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「なら、それを極めれば良いさ。何処の誰よりも努力をして、うんと力を付ければ、もう君を蔑ろにする者は居ない」
妙に吉田の言葉はスッと胸に染み入った。それが可能だと思わせてくれる力があるのだろうか。
「学問は?」
「……その、字が読めなくて」
「文字は良いよ。https://andrea.anime-voice.com/Entry/1/ https://carina.anime-movie.net/Entry/1/ https://lilly.99ing.net/Entry/1/ いつでもその人に会えるから」
吉田は淡い笑みを浮かべると、再度手元の書物へ視線を移した。桜花もそれに倣う。
「文字や言の葉は人間の魂なんだ。例えその者の身が朽ちたとしても、永劫に聞いたものの胸に残る。そのようにして、人の歴史は紡がれていく……。分かるかい?」
「な、んと……なく。その本、大切な人の物……なんですか?」
「……うん。お師さんの最期の言葉が詰まっているものだからね」
度々会話に出てくる"お師さん"がどういった人物なのか、少し興味が沸いた。これほど大切な思い出として語られるとは、一体どのような人格者なのかと。
「吉田さんのお師さんって一体どのような──」
その時、夕七つの鐘が鳴った。それを聞いた吉田は書物を懐へ仕舞い、膝を立てる。
「……すまない、この後約束があるんだ。そうだね……次会った時に、話しの続きをしよう」
「は、はい」
桜花は去っていく吉田の背を見詰めた。ここに辿り着いた時に抱えていた、胸のつかえや嫌な感情がさっぱりと消えていることに気付く。
大きく背伸びをひとつしてから、もう少し頑張ろうと小さく微笑んだ。 日が暮れかかった頃に、桜花は壬生村へ戻った。その手にはいのり屋の団子がある。
前川邸の塀沿いをそっと歩き、土方に見付からないようにと足を忍ばせた。勤務交代の時間なのだろうか、門前に警護番の隊士すら居ない。
それにホッと胸を撫で下ろした時である。
前川邸の門を足早に潜ってきた男とぶつかった。その拍子に団子の包みを手から離してしまい、ひやりとする。
だが、その男が目に見えぬ速さで受け止めた。
「……危ないやっちゃな。ほら」
「あ……、有難うございます…………」
差し出された包みを両手で受け取り、男を見る。背丈と年齢は同じくらい、切れ長の三白眼に通った鼻筋、小麦色の肌に頬には傷。一匹狼を彷彿とさせる雰囲気だった。上方の話し言葉をしているが、何処か違和感がある。
「ああ、切腹を見て顔を真っ青にしていたやな……」
「……そうです」
そのように返せば、男は興味無さそうに目を細めた。しかし、何かに気付いたのか突然桜花の肩口に顔を近付ける。
妙な行動に桜花は目を丸くした。
「………………先生の匂いじゃ」
男は桜花に聞こえない声量で独りごちる。顔を上げると、今度は凝視し始めた。
「な、なんですか」
「何でもあらへん……けれど、ひとつ助言をしたる。此処で生きたければ、絶対に「……ご、御免なさい。あまりにも太刀筋が綺麗だったから、近くで見てみたくて……」
そのように言えば、近藤はきょとんとする。そして大きな口をニッと三日月のように上げた。
「何だ、君か。そういう理由ならもっと近くへ来なさい」
「……良いんですか?」
「駄目な理由が無いだろう。俺を暗殺する訳じゃあるまいに」
冗談めかしたように言われ、桜花は慌てて首を横に振る。
「そんな事しません!」
「はは、分かっているさ。まず君には殺気が無い。どのような達人であっても、敵を前にすれば殺気は消せねェってモンだ」
大らかな笑みを浮かべると、近藤は何かを思い立ったと言わんばかりに手を打った。そして桜花へここで待っているように言うと、駆け足で去って行く。
やがて戻ってくると、その手にはもう一本の木刀があった。