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それが今の生き甲斐になっていると言っては大袈裟過ぎるが、賢き姫にとっては実に刺激的な事であり、
精彩に欠ける日々の中で、己の有り余った才知を活かせる唯一の時間でもあった。
「──儂がどうしたじゃと?」
ふいに背後から、聞き慣れた高い声が響いた。https://debsy12.blogspot.com/2024/07/blog-post.html http://eugenia22.eklablog.net/-a215973061 https://carinadarling.wordpress.com/2024/07/01/%e3%80%8c%e3%81%9d%e3%81%ae%e7%9f%ad%e5%88%80%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%8b%e3%81%aa%e3%81%8b%e8%89%af%e3%81%84%e5%88%83%e3%82%92%e3%81%97%e3%81%a6/
濃姫は瞬時に顔を上げ、そっと振り返ると、縁台の袂に、真新しい弓を手にした信長が昂然と立ち尽くしていた。
「これはっ」と、慌てて濃姫や侍女たちが平伏しようとすると
「礼は良い──。それよりも、退屈云々とは何の話じゃ?」
訊きながら信長は姫の前に歩み寄った。
「いえ、何でもございませぬ。殿のお側にいると面白き事が多い故、退屈する暇がないと、そう申していただけです」
事実ながらも、濃姫がどこか取り繕いがちに言うと
「ならば良い。尾張が退屈になった故、美濃に帰りたいなどと言われては困る。
儂にとってそちは、大事な存在じゃからな」
信長は真剣な面持ちで告げた。
姫は一瞬ときめきを覚えたが
「そなたは、いずれ儂が美濃を我が物にする為の大切な布石。そちが側におらねば、蝮殿から美濃を譲り受ける大義名分が立たぬ故な」
「また左様な意地悪を申される」
濃姫は軽く両頬を膨らませた。
「何、感謝はしておるのじゃぞ。そちが嫁してくれたおかげで、儂は蝮殿という強力な後ろ楯を得たのじゃからな。
──ま、いつ毒牙を向けて来るか分からぬ、油断ならざる後ろ楯じゃがのう。はははっ」
そう言って高笑いする夫の前で“無神経なお人”と、濃姫は俯きがちに緩くかぶりを振った。
「左様な事より、殿。何かご用があられた故、こちらへ参られたのでは?」
濃姫が気を取り直して訊くと
「…おお、これはしたり」
と信長は左の太股を軽く叩いた。
「お濃。そちは兎、猪、鴨の内ならば、いずれを好む?」
「何のお話でございましょう?」
「良いから。いずれを好む?」
夫の真摯な眼差しが注がれると、濃姫はふいに
『 もしやこれも、私をお試しになっての事であろうか 』
と思い、これは迂闊に返答出来ぬやもと警戒した。
しかしいつまでも黙している訳にはいかず
「…兎で…ございましょうか」
仕方なく思うがままに答えた。
「ほぉ、兎か」
「…はい」
「となると、一羽ではちと足りぬのう。少なくとも二、三羽は捕らえねばなるまい」
「捕らえる!?」
まさか、兎を敵方に例えているのか?
ならば、誰ぞを捕虜にでもしようとしているのかと、濃姫は険しい表情で信長を見上げた。
「応よ。今から森へ行って狩って参る。猪ならば一蹄で十分じゃが、兎であれば数羽は必要であろうからな」
「殿…、いったい何のお話をされているのです?」
「今宵の夕餉の話じゃ。久しぶりに鍋など食してみとうなってのう。兎か猪か鴨か、獲物は何が良いかと思うて」
濃姫は思わず額に手を当てた。
変に深読みし過ぎた自分にも問題はあるが…。
そんな妻を他所に、信長は得意満面で
「これを見よ。以前使っていた弓がすっかり草臥れてしもうた故、新しき物を拵えさせたのじゃ」
黒漆が艶やかに光る塗籠籘の弓を姫の前に差し出した。
「通常の物よりも五寸ほど長う作らせ、弦(つる)も以前より丈夫で張りのある物に致した。今度のは勢いが違うぞ、勢いが!」
早くこれで狩りがしたいものだと、信長は笑いがらビュン、ビュンと何度も弦を引いては放しを繰り返した。
濃姫はそんな信長を見ている内に