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玄関の中からそう言われ一気に寂しくなってきた。
近藤、土方、市村があっちで待っている。
「また、会えますよね?」
「あぁ。会えるさ。生きているかぎりな」
永倉が笑った。
北風が強い。
バサリと羽織が浮いた。
深く頭を下げた。
今までの感謝の気持ち──。
そして、前へ歩き出した。
近藤達と合流して進む。
「じゃあな!」
振り返ると永倉、原田が後ろから手を振っていた。
寂しいが、もう戻れない。
ここからはそれぞれの道を行く。
美海は大きく手を振り返すと再び前を向いた。
“たった一回負けたからなんだ。次勝てばいい話だろ”
強く、生きなきゃ。
私達は、強く生きなきゃいけない。
辛くても、前に進まなくちゃいけないんだ。
こうして私達は別れ、流山へ向かって歩き出した。
永倉、原田と別れてから美海達は夜道を歩いていた。
土方は前で石を蹴りながら近藤と並んで歩いている。
「なんだか昔を思い出すなぁ」
ふと近藤が言った。
「あぁ」
「まだしんぱっつぁんも左ノも、平助も、斉藤くんも、総司もいなかったころ」
「そうだな」
コツンと道の凸面に当たり、石が跳ねた。
「歳が喧嘩をする度に二人でボロボロになりながらこの道を歩いた」
「それじゃあ俺だけみたいじゃねぇか。近藤さんも暴れまわってたくせに」
「喧嘩師に影響されたんだ」
美海は月を見上げて笑いながら歩く幼い二人を想像した。
もしかしたらこの二人はここに生まれるずっとずっと前から何か強い絆で結ばれていたのかもしれない。
前を行く二人に幼い頃の二人が映った。
「また、始めからか」
土方が呟いた。
「始めからだ」
近藤も笑って答えた。
「だがなんでだろうな。近藤さんに総司に美海に市村に俺。こんな夜でも存外寂しくねぇや」
小さく土方が笑った。
なんだか隊士がいなくなって、新撰組もなくなったのだが、土方は穏やかになった気がする。
「お前ら、本当についてきてくれるのか?帰ってもいいんだぜ?今なら切腹は見逃してやろう」
土方は振り返ると笑った。
帰ってもいい。とは言ったが、帰れとは言わなかった。
美海は帰れと言われることを想定していたため驚いた。
「正直」
沖田が口を開いた。
「正直、自分は戦場に置いて最強だと思っていました」
だろうな。
今までの行動を思い返して美海は頷いた。
「だから、新しい戦にちょっと驚いただけです」
そう言って沖田は笑った。
「そうか」
土方も穏やかに笑った。
「ただ…」
「ただ?」
「伏見の後に鉄くんが言ってたこと、なんとなく分かった気がします」
市村はチラリと沖田の顔を見た。
そして、美海の羽織の裾を握りしめた。
「仕方あるめぇよ。俺らはあれが初めてだったんだから。今回分かったなら、次は大丈夫だ」
相変わらず屈託のない笑顔で近藤は笑う。
もうここまできたらやるしかない。
一度は揺らぎかけていた心だが、土方といることで再び決心がついたようだ。
沖田は小さく頷いた。
「もう大丈夫です。私は、あなた方が進む道をずっと、ひたすら着いていくと当の昔から決めていますから」
「自分も副長が行くならば例え火の中水の中!どこまでもついていきますよ!」
市村は握りしめていた美海の裾を離して大きくガッツポーズを作った。
「頼もしい小姓をもったな。歳」
近藤が楽しそうに笑う。
「まぁな。俺の小姓だぜ?このぐらいでないとな」
「鬼の小姓ですからね」
沖田も愉快そうに笑う。
「てめ!総司!」
土方が青筋を浮かべながら関節を鳴らした。
「嫌だなぁ。病人には暴力反対ー」
沖田はどこ吹く風。
こんな状況でもケラケラと笑っている。
これは沖田の性分なのか、それとも場の雰囲気を気づかってなのか。