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既に酔っているのだろう、顔を赤らめながらも浮かない表情をしていた。酒を呑んでもこの表情をしている時は、何か良くないことを考えているのだと知っている。
「寂しいよ。それはそうなんだけど…………」
「なんだなんだ?言ってみろって。俺たちは大事な友だろう」
そう問い掛ける声は、https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12243156 https://lefuz.pixnet.net/blog/post/120792757 http://janessa.e-monsite.com/blog/--81.html いつも以上に優しい。だからだろうか、酒の力も相俟って心を縛っていた糸がふわりと解けた。
「───実は。昨日、母上が亡くなったんだ」
「母上……?──って、桜司郎、お前……記憶が戻ったのか?」
その問い掛けに対して少し考えた後に桜司郎は頷く。
「……黙っててごめん。それも最近なんだ……。前に全員へ一日休暇が与えられたことがあったでしょう?その時に、命の恩人の女性の元へ行ったんだけどね。実はその人が母上だと思い出したんだよ……」「まさか、そんな摩訶不思議なことが……」
「そう思うよね。私も未だに信じられない節もあるもの。でも…………あの人の声を聞くだけで、涙が出そうになるんだ。これは間違いなく母上だって心が叫ぶの」
ぽたり、と盃の水面に波紋が広がる。
その様子を見ていた山野は、その震える肩に手を置いた。
「信じるぜ。俺はお前のことなら何でも信じると言ったろ……」
それを聞いた桜司郎は、自分の生い立ちについてこの友に聞いてもらいたいという気持ちになる。
──きっと八十八君なら、世迷言だと笑わずに聞いてくれるかもしれない。
だが、ふとある疑問が沸いた。
「……八十八君」
「ん?どうした」
「今更なんだけど……どうして私と仲良くしてくれようと思ったの?」
それはずっと思っていたが、勇気が出ずに聞けなかったことだった。思えば入隊して直ぐに山野から話し掛けてきて、今まで仲を深めてきた。
「何だよ、照れ臭いこと聞くなって。……けれど、そうだな。戦でどちらかが死んでもおかしくないからな、特別話してやるか。……最初は俺、桜司郎のことさ、胡散臭いし間者だと思っていたんだよ」
「う、うん……」
「記憶無くしてわざわざ新撰組に来るってどういう了見だ?ってさ。だがそれは副長助勤が連れてきたって分かったし、何より沖田先生や藤堂先生との手合わせを見た時に、真っ直ぐな奴だなって思って。興味が湧いたんだ……」
しかし使用人時代は副長助勤以外とは交流を持ってはいけない決まりとなっていたのだ。それは平隊士にも厳命が降りていたという。疑わしきは罰することになると。
「入隊が決まった時は嬉しかったぜ。やっと話せるんだってな。案の定良い奴だったから、絶対に仲良くしようって思ってさ。……記憶が無いなんて、俺なら耐えられねえのに、お前は身一つでここまで道を切り開いてきたろ?俺、こう見えても桜司郎のこと尊敬しているんだ……。……って、恥ずかしいからこの話はこれで終わり!な!」
山野は照れたように歯を見せて笑った。それは泣きたくなるほどに嬉しい言葉で。
ありったけの信頼を返さねば罰が当たる気がした。
「……あのね…………他に思い出したことがあるの。聞いてくれる?」
「ああ。桜司郎が自分のことを喋るのって滅多にないからなァ。聞かせてくれよ」
その言葉を皮切りに、桜司郎は己について語り出す。
女であることは伏せ、自分が桜之丞であることとその知りうる記憶について話した。あまりにも浮世離れした話しではあったが、山野は決して夢物語だと馬鹿にすることなく黙って聞き入る。「──桜司郎。それって……輪廻転生じゃねえのか」
「輪廻転生…………」
その言葉には聞き覚えがあった。まさに三年ほど前、山南の葬式の帰り道に山野が口にしたものである。
「ああ。きっとそれだよ。……凄いな、本当にあったんだ」
「……こんな話し、信じてくれるの?」
「言ったろ?信じるって。いくら酔っているとはいえ、桜司郎は嘘は吐かないって知っているよ」
手酌で酒を飲みながら、山野はカラカラと笑った。
「オウノスケ……だったか?その人だったことは思い出したのに、母君に拾ってもらう前何処に居たのかってことは思い出せないのかよ?」
その的確な指摘に桜司郎は頷く。結局は元々の記憶が無いものだから、現世での家族や家については全く明らかにはなっていない。
「そうだね……。手掛かりも無いからどうしようも無くて。せめて無事だってことくらいは伝えたいけれどね」
「きっかけさえあれば、また思い出せるかも知れないぜ。戦が終わったらゆっくり探すのもアリかもな……」