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「伊藤さん!こんな所で何してるんです?」
誰にも会わないように上流に場所を変えたと言うのに見つかった。
だけどそれが伊藤でほっとしていた。
「お久しぶりですね!お忙しいんですか?」
やっぱりいつも通りの三津に,伊藤は唇を噛み切ってしまいそうな程強く噛んだ。
「今日はお話があって来ました。」https://kate.asukablog.net/Entry/2/ https://johnsmith786.blogger.ba/2024/02/01/%e3%80%8c%e5%90%89%e7%94%b0%e3%81%95%e3%82%93%e3%80%82%e4%b9%83%e7%be%8e%e3%81%95/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/0d6c9fa3032d4b3885e16c12edbde784
息が詰まるほどの重たい空気にそれがいい話でない事は簡単に分かった。
「何で…しょうか…。」
伊藤の冷たい表情暗い声に息を飲んだ。
「……もう桂さんと関わるのはやめて下さい。」言われるような気はしてた。言われて当然だと思ってた。
それでもいざ言われると受け入れ難いもので,情けない事に言葉も出ない。
言いたい事はあるのに,上手く整理が出来なくて発することが出来ない。
そんなただ立ち尽くす三津を睨みつけて,伊藤は更に言葉を浴びせる。
「はっきり言って迷惑です。職務に支障をきたしてます。
もう我慢の限界なんです。いつ壬生狼側に寝返るかも分からないあなたを桂さんの傍に置いておくなんて出来ません。
あなたは桂さんの立場をちっとも分かっていない。吉田さんの事も。」
三津を慕っておきながらよく言えたものだと自分で思った。
でももう引き返してはいけない。
「あなたは桂さんの為に何をしてくれますか?何が出来るのですか?
必要なのは幾松さんの様な方であなたじゃない。」
三津の視界は酷く歪んで伊藤の表情ははっきりと見えてはいなかった。
もししっかりと見えていたら,面と向かっているのが堪えられなくて逃げ出していたかもしれない。
「……分かってたんです。やっぱりそうですよね,迷惑ですよね私。
分かってた癖にみんなが優しいから居てもいいなんて勘違いして阿呆ですよね。」
こんな時でもこの顔は笑ってしまう。今までにない酷い笑顔だと思う。
「何もかも断ち切って小五郎さんについてく覚悟もないのに…甘えてしまってすみませんでした…。」
三津は深々と頭を下げた。
「ご理解いただけて有り難い。ではあなたから桂さんに別れを告げてもらえます?あなたから言われないと納得しないでしょうからあの人。」
伊藤は苦悶の表情で矢継ぎ早に言葉を吐き捨てた。早くこの場から逃れたい。
「……分かりました。」
「また日取りは追って連絡します。では。」
複雑な心情を読み取られないようにすぐ様三津に背を向けた。
「伊藤さん…。やっと決心がつきました色々ありがとうございました…。」
背後で走り去る音が聞こえた。
悲しみのどん底に突き落としてしまったに違いない。だけど三津の命を守るためでもあるんだ。
『それに…元はと言えば桂さん達が自業自得なんだ…。俺は悪くない…。』
そう思って少しでも気持ちを軽くしたかった。「桂さん,三津さんが会ってお話がしたいと仰ってましたよ。」
何食わぬ顔でそう伝えれば,桂の目元がほころんだ。
「そうか…。では日取りを。」
『これで…二人は終わるんだな…。』
いつもの様にさらさらと筆を走らせるのを呆然と見ていた。
『元から添い遂げられぬ運命なんだこの人達は。』
そう言い聞かせる自分と,他の道を作り出せなかった不甲斐なさを責める自分がいた。
「では明日頼むよ。」
桂は変わらない穏やかな笑みを伊藤に向けた。
「承知しました。」
これを三津に届けなければならない。今日散々酷い言葉を浴びせて合わす顔なんてないのに。
『三津さんだって俺に会いたくないだろうよ…。』
翌日重い足取りで甘味屋へと向かう。もしかしたら昨日の事を引きずって三津は表に立っていないかもしれない。
その予想とは裏腹に三津はいた。
『居なければ良かったのに…。』
立ち尽くしてしまった伊藤を見つけて三津は深々と頭を下げて自ら近づいて来た。
「来ると思って待ってました。早い方がいいですもんね,お話するの。」
眉は垂れ下がって悲しそうな顔なのにちゃんと笑っていた。
『何で笑うんだよ…。』
無理して笑ってるのは分かってる。だけど努めていつも通りに振る舞おうとされると,押し込めていた罪悪感がここぞとばかりに這い上がってくる。