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「いちいち深く考え過ぎなのじゃ! 類を正室の立場に置くのは、若を嫡男にする為の名目上だけの処置じゃ。
元より類の存在は公にはせぬのだ。あくまでも織田家の中だけの事ならば、離縁じゃ何だと騒ぎ立てる必要もあるい」
「そのように悠長な…。いくら名目上の事とは申せ、一城主が正室を二人抱えるなど前例のなき事。左様な真似をすれば織田家中は間違いなく乱れまする!」
「この儂が乱れさせたりはせぬ! それにお濃、正室を二人抱える事は、決して前例のなき事ではないぞ」
「 ? 」
「例えば、そうじゃな…先の六代将軍・足利義教(あしかがよしのり)公などがその例じゃ」
室町幕府六代将軍・義教は初め、足利将軍家と姻戚関係が深かった公家の日野家より『宗子(むねこ)』を正室(御台所)として迎えていた。
しかし政略結婚であった上、日野家の人間が義教に対して無礼を働いたことから、義教は宗子のみならず、
日野家そのものを冷遇するようになり、代わって日野家と対立関係にあった正親町(おおぎまち)三条家を優遇するようになった。https://john.anime-movie.net/Entry/7/ https://andrea.99ing.net/Entry/7/ http://carinacyril786.futbolowo.pl/news/article/news-6
特に同家から迎えた側室の『尹子(ただこ)』を寵愛し、やがて彼女を正室としたのである。
これにより、宗子は「本御台」、尹子は「新御台」と呼ばれ、義教の奥には正室が二人いる状態となった。
後に宗子とは離縁した為、正室は尹子のみとなったが、このような処置は将軍家においても異例のことであった。
が、無論そのような話を聞かされても納得出来るはずもなく
「ここは将軍家ではございませぬ!」
濃姫は一声を張りつつ、信長をキッと睨(ね)め付けた。
「義教公の御代(みよ)の話ということは、応仁の乱が起こるよりもずっと前の話ではございませぬか!?
それに、最初のご正室であられた宗子殿は離縁させられたのでございましょう? 結局は……そういう話ではございませぬか」
「何も、儂はそういう意味で言うた訳では──」
「もう結構にございます」
濃姫は素早く立ち上がると
「…今一度申し上げます。類殿を正室の座に就ける事はおやめ下さいませ。
どうしてもと言うのであれば、この濃を離縁してからにして下さいませ」
真摯な態度で告げてから、姫は足早に室内を後にした。
独り残された信長の口から、重々しい溜め息が漏れる。
夫である自分が言い聞かせれば、濃姫も黙って受け入れるだろうと思っていたのに、
まさか女人というものが、こうも扱いづらい生き物だとは思っていなかった。
いや、濃姫だからそこ扱いづらいのか…。
信長はがしがしと後ろ頭を掻きながら
『 ──女人の世界は、我々男の世界に比べ、随分と根深きものと聞き及びます。とかく男女の関係、おなご同士の揉め事においては 』
かつて恒興に言われた言葉を沁々と思い返していた。
その時である。
「…お濃!?」
先程出ていったはずの濃姫が、再び部屋に戻って来た。
少しは理解を示してくれたのかと思い、信長は緩やかに口角を上げる。
「…殿」
「な、何じゃ?」
「ここは私の御座所にございます。殿がおさがり下さいませ」
信長の口から再び溜息が漏れた。
それからというもの、濃姫は以前までの活発さを忘れたように、自室に引きこもり、日々考え事をするようになった。