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濃姫はふいの夫の叫声に驚いたが、それと同時に、事が重大であるのだと察し
「…ご無礼つかまつりました」
と、その場は素直に頭を垂れた。
「して、私はどのような名目で末森の城へ参ればよろしいのでしょう?」
「適当で構わぬ。 とにかく、そなたは母上に。侍女たちはあちらの奥向きの女房たちと接触してくれれば、それで良いのじゃ」
「……私たちに、いったい何をせよと仰せなのですか?」
皆目検討がつかず、小首を傾げるばかりの濃姫に https://paul.anime-cosplay.com/Entry/7/ https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/21/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/09c6271bfc6d70babb98a387eaf3f824
「何、ちょっとした余興よ」
と、信長はその薄い唇の間から白い歯を覗かせた───。
そして翌朝。
早々に身支度と朝餉を済ませた濃姫は、信長から与えられた豪奢(ごうしゃ)な塗輿に乗り、末森城へと赴いた。
三保野、お菜津ら数名の侍女と、屈強な家臣たちに護られた姫の輿は、昼四つ(午前10時)には末森城へ安着し、
その四半刻にはもう、報春院の居室へと続く奥御殿の廊下を、お付きの侍女たちを背に従えてしずしずと歩いていた。
昨年の騒動から初となる末森城訪問であっただけに、もう少し周囲から警戒されるかと思っていたが、
主の謀反による後ろめたさ、或いは信長の恩恵に対する感謝の表れなのか、城の者たちの対応は思いの外(ほか)鄭重であった。
濃姫を報春院の居室へと導く案内(あない)役の老女も
「大方様は只今お仏間にて朝のご拝礼をなさっておられます故、少々お待ちいただくことになりまするが、よろしゅうございますか?」
「構いませぬ。こちらが急に押し掛けたのですから」
「では、お部屋に着きましたら、都から取り寄せた銘茶をお入れ致しましょう。お待ちの間、道中のお疲れを癒されませ」
と、終始態度が恭しかった。
「──こちらにございます。どうぞ、御前に控えてお待ち下さいませ」
やがて報春院の部屋へとやって来た濃姫は、老女に促されるまま、下座の中央にゆっくりと腰を下ろした。
三保野らお付きの侍女たちは室内には入らず、部屋の前の入側に整然と居並んでゆく。
「ま…、これは失礼を致しました。只今お敷き物を持って参ります故」
濃姫を剥き出しの畳の上に座らせていることに気付いた老女は、部屋の隅に下ろしかけていた腰を素早く浮かせた。
「いえ、どうぞお気遣いなきように」
と姫は告げたが、聞こえていないのか
「誰ぞ、誰ぞおらぬか! お濃の方様にお敷物をお持ち致せ」
老女は打掛の裾を翻して、スタスタと隣室の方へ歩んで行った。
老女の姿が見えなくなると、遠慮がちな表情を浮かべていた姫の面差しが、
急に生真面目なものに切り替わり、入側に控えている三保野とお菜津に素早く目を向けた。
濃姫は無言のまま、二人に向かって意味有りげに頷くと、二人もコックリと頷き返して
「申し訳ないが、暫しお方様を頼みまする」
「私と三保野様は、女房衆への挨拶がてら、持参した手土産などを詰所まで届けて参ります故」
他の侍女たちにそう述べて、三保野とお菜津は足早にその場から去って行った。
それと同時に、金襴縁取りの茵を手にした老女が戻って来て
「──ほんにご無礼を致しました。さ、こちらをお敷き下さいませ」
「有り難う。わざわざすまぬのう」
濃姫は前に向き直り、何事もなかったかのような、穏やかな微笑を浮かべるのだった。