[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「類殿もとても幸せそうなご様子で、窶れた面差しにも、以前のような華やかさが戻ったようにございます」
「ならば良かった。病は気からとも申す。奇妙との触れ合いが、生きる気力に繋がってくれれば良いがのう」
「御意にございますね」
濃姫が同調して頷くと、信長はくくっと小さく笑った。
「にしてもそなたは、次から次へと、人を驚かせるような真似ばかりをしおるな」
「え?」https://qr.ae/p2105G https://www.goodreads.com/story/show/1369892-zappos-had-calculated https://carinadarling1.wordpress.com/2024/07/30/%e3%80%8e-%e3%81%9d%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%ae%e5%b0%8a%e5%a4%a7%e9%9d%a2%e3%82%82%e6%98%8e%e6%97%a5%e3%81%be%e3%81%a7%e3%81%98%e3%82%83/
「奇妙の養母となることを承知したかと思えば、早々に母と子を引き合わせ、触れ合うきっかけを作ってやるとは…。
そちはよっぽど暇をもてあましているか、度が過ぎるほどの善人であるかの、どちらかであろうな」
「……そのいずれかが答えであるとしたら、きっと、暇をもてあましている方でしょうね」
浮かんでいた微笑を奥へと押し込め、濃姫はしんみりとして呟いた。
「少なくとも私は、善人とは申せませぬ。真の善人であれば、類殿と奇妙殿の姿を見て、これ程に胸の中がざわめき立つこともなかったでしょう」
姫はその細く白い手を、そっと自分の胸の上に置いた。
「世継ぎを産むことを諦め、奇妙殿の養母(はは)となることを決めたこと。そして類殿と奇妙殿を引き合わせたことは、全て私自身が決めたことです。
今さら後悔などはしておりませぬ。 ……なれど、どんなに気丈に振る舞い、これで良いのだと自分に言い聞かせても、やはりダメですね…。
不本意ながらも類殿に妬いてしまいました。殿や皆から愛され、御子を次々と成し、おなごがこの世で持てる全ての幸せを得ているあのお方を」
「……なれどな濃、類はもう」
「分かっておりまする。だからこそ、心の中がざわめいてならないのです」
風にそよぐ中庭の花々を、濃姫は静かな面持ちで眺めた。
「いっそ私と類殿が犬猿の仲であれば、ある意味、清々しかったことにございましょう。さすれば、
ただ相手を妬んでいれば良いだけで、あれこれと要らぬ心配や気遣いをせずに済んだのですから」
「──」
「なれど私は、類殿の人となりを知り、思いがけずも、友と思えるほどにあのお方と心を通わせてしまった…。
だから悔しいのです。どんなに悋気(りんき)の念を燃やしても、私はあのお方を、決して嫌いにはなれないのですから」
「…お濃」
「益荒男の殿には、かように繊細な女心は分かりますまいな」
濃姫は儚げに微笑いながら信長を見つめた。
信長は口を閉ざし、真摯な瞳で濃姫を見つめ返している。
そんな夫に対し、姫はふふっと華やかな笑い声を向けた。
「左様に真面目なお顔をなされまするな。馬鹿を申し上げているのですから」
「…なれど…」
「お気になされますな。少々 殿に、愚痴を聞いていただきたかっただけにございます。溜め込んでいては身体に毒でございますもの」
濃姫の端麗な面差しに、いつもの気丈な笑みが広がる。
「それに殿、お忘れかも知れませぬが、私は美濃の蝮と呼ばれし斎藤道三の娘にございます。これしきのことでへこたれる程、か弱きおなごではございませぬ」
「……そうか…。そうであったな」
快活に語る姫を見て、信長の顔にも自然と笑みが綻(ほころ)んだ。
「元より、私はかようなことぐらいで気落ちしている暇などないのです。 私は曲がりなりにも奇妙殿の母となったのですから」
「ああ、そうじゃな──。子の親であるという自覚を持ち、今にも増して強ようならねばな」
濃姫は笑んで頷いた。
「それに、殿の御子を成す為には、色々努力も必要でしょうし」
そう言って自身の腹部に手を当てる濃姫を見て、信長はふいに、悩ましげな表情を浮かべた。
「…本当に良いのか?」
「何がでございます?」
「そなたは奇妙と織田家の為に、世継ぎを産むことを諦めたと申しておったが、本音では……」
「殿っ」
濃姫は射抜くような眼差しで、夫の口から出ようとする不用意な発言を制すると
「良いのです。本当に」
濃姫はふいの夫の叫声に驚いたが、それと同時に、事が重大であるのだと察し
「…ご無礼つかまつりました」
と、その場は素直に頭を垂れた。
「して、私はどのような名目で末森の城へ参ればよろしいのでしょう?」
「適当で構わぬ。 とにかく、そなたは母上に。侍女たちはあちらの奥向きの女房たちと接触してくれれば、それで良いのじゃ」
「……私たちに、いったい何をせよと仰せなのですか?」
皆目検討がつかず、小首を傾げるばかりの濃姫に https://paul.anime-cosplay.com/Entry/7/ https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/21/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/09c6271bfc6d70babb98a387eaf3f824
「何、ちょっとした余興よ」
と、信長はその薄い唇の間から白い歯を覗かせた───。
そして翌朝。
早々に身支度と朝餉を済ませた濃姫は、信長から与えられた豪奢(ごうしゃ)な塗輿に乗り、末森城へと赴いた。
三保野、お菜津ら数名の侍女と、屈強な家臣たちに護られた姫の輿は、昼四つ(午前10時)には末森城へ安着し、
その四半刻にはもう、報春院の居室へと続く奥御殿の廊下を、お付きの侍女たちを背に従えてしずしずと歩いていた。
昨年の騒動から初となる末森城訪問であっただけに、もう少し周囲から警戒されるかと思っていたが、
主の謀反による後ろめたさ、或いは信長の恩恵に対する感謝の表れなのか、城の者たちの対応は思いの外(ほか)鄭重であった。
濃姫を報春院の居室へと導く案内(あない)役の老女も
「大方様は只今お仏間にて朝のご拝礼をなさっておられます故、少々お待ちいただくことになりまするが、よろしゅうございますか?」
「構いませぬ。こちらが急に押し掛けたのですから」
「では、お部屋に着きましたら、都から取り寄せた銘茶をお入れ致しましょう。お待ちの間、道中のお疲れを癒されませ」
と、終始態度が恭しかった。
「──こちらにございます。どうぞ、御前に控えてお待ち下さいませ」
やがて報春院の部屋へとやって来た濃姫は、老女に促されるまま、下座の中央にゆっくりと腰を下ろした。
三保野らお付きの侍女たちは室内には入らず、部屋の前の入側に整然と居並んでゆく。
「ま…、これは失礼を致しました。只今お敷き物を持って参ります故」
濃姫を剥き出しの畳の上に座らせていることに気付いた老女は、部屋の隅に下ろしかけていた腰を素早く浮かせた。
「いえ、どうぞお気遣いなきように」
と姫は告げたが、聞こえていないのか
「誰ぞ、誰ぞおらぬか! お濃の方様にお敷物をお持ち致せ」
老女は打掛の裾を翻して、スタスタと隣室の方へ歩んで行った。
老女の姿が見えなくなると、遠慮がちな表情を浮かべていた姫の面差しが、
急に生真面目なものに切り替わり、入側に控えている三保野とお菜津に素早く目を向けた。
濃姫は無言のまま、二人に向かって意味有りげに頷くと、二人もコックリと頷き返して
「申し訳ないが、暫しお方様を頼みまする」
「私と三保野様は、女房衆への挨拶がてら、持参した手土産などを詰所まで届けて参ります故」
他の侍女たちにそう述べて、三保野とお菜津は足早にその場から去って行った。
それと同時に、金襴縁取りの茵を手にした老女が戻って来て
「──ほんにご無礼を致しました。さ、こちらをお敷き下さいませ」
「有り難う。わざわざすまぬのう」
濃姫は前に向き直り、何事もなかったかのような、穏やかな微笑を浮かべるのだった。
「しかしながら、“そのような有り様ではならぬ” “ご分別あそばせ”と申し上げた言葉の数々は、全て本心にございます」
「──」
「殿方というものは、一度他のおなごの蜜の味を知ると、それこそ蝶の如く、次から次へと他の花の蜜を求めて飛び回るもの。
殿が二人、三人とお側女を抱えられる日とて、そう遠からぬ未来やも知れませぬ。
にも関わらずお方様は、このような事が起こる度に、左様に引き籠られ、日々悩んで過ごされるおつもりにございますか?」
「……それは…」http://mathewanderson.futbolowo.pl/news/article/news-5 https://www.beclass.com/rid=294d9a166ab48424352d https://johnsmith123.pixnet.net/blog/post/158552158
答えあぐねる姫を見据えたまま、千代山は再び畳の上に両の手をつかえると
「どうかお方様、この奥御殿の安寧の為、そして弾正忠家の更なる繁栄の為に、一日も早よう方をお付けになられ、
そのお心と、殿との間にある深き憂いを早急にお取り払い下さいませ。それが我々、下に控える者たちの総意にございまする」
そう述べてから、慇懃に低頭すると
「色々と出過ぎた事を申し上げましたが、これも織田家の行く末を思えばこその事。どうぞお許しあれ」
「……」
「長居を致しました。私はこれにて」
高い鼻筋をスッと横に向け、千代山は昂然と胸を張りながら部屋を退出した。
千代山が出ていった後の室内には、寒々しい程の静寂と、緊迫感を含んだ妙な余韻が、線香の煙りのように薄く立ち込めていた。
濃姫は、そんな室内の重苦しい空気に耐えながらも、心の中で油然と湧き続けていた膿みの一部が、
急に大きな匙でひと掬(すく)いされたような、先程までとは違う“何か”を感じ取っていた。
一方 問題の種となっている類は、苦悩の表情の濃姫とは対照的に、生駒邸の自室にて朗らかな微笑を浮かべていた。
目の前にある父と子の光景が何とも幸福に満ち溢れていて、見ているだけで自然と笑みが綻ぶのである。
「良い子じゃ、ほんに良い子じゃのう奇妙は──。この父の前では泣きもぐずりもせぬ。儂に似て利口者じゃな」
信長は奇妙を腕に抱きながら、にっと白い歯を覗かせた。
「きっと殿のことがお好きなのです。私や兄上が相手を致しますと、よくお泣きになるのですよ奇妙様は」
「吉乃、奇妙に様付けはやめよ。そなたの実の子ではないか」
「私の御子である前に、殿の御子にございます。私ごとき者が奇妙様を呼び捨てにするなど、恐れ多いことにございまする」
「ほんに、そなたはどこまでも謙虚なおなごよ。……のう奇妙?そなたもそう思うであろう?」
父の問いかけに、奇妙はその好奇心に満ちた瞳をきょろきょろと動かしながら応えた。
その愛らしさに、信長もらしくなく頬擦りしてしまう。
「──それよりも、殿。此度の過分のご配慮、まことに有り難う存じまする」
「ん、何のことじゃ?」
「邸の普請の件にございます。昨年身罷(みまか)りました父も、生きておりましたらさぞや喜んだ事であろうと、兄上と話していたのですよ」
「何、礼を言われる程のことではない。そなたは我が嫡男である奇妙の母であり、新たに生駒家当主となったそなたの兄・家長は、
奇妙の伯父にして、立場上、儂の義理の兄となったのだ。そなたらがおわすに相応しい邸に建て直すのは当然のこと。
またここは人の出入りが多い故か、床や柱が所々傷んでおった。普請致すには良い機会じゃと、そう思うたまでよ」
「そこまでお考え下さっていたとは───まことに忝(かたじけ)ない限りにございます」
類は頷くように頭を下げたが
「……しかしながら、私を正室にという、殿のお申し出だけは、お受けする訳には参りませぬ」
「いちいち深く考え過ぎなのじゃ! 類を正室の立場に置くのは、若を嫡男にする為の名目上だけの処置じゃ。
元より類の存在は公にはせぬのだ。あくまでも織田家の中だけの事ならば、離縁じゃ何だと騒ぎ立てる必要もあるい」
「そのように悠長な…。いくら名目上の事とは申せ、一城主が正室を二人抱えるなど前例のなき事。左様な真似をすれば織田家中は間違いなく乱れまする!」
「この儂が乱れさせたりはせぬ! それにお濃、正室を二人抱える事は、決して前例のなき事ではないぞ」
「 ? 」
「例えば、そうじゃな…先の六代将軍・足利義教(あしかがよしのり)公などがその例じゃ」
室町幕府六代将軍・義教は初め、足利将軍家と姻戚関係が深かった公家の日野家より『宗子(むねこ)』を正室(御台所)として迎えていた。
しかし政略結婚であった上、日野家の人間が義教に対して無礼を働いたことから、義教は宗子のみならず、
日野家そのものを冷遇するようになり、代わって日野家と対立関係にあった正親町(おおぎまち)三条家を優遇するようになった。https://john.anime-movie.net/Entry/7/ https://andrea.99ing.net/Entry/7/ http://carinacyril786.futbolowo.pl/news/article/news-6
特に同家から迎えた側室の『尹子(ただこ)』を寵愛し、やがて彼女を正室としたのである。
これにより、宗子は「本御台」、尹子は「新御台」と呼ばれ、義教の奥には正室が二人いる状態となった。
後に宗子とは離縁した為、正室は尹子のみとなったが、このような処置は将軍家においても異例のことであった。
が、無論そのような話を聞かされても納得出来るはずもなく
「ここは将軍家ではございませぬ!」
濃姫は一声を張りつつ、信長をキッと睨(ね)め付けた。
「義教公の御代(みよ)の話ということは、応仁の乱が起こるよりもずっと前の話ではございませぬか!?
それに、最初のご正室であられた宗子殿は離縁させられたのでございましょう? 結局は……そういう話ではございませぬか」
「何も、儂はそういう意味で言うた訳では──」
「もう結構にございます」
濃姫は素早く立ち上がると
「…今一度申し上げます。類殿を正室の座に就ける事はおやめ下さいませ。
どうしてもと言うのであれば、この濃を離縁してからにして下さいませ」
真摯な態度で告げてから、姫は足早に室内を後にした。
独り残された信長の口から、重々しい溜め息が漏れる。
夫である自分が言い聞かせれば、濃姫も黙って受け入れるだろうと思っていたのに、
まさか女人というものが、こうも扱いづらい生き物だとは思っていなかった。
いや、濃姫だからそこ扱いづらいのか…。
信長はがしがしと後ろ頭を掻きながら
『 ──女人の世界は、我々男の世界に比べ、随分と根深きものと聞き及びます。とかく男女の関係、おなご同士の揉め事においては 』
かつて恒興に言われた言葉を沁々と思い返していた。
その時である。
「…お濃!?」
先程出ていったはずの濃姫が、再び部屋に戻って来た。
少しは理解を示してくれたのかと思い、信長は緩やかに口角を上げる。
「…殿」
「な、何じゃ?」
「ここは私の御座所にございます。殿がおさがり下さいませ」
信長の口から再び溜息が漏れた。
それからというもの、濃姫は以前までの活発さを忘れたように、自室に引きこもり、日々考え事をするようになった。
「おお、あの笠松殿か」
確かに美濃の知り合いで笠松といえば、母付きの侍女頭くらいしか思い当たる節がない。
濃姫はうむと首肯すると
「我が母に仕えておる者やも知れぬ」
お菜津の手から文を受け取るなり、そのままスクと立ち上がり、室内へと入って行った。
濃姫は居間の上座の腰を下ろすと、さっそく表に“帰蝶様へ”と書かれた上包みを外し、中から丁寧に折り畳まれた文を取り出した。
三保野とお菜津も入室し、着物の裾を整えながら姫の傍らに端座してゆく。
《 帰蝶様におかれましては、まことにお久しゅう、お懐かしゅう存じます。お方様にお仕えする私が、身の程も弁えず、帰蝶様にこのような文をお送り申すこと憚りながらも… 》
初めの文章に目を通した濃姫は https://www.beclass.com/rid=284d9416687c374c02b3 https://carinadarling.pixnet.net/blog/post/155561110 https://healthyhkk.wordpress.com/2024/07/05/%e3%81%97%e3%81%8b%e3%81%97%e3%81%9d%e3%82%8c%e3%82%82%e4%b8%80%e7%90%86%e3%81%82%e3%82%8b%e3%81%a8%e6%80%9d%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%81%ae%e3%81%8b/
「どうやら三保野の言うた通りのようじゃ」
「では、やはり笠松様から?」
「ええ。…“内々に帰蝶様へお伝え致したき儀があり筆を取った次第”、そう書かれておる」
「内々にとは、どのようなお話にございますか?」
「暫し待て、今読んでおる」
三保野の急かすような視線を浴びながら、濃姫は再び文面に目を泳がせた。
三保野やお菜津は、姫が文を読み終わるまで彼女の細面を眺め続けるしかなかったのだが、二人は一向に退屈しなかった。
文面に視線を落とす濃姫の表情が、喜びから怒りへ、哀しみから楽しさへと、
喜怒哀楽を数秒の内に何度も顔一つで表現するものだから、見ているだけで愉快な気持ちになれた。
ただ、文の内容が良き話なのか悪い話なのかは、姫の表情からはまるで読み取れなかったが…。
濃姫の双眼がようやく文の末尾にまでたどり着くと、彼女は一仕事終えたようにふーっと長い嘆息を吐き、
胸の位置で広げ持っていた文を、ゆっくりと膝の上へ下ろした。
「姫様、笠松様は何と?」
三保野が再び伺いを立てると、濃姫は一瞬言いしぶるような様子を見せたが
「……父上と義龍の兄上とのご不和に拍車がかかったようじゃ」
ややあってから思い詰めたように言った。
文の内容を有り体に説明すれば、信長を討つ討たないの道三と義龍の親子喧嘩から、喜平次が一色の姓を与えられた事、
また、孫四郎が次なる斎藤家当主となるのではないかという、概(おおむ)ねが先達て稲葉山城で起こった事態や、今美濃で広がっている噂ばかりであった。
三保野はそれらの話を聞くなり
「ま!何という…!」
「お可哀想な義龍様…」
「斎藤家はこれからどうなるのやら」
と、先程の濃姫と同じようにころころと顔色を変えた。
が、三保野の顔には“怒”と“哀”、それに加えて“驚”が浮かんでも、姫のように“喜”“楽”は浮かばなかった。
どうやら話にはまだ続きがあるらしく、濃姫は艶紅の引かれた玉虫色に光る唇を、またうっすらと開いた。
「そのような事態になっている故、孫四郎や喜平次までもが兄上を軽んじ、横柄な振る舞いを致しておるそうな」
「そんな…、あのお可愛いらしかった弟君様方が」
尾張へ来る前の、幼さの残るあどけない孫四郎や喜平次しか知らぬ三保野は、
自分の記憶の中の二人との隔たりを感じ、思わず憮然となって肩を落とした。