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Alicia McKenzie's Blog

「ほら、立てェ。

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「ほら、立てェ。

「ほら、立てェ。退却すんぞ。直に此処にも火が回ってきちまう」

 

「は、はい……。あッ、さっきそこに宮川さんが……!」

 

──宮川は死んだ。……残念だがよ、仏さんを引き上げる余力は無ェ。行こう」

 

 

 彼は井上の六番組に属していた比較的若い隊士だった。故郷へ送る形見すら回収出来なかったことを悔やみつつ、http://janessa.e-monsite.com/blog/--82.html https://www.evernote.com/shard/s330/sh/e38c2d18-73b8-ec11-fdd5-2592f46a55ff/BJYbdjjkRp8adcJREFUe4-FyMUX1c2giGsqdWDKaLH7qyddBwF7efK86qQ https://blog.udn.com/79ce0388/180109162 桜司郎は井上と共に背を向ける。

 

 

 

 

 

 やがて奉行所へ駆け込んだは良いものの、既に炎上している。最前線の伏見からは撤退し、淀へと下がる決断がなされていた。

 

 そこから鳥羽への出陣を試みるとのことである。

 

 

 

 賄い方により握り飯が配られた。それを口へ運んでいると、隣へ井上が立つ。

 

 

……さっきは済まねえなァ……。オラの組の奴ン為に」

 

「いえ…………。でも、何も出来ませんでしたから」

 

…………なあ、榊君。どうして手前が生き残っているのか、考えたことはあるかい?」

 

 

 その問い掛けに桜司郎は瞬きをした。それの意図が分からず、横目で井上を見遣る。

 

 

……オラはな。近藤先生の門弟として、生涯を天然理心流へ捧げるつもりだった。平凡な百姓として死ぬモンだと思っていたよォ。……けれど、近藤先生と歳のお陰で幕臣にまでならせて貰った。大それた夢を見ているんじゃねえか……って今でも思っている」

 

「井上先生……?」

 

 

 感慨深そうで、けれども何処か覚悟を宿した瞳をしていた。

 

 

「二人に与えてもらった、武士の名を汚さねェように散りてえ」

 

「ちょっと、止めてくださいよ……。縁起でもない。局長が居ない今、井上先生じゃないと副長を支えられないんですから」

 

 

 軽口ながらも遺言のようなそれに、桜司郎は眉を寄せる。そうすれば、井上はカラカラと笑った。

 

 

「ンなことはねえべよ。今残ってくれとる組長格のことを、歳は心から信頼している。……ほら、いつ何があるか分からねえだろう。オラに何かあった時は、歳と甥の泰助のことを頼んだぞォ…………

 

 

 手のひらにあった残りの飯を口の中に詰め込むと、ひらひらと片手を振って陣中へと消えていく。 御香宮へと決死の切り込みへ向かった永倉とその隊も命からがら戻ってくる。大砲へ近付こうとしたが、銃弾の雨にやられて撤退したのだという。

 

 

 新選組は鳥羽街道を南へ、淀まで退却せざるを得なくなった。夜だというのに、漆黒の空は赤く燃えて見えた。

 

 

 それを時々振り返りながら、桜司郎はポツリと独りごちる。

 

 

──まるで、業火だ…………

 

 

 一体誰が罪人なのだろう。二百六十年ものの天下と鎖国を敷いておきながら、異国からの圧力に押されて攘夷をもマトモに行えなかった幕府か。それとも、平穏を破ってでも倒幕を成し遂げようとする薩長か。

 

 

「桜司郎……

 

 

 そこへ隣にいる山野が口を開いた。

 

 

「ん」

 

……この戦、何かが違うぜ。ちょっとやそっとじゃ終わらねえ気がする」

 

 

 そう思っているのは山野だけではない。この場にいる誰もが"この戦はおかしい"と思い始めていた。薩長の軍勢が僅か五千の見立てに対して、旧幕府軍はその三倍の一万五千もいる。数の利では圧倒できる筈なのに、その実は圧されていた。

 

 

 薩長の保有する火器の性能が、遥かに旧幕府軍のそれを上回るのだ。一度火を吹けば、こちらは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うしか方法がない。

 

 今すぐ大雨でも降らない限り、どうしようも無かった。

 

 口には出せないが、絶望の文字が薄らと見え隠れする。

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