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越しに声をかけた。
それに報春院が立ち上がり、胡蝶に代わって部屋の外へ出た。
『何事じゃ。──お濃殿はお加減が悪い故、お側には近付かぬよう申しておいたであろう?』
『申し訳ございませぬ。 …ただ、様が、取り急ぎ御台様にお会いしたいと申されて、御対面所へ参っておられるのです』
『蒲生殿が?』
報春院は思わず眉をひそめた。https://mathewanderson.animech.net/Entry/7/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/11/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/7/
蒲生賢秀と言えば、六角氏の家臣から長じて織田家の家臣となり、信長からも信を置かれている近江の日野城主である。
彼の嫡男である)の正室が、信長の二女である冬姫であることから、織田家とは姻戚関係にあった。
賢秀はこの折、安土城二の丸の守備に付いていたが、程なく明智軍が安土城を奪いに参るであろうと考え、
奥向きの妻妾や子供たちを日野城へ避難させるべく、嫡男の賦秀と共に、牛馬・人足なども日野から呼び寄せていた。
そんな賢秀の考えを、侍女の報告を通して知った報春院は
『それは実に有り難きお気遣いじゃ 』
と、一瞬 感謝の念を示したが
『…なれど弱った』
すぐに眉間に深いを刻んだ。
報春院は再び奥の間に入ると、び泣く孫娘に
『胡蝶、しっかり致されよ。良い話じゃ。蒲生殿が我らを日野の城にうて下さるそうなのです。
ささ──泣くのはやめて、ご気丈になられよ。今のそなたはお濃殿なのですから、誰よりも毅然としていなければ』
と慰めるように告げたが
『…ち、父上…母上…。…蘭丸様ぁ…』
胡蝶は両目を真っ赤に染めて、美しい満面を涙でくしゃくしゃにしている。
少なくとも変事によって信長や信忠を失っているのだから、濃姫が彼らの為に涙を流していても不自然ではないが、
今 目の前にいるのは、濃姫たちの訃報に打ちがれ、完全に素の十四歳に戻ってしまった傷心状態の娘御である。
どんなに似ていても、正室として常に毅然と振る舞い、奥の女たちを束ねてきた濃姫とは、明らかに態度も雰囲気もかけ離れている。
これでは賢秀の前へは勿論、側室や侍女たちの前にも出す訳にはいかなかった。
『…致し方ない。この上はこちらへ輿を運び入れて、輿ごと胡蝶を城外へ出すしか方法はあるまい』
貴き身分故に出来る唯一の方法だと、報春院は妥協気味に述べたが
『されど、上手くいきますでしょうか?』
ふと、お菜津がをひそめた。
『蒲生様は御台様とのご対面を願われておりますのに、おしになられないというのは、か…』
『大丈夫じゃ、蒲生殿にはわらわが対応致そう。元より今の胡蝶では、お濃殿を演ずるのは無理であろうからな』
項垂れる孫娘を、報春院は力なく見据えた。
『されど、乗物部屋から輿をこちらへ運び入れるのには多少 時を要しまする。どのようにして蒲生様をお引き止め致すのですか?』
あまり悠長にしていると明智勢が乗り込んで来る恐れもある為、賢秀としては一刻も早く女たちを城外へ避難させたいはずである。
報春院も思わず『…そうよのう』と思案顔になった。
せめて一時だけでも足止め出来れば良いのだが。
何か良い手はないものかと、考えを巡らせていると
『──失礼致します、御台様、大方様』
またもや部屋の前に侍女の一人がやって来て、襖越しに声をかけた。