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「しかしながら、“そのような有り様ではならぬ” “ご分別あそばせ”と申し上げた言葉の数々は、全て本心にございます」
「──」
「殿方というものは、一度他のおなごの蜜の味を知ると、それこそ蝶の如く、次から次へと他の花の蜜を求めて飛び回るもの。
殿が二人、三人とお側女を抱えられる日とて、そう遠からぬ未来やも知れませぬ。
にも関わらずお方様は、このような事が起こる度に、左様に引き籠られ、日々悩んで過ごされるおつもりにございますか?」
「……それは…」http://mathewanderson.futbolowo.pl/news/article/news-5 https://www.beclass.com/rid=294d9a166ab48424352d https://johnsmith123.pixnet.net/blog/post/158552158
答えあぐねる姫を見据えたまま、千代山は再び畳の上に両の手をつかえると
「どうかお方様、この奥御殿の安寧の為、そして弾正忠家の更なる繁栄の為に、一日も早よう方をお付けになられ、
そのお心と、殿との間にある深き憂いを早急にお取り払い下さいませ。それが我々、下に控える者たちの総意にございまする」
そう述べてから、慇懃に低頭すると
「色々と出過ぎた事を申し上げましたが、これも織田家の行く末を思えばこその事。どうぞお許しあれ」
「……」
「長居を致しました。私はこれにて」
高い鼻筋をスッと横に向け、千代山は昂然と胸を張りながら部屋を退出した。
千代山が出ていった後の室内には、寒々しい程の静寂と、緊迫感を含んだ妙な余韻が、線香の煙りのように薄く立ち込めていた。
濃姫は、そんな室内の重苦しい空気に耐えながらも、心の中で油然と湧き続けていた膿みの一部が、
急に大きな匙でひと掬(すく)いされたような、先程までとは違う“何か”を感じ取っていた。
一方 問題の種となっている類は、苦悩の表情の濃姫とは対照的に、生駒邸の自室にて朗らかな微笑を浮かべていた。
目の前にある父と子の光景が何とも幸福に満ち溢れていて、見ているだけで自然と笑みが綻ぶのである。
「良い子じゃ、ほんに良い子じゃのう奇妙は──。この父の前では泣きもぐずりもせぬ。儂に似て利口者じゃな」
信長は奇妙を腕に抱きながら、にっと白い歯を覗かせた。
「きっと殿のことがお好きなのです。私や兄上が相手を致しますと、よくお泣きになるのですよ奇妙様は」
「吉乃、奇妙に様付けはやめよ。そなたの実の子ではないか」
「私の御子である前に、殿の御子にございます。私ごとき者が奇妙様を呼び捨てにするなど、恐れ多いことにございまする」
「ほんに、そなたはどこまでも謙虚なおなごよ。……のう奇妙?そなたもそう思うであろう?」
父の問いかけに、奇妙はその好奇心に満ちた瞳をきょろきょろと動かしながら応えた。
その愛らしさに、信長もらしくなく頬擦りしてしまう。
「──それよりも、殿。此度の過分のご配慮、まことに有り難う存じまする」
「ん、何のことじゃ?」
「邸の普請の件にございます。昨年身罷(みまか)りました父も、生きておりましたらさぞや喜んだ事であろうと、兄上と話していたのですよ」
「何、礼を言われる程のことではない。そなたは我が嫡男である奇妙の母であり、新たに生駒家当主となったそなたの兄・家長は、
奇妙の伯父にして、立場上、儂の義理の兄となったのだ。そなたらがおわすに相応しい邸に建て直すのは当然のこと。
またここは人の出入りが多い故か、床や柱が所々傷んでおった。普請致すには良い機会じゃと、そう思うたまでよ」
「そこまでお考え下さっていたとは───まことに忝(かたじけ)ない限りにございます」
類は頷くように頭を下げたが
「……しかしながら、私を正室にという、殿のお申し出だけは、お受けする訳には参りませぬ」