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後ろに土方がいることなど全く気付いていない総司は真っすぐに三津のいる甘味屋へと向かう。
店の前で打ち水をする三津の姿を見つけて,
「三津さーんっ!」
大声で叫んで手を振るとそれに気付いた三津も柄杓を片手に大きく振った。
それを見ればもうまっしぐら。https://yvision.kz/post/952345 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202312140000/ https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/12/15/174149
「お久しぶりですね,どこの甘味屋に浮気してはったん?」
久々に会った大きな子供をくすりと笑ってからかった。
「浮気とは酷い言われようですね,私だって色々忙しい身なんですから。」
総司がむくれると,
「子供と遊ぶのに?」
にんまりと笑ってさらにからかう。
総司は心外だと不貞腐れて見せると三津はけらけら笑った。
「甘いもん食べて機嫌直して?」
ちょっと笑い過ぎたかなと思いながら首を傾げてふくれっ面を覗き込んだ。
総司は大きく息を吸って“もちろん!”と答えるつもりだったのだが,何かの気配に咄嗟に振り返り低く身構えて刀の柄に手をかけた。
「げっ…。」
振り返った先にいた人物に思わず心の声が漏れる。
「おいおい誰を斬ろうとしてんだ?総司。」
不敵な笑みを浮かべた土方が顎をさすりながら立っていた。
三津には一瞬何が起きたか分からなかった。
目の前の総司はさっきまで自分と話していたのに今は背を向けて,腰の刀に手をかけている。
呆気にとられて気付くのに遅れたが総司の向こう側にいる人物に三津の目が輝いた。
「壬生狼のお兄さん!」
会いたかった人物の登場に三津は大声を上げて,手にしていた柄杓も放り出して駆け寄った。
「元気そうじゃねぇか。」
土方は目を細め三津の頭をくしゃりと撫でた。
「すっかり!あれからずっと捜してたんですよ,今度こそお礼させて下さい!」
土方はそうかそうかと腹黒い笑みで頷いた。
「土方さん,お礼とは一体何の事でしょうか?」
土方の目の奥が不気味に光ったのを総司は見逃さなかった。
腹黒い笑みに負けず劣らず,こちらも純粋さの欠片もない笑みで詰め寄った。
「土方さんか,沖田さんの知り合いやったんやね!じゃ沖田さんも壬生狼なん?
まぁいっか,立ち話もなんですからどうぞどうぞ!」
ようやく見つけた恩人に三津は嬉々として,二人店内に押し込んだ。
『私の憩いの場に鬼が…。』
総司は胸騒ぎを感じながら土方と肩を並べて暖簾をくぐった。席に着くなり土方は功助とトキから丁重にもてなされた。
甘味が大好きな自分より土方の方が持て囃されて面白くない。
総司は卓上に肘をつき,むすっとして眺めながらお茶を啜った。
いつもは好青年の総司でも今はお行儀が悪いだなんて気にしてられない。
「機嫌直して?」
横から三津の顔が割り込んできた。
それから目の前には葛きりやら粒餡がたっぷり乗った団子やらがずらりと並ぶ。
「……こんなに頼んでませんよ?」
二人分にしては多すぎる。それに土方は食べないだろう。
じゃあ独り占めだと思えば顔は緩んでしまう。
『私って単純…。』
そんな自分が悲しく思えたが,三津はにこにこと笑ってくれている。
きっと残さず食べてと言ってるに違いない。
では遠慮なくと手を合わせて,まずは団子から口に頬張った。
総司の機嫌は持ち直したものの予定外の珍客,土方はと言うと相変わらず功助とトキからお礼をと言い寄られている。
『あーあ悪い顔してる。』
その人に関わるのはおよしなさいよと言いたい所だが,事情がいまいち掴めない。
「一体何のお礼がしたいんですか?」
三津にそっと耳打ちをすると,それはねと三津も総司の耳元に顔を寄せた。
「この前私がお世話になってんよ。
道端で目眩起こして動けんくなった所をおぶってここまで連れて帰って来てくれてん。」
優しいでしょ?と微笑んで,その時土方が名乗らずに帰ってしまいお礼が出来ずにいた事を囁いた。
「それでお礼を…。」
「そう,壬生狼の人ってのは分かってんけどそれ以外手掛かりなくて。
沖田さんと知り合いやったやなんて世間って狭いなぁ。」
三津は嬉々として笑っているが総司の胸の内は複雑だ。