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様から受け取った時のそなたが、き悲しみ、憂いていないことを母は切に願うばかりです。
これがそなたに渡されたということは、即ち、そういう状況に陥ってしまったからなのであろう。
私が、兼ねてより考えていた通りに動いているのであれば、今のそなたは、私に成り代わり、信長公御台として過ごしているはずじゃ。
この母の大それた策略に、きっとそなたは戸惑い、悩み、苦しみ、時には怒りすら覚えたことであろう。
そうさせる訳は、私が自らの口で語り聞かせるであろうが、まだ若いそなたに、更なる密事をえさせ、戸惑わせてしまったことは、どうか許してほしい 》
巻紙にられた濃姫の詫びの言葉を読んで https://besidethepoint.mystrikingly.com/blog/fd26cda4ad9 https://jennifer92.livedoor.blog/archives/36884208.html https://note.com/ayumu6567/n/nad6702f4266d?sub_rt=share_pb
『……許せませぬ。かような大事を、表へも出せない娘に託すなど、母上様はどうかしておりまする』
胡蝶はに呟いたが、その面持ちは、言葉とは裏腹にどこか穏やかである。
《 私がこの計略をそなたに告げる時、そのとして、そなたの今後の行く末の為、織田家の人間として生き抜いてほしい故じゃと申すであろう。
無論、それは私の本心であり、てよりの願いであった。故にその気持ちに間違いはない。
ただ──他にも述べるべき理由があるとするならば、それは私自身の恐れ。この先のそなたの人生を、この目で見れぬやもという、懸念があった故かも知れぬ 》
『…懸念?』と、胡蝶は読みながら首をった。
《 十四年前、近江の成菩提院で密かにそなたを出産した後、私は故あって、くの間は京に滞在しておったが、
その折に、私の影を任せていたお菜津と落ち合い、入れ替わる為に、本能寺なる寺院へ参ったことがあったのです 》
本能寺という寺名に、胡蝶はわっと双眼を見張った。
自分が生まれた年に、まさか謀反の舞台となった寺院に母がいていたという事実に、胡蝶は思わず背筋が寒くなった。
しかし、その先を読む内に『…そんな』と、胡蝶は思わず手で口元を押さえた。
そこには、濃姫が幾度となく、炎上する本能寺の悪夢を見、その度に信長の上洛を不安に思っていた旨が詳細にられていた。
《 …ではない。ろ、私が此度 上様と共に京へ参るのは、まことにそれがただの夢に過ぎないという事を、証明する為でもある。
なれど、不安が拭えぬのも事実故、万が一の時の為に、上様が天下布武を成し遂げた後に行うつもりであった計略を、試みとして実行しようと思う 》
胡蝶は、自分に自由を与えたいという母の思いを理解しつつも、何故 短期間の上洛でそれを行う必要があったのかと、
ずっと不思議に思っていたが、今 文を読んで、その疑念がようやく晴れ、得心した。
《 出来るならば、私と上様が無事に安土へ戻り、この文がそなたの手に渡らぬことを願ごうておる。
けれどもしも、願いに反して戻ることが出来なかった時は、胡蝶、そなたは何を迷うこともなく私自身におなりなされ。
少なくともそなたには、そなたを助け、力となってくれる者もおる。その者たちに支えられ、時には支えながら、この乱戦の世を強う生き抜いてほしい。
おざなりやも知れぬが、今、この文を書いている私が、そなたに言えることはそれだけじゃ 》
『…母上様』
薄布をかけた口元が大きく息づき、胡蝶の瞳も潤むような光をえていた。
《 ただ言い添えることがあるとすれば──胡蝶、どうか幸せになってたもれ。母として、そなたが幸せであることを、第一に願ごうておりまする 》
《 胡蝶、どうか健勝にな 》
薄い絹を張ったような瞳の潤みが、やがて一粒の涙となって、胡蝶の白い頬をスッとつたった。
胡蝶は思わず文を手に取り、それを片手で、名一杯の力を込めて抱き締めた。