「事情は分かりました。まぁ……旅の間お二人は禁欲生活するようなもんですし,私はいつもすぐ寝てまうんでその後はお二人にお任せ……。」
「任せるなっ!」
三津が言い終わる前に言葉を被せた。何故そんなに自分達の仲を容認したがるのかとぷんぷん怒った。
「そうやで。私らがこんなに松子を求めちょるのに松子からは求められんの寂しいわぁ……。」
入江は三津の頬に右手を伸ばして人差し指で頬をすっと下へ撫でた。
桂は瞬時にその手を力一杯叩き落とし真剣な顔を三津に向けた。
「私も求めるのは君一人だ。いつだって一つになりたいし……。」
「食事中に下品な事言わないで。さっさと食べて行きますよ。」
三津は半目で二人を睨んでご馳走様と手を合わせた。
「相変わらず下の話で赤くなるって可愛いなぁ。」
からかう入江の額をペちんと叩いて今日の旅は始まり,今に至る。
部屋に戻った三津は桂に高杉について気になった事を話そうかと思ったが,疲れの色を濃く見せて寝間着に袖を通す姿を目の当たりにしたら言うのを躊躇う。
『私の勘違いかもしれん話に付き合わすのも申し訳ない。』
「晋作はそんなに顔を出してないのかい?」
「あっ,はい!おうのさんには町で会ったんですけどね。高杉さんの姿はここ最近全く見てません。」
心を読まれたかのように桂の方から突然話しを振られて,三津は心臓をばくばくさせながら答えた。https://lefuz.pixnet.net/blog/post/149587879 https://wow.esdlife.com/cp.php?ac=blog&blogid=472503 https://debsy12.blogspot.com/2024/05/blog-post.html
「そうか。そんなにおうのさんの所は居心地良いのかね。まぁ分からんでもない,私も三津が居ればそこから離れ難い。」
「そう言うものですか?でも小五郎さんは私が出掛けると言うと一緒に来てくれますよね?」
「うん,君は歩く問題児だからね。」
からから笑われて三津はすぐに口をへの字に曲げた。
「冗談だよ。私は常に君の傍に居たいから何処へ行くにも一緒だよ。」
「気を遣わなくていいです。八割方本音ですよね。問題児なのは自覚してるので分かりますよ。」
三津がつんとそっぽを向いたがそんな反応も相変わらず可愛いよと目尻を下げて頭を撫でた。
「だっていつなん時君を口説く輩が現れるか分からない。油断ならない。だから傍に居ないと。」
「まぁたそんな……。」
恥ずかしくなるような口説き文句をすらすらと言うんだから。三津は照れ隠しに顔を逸らした。
『あの頃と同じ反応。』
桂は思わずにやけた。これは三津が自分を意識してると思っていいだろう。そう判断した。
「今日は同じ布団で寝てもいい?」
夜のお誘いを甘い声で耳元で囁やけば,三津の耳がどんどん赤くなっていく。
そして三津は決まってぼやく,
「どうせ拒否権ないんでしょ。」
次の朝,三津は欠伸を噛み殺しながら炊事に勤しんだ。
『結局あのまんま,高杉さんの話は中途半端に終わったな……。』
桂に流されてどうでもいい着地点で話は終了してしまった。
そこへ山縣がふらりとやって来た。
「嫁ちゃんすまん。昨日は手間掛けさせたな……。」
昨日の記憶が殆ど無い事をわざわざ寝起きで謝りにやって来た。
「いえいえ,私は布団を敷いただけで寝かせてくれたのは九一さんと小五郎さんなんで。」
「げっ……。木戸さんの手ぇ煩わせたんか……。後で何か言われるんやろな……。」
山縣は二日酔いと別で頭痛いわと,目を瞑ってこめかみを抑えた。
「大丈夫です,そこは私が間に入りますから。」
「何から何まですまねぇ天女……。」
「天女って何。」「ねぇねぇ天女ってどう言う事?」
「もう嫁ちゃんは神だ。人間をも超越した存在だ……。」
「えっ,やだっ!人間でいたい!変な事言うのやめて!?」
両手を合わせて拝みだす山縣の腕をバシバシ叩いてみたが,山縣はありがてぇありがてぇと呟きながら台所を後にした。
「えらい大きい存在になったねぇ。」
やり取りを見ていたセツが豪快に笑った。でも天女なんだからいいじゃないと,面倒臭そうな顔をした三津の肩を叩いて宥めた。
「普通に接してほしいです……。これ以上変な肩書きいらん……。」
三津は笑い事じゃないですよと溜息をついた。
「山縣さんに頼られちょるって思っとったらええんよ。それだけお三津ちゃんが大っきい存在になったんよ。」
「そうなんですかねぇ……。」
あんまり納得いかないと顔に出して炊事を続けた。その時,昨夜入江に“帰る場所”と言われたのを思い出した。
『帰る場所ってその人にとっての家やったり郷って意味やんなぁ。』
そう思えばかなり大きな存在には違いない。そんな大役担えるのか疑問に思う。
でも頼られるのは悪い気はしない。むしろ嬉しい。山縣からも信頼されてるんだと思える。
一人で考え込んで,表情で自問自答する三津をくすくす笑いながらセツが口を開いた。