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何もこんな曖昧な言葉を告げたかった訳ではない。
本当は、側室などお持ちにならないで下さいませ、と声を大にして叫びたかった。
が、僅かながらの理性と、那古屋城主の正室という立場がそれを制していた。
濃姫は、今の自分が口に出来る最大限の無礼で、その内なる想いを信長に伝えようとしているのだった。
「……」https://carinaa.animegoe.com/Entry/6/ https://mypaper.pchome.com.tw/carinacyril786/post/1381806313 https://edward.anime-voice.com/Entry/6/
信長は妻の想いを察したのか、逆に察し切れなかったのか、彼はひどく深刻そうな表情で姫を見つめると
「─お濃」
何か言いたげに唇を軽く上下させながら、そっと姫の艶やかな黒髪を撫でた。
髪に触れる信長の手は、宝物を扱うように優しかったが、信長の口からはそれ以上言葉が漏れることはなかった。
まるで蟠(わだかま)りが残るような、居心地の悪い空気が二人の間に流れた時
「ご無礼つかまつります──」
池田(勝三郎)恒興が小走りにやって来て、信長の足元に控えた。
信長の手が唐突に姫の頬から離れ、彼は狼狽顔で己の乳兄弟に目をやった。
「恒興か。何用じゃ?」
「殿、急ぎ御書院の方へお出座し下さいませ。守山城より織田信光様がお越しにございます」
「叔父上が?」
「是非とも殿のお耳に入れたき、大事なる報を持って参られた由」
「報じゃと」
信長の細く整えられた眉が、一瞬ぴくりと波打った。
このような時分での、それも火急の訪問である。
大方今川か、または此度の清洲の一件が絡んでいるのであろうと察した。
が、大事なる報とは何であろう…。
信長は眉間に深い皺を寄せながら、暫し宙に視線を遊ばせると
「相分かった、すぐに参る」
踵を返し、御殿に戻ろうと歩み始めた。
濃姫は、恒興と共に去ってゆく夫の広い背中を、悄然とした面持ちで見送っていたが
「そうじゃ……お濃よ!」
信長は急に足を止めて、姫の方へ振り返った。
「ちょうど良い、そなたも付いて参れ」
濃姫が思わず「え?」となっていると、信長はつかつかと姫の前に歩み戻って来て
「良いから来い。久方ぶりにそちの見解が聞きとうなった」
濃姫の手首を取るなり、ぐいぐいと御殿の方へ引っ張って行った。
城の表書院では、信光が下段の中程にどっしりと腰を据えて、やや急いた表情で信長の訪れを待っていた。
守山城主・織田信光は、今は亡き信秀の弟にあたり、小豆坂の戦いにおいては小豆坂七本槍の一人として名を馳せた、武勇の誉れ高い人物である。
織田家の親族や家臣たちが揃って品行方正な信勝を支持する中で、信光は嫡男たる信長を支持し、
かつての「萱津の戦い」「村木砦の戦い」においても信長勢と共に戦い、その勝利に貢献し続けてきた影の功労者でもあった。
そんな彼が前触れもなく信長の元へやって参ったのは、これまで同様、どこかで信長の“次なる勝利”を確信していた故なのかも知れない。
「──これは叔父上、ようお出で下さりましたな」
やがて、豪快な足音を響かせながら信長が座に入って来ると
「おぉ、信長殿。待ちわびましたぞ。いや、突然押し掛けてしもうて申し訳ない」