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艶やかな町並みを茶色の毛並みを纏う馬が走り抜ける。
色鮮やかな町並みは、多摩とは全く色合いが違い辺りに目を向ける麗の様子に、沖田も気づいたのか、手綱を引っ張りながら口を開いた。
「町並みが、全く違うでしょう」
「……うん……。豪華というかなんというか……」
「落ち着いたら町並みを案内しますから」
「……うん」
突然喋りだした沖田の様子に、麗は困惑しつつ言葉を発し続けたが、前方に見える黒い集団を見つければ思わず沖田の着流しを引っ張る。
その集団は艶やかな町並みには不自然で、麗は内心……葬式か、祝いか。
物珍しい物を見る瞳で見つめたが、沖田は違った。
知らず知らずのうち、手綱を握る手に力が入り警戒心を露にしていた……。
「黒って遠目で見ても目立つ」https://carinadarling.werite.net/post/2024/12/25/For-all-kinds-of-people%3A https://telegra.ph/Once-I-became-a-self-help-expert-12-26 https://freelancemania8.wixsite.com/website/post/%EF%BE%8B%EF%BE%9F%EF%BE%9D%EF%BE%8E%EF%BE%9F%EF%BD%B0%EF%BE%9D
「ええ……。そのまま通り抜けますよ、麗は出来るだけ左側を見ておいて下さい」
「……なんで……だってあれ……。ちょっと!!」
突然、馬の速度をあげた沖田だが、麗は落ちそうになる体勢を慌てて整えた。「ちょっと!!急に速度をあげたら落ちる!!」
…………あれっ?
衝動で沖田の肩を殴ってしまった麗だが、無反応の沖田は前方を見据えたままだ。
普段なら、小言の一つでも発す筈のその姿に麗は首を捻りながら、大人しく左側を向いた。
黒い集団を通り過ぎる瞬間、沖田はその集団に横目を流し通り過ぎていく。
黒集りの先頭を歩く人物と、目が合えば沖田の鋭さは増す。
土埃を巻き起こし、走り去るその姿を見送った人物――芹沢を先頭に歩く、共に一派と略される集団。
芹沢一派の一味が、口笛を吹き鳴らす。
短髪のまだあどけなさが残る青年は、思わず肩を引っ込ませた。
「今の近藤と沖田だよね?どこに行ってたの馬なんかに乗って……。ねえ、沖田が後ろに乗せてた子。顔が見えなかったけど、あれ女だよね?ねえ、平間」
「知らねえよ。見てねえ……。」
「見てなかったの!?今の絶対女だったよ?ねえ、新見」
「知らん」
「嘘……。平山は見たよね!?」
「見てないが」
「嘘嘘……。皆、なんなのさ。薄情!?ねえ、薄情!?俺だけ……痛い痛い!!苦しい苦しい!!」
一人てんやわんやと騒ぐ青年は、平間と呼ばれた体格の良さが窺える人物に襟を掴まれ苦しそうに脚をじたばたとさせた。
威風堂々と貫禄さえ醸し出す先頭を歩く芹沢は、一人不敵な笑みを浮かべていた……。
「来たか……」
「ねえ、なんでさっき左側を見ろって言ったの」
「まあ、色々あるんですよ。それより、麗」
「……なに、急に……」
馬の手綱を突然止め、麗に振り返る沖田はゆっくりと口を開いた。
「文で伝えたことですが、芹沢さんには気をつけて下さい。あとは、新見さん……。もう一人、平山さんですがあの二人は芹沢さんの腹心です。十分注意して下さい。」
…………芹沢…あの時の、道場破りの……
「聞いてますか」
「……あ、ああ。聞いて「おいおい……。お前……。なんで麗が此処にいんだよ!?」
「お前、馬鹿か……。あいつが居るわけねえだろ。
はっ?……はあああああ!?なんでお前がいんだよ!?」
……原田さん……永倉さん
麗は思わず口許が自然と緩んでいく。
門を構え、立派といえる長屋から出てきたその姿は麗を見れば、口許を鯉のようにパクパクと開閉させ。
文の詳細は、約一ヶ月でねまぐるしく近藤達を取り巻く環境が変わっていたことを指していた。
浪士隊、発案者ーー清河八郎、その者は幕府を裏切り勢力を増す倒幕派に勢力を預けるというもので。
幕府への裏切り行為を意味していた。
浪士隊に参加した者殆どが故郷へ帰還するなか試衞館組、水戸派が独断で残り、壬生浪士組を設立したというものであった。
……本荘宿にて、水戸派との口論ありってなに……あの人達となにかあったの……それに、独断で京に残ったって……金子や食料は……
文に綴られる文面をみるごとに麗の眉間の皺は深くなる一方だった。その場に立ち上がった麗は、とっさに京に登ろう。その感情が支配したが、次の瞬間支配した思いは……。
試衞館のことだった。
師範代だった沖田は今はいない。周助も体調が優れず、門下生の指導にあたっているのは実質……麗だ。https://diigo.com/0yi6xi https://rodney.bravesites.com/entries/general/%E9%88%B4%E3%81%AE%E9%9F%B3%E3%81%AF%E6%AD%A2%E3%81%BE%E3%81%AA%E3%81%84- https://www.tumblr.com/debsysblog/772101531855093760/%E3%81%84%E3%82%84%E3%81%81%E3%81%AD-%E3%81%84%E3%82%84%E3%81%81%E3%81%AD%E3%81%9D%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A0%E3%81%91%E3%82%8C%E3%81%A9%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%82%8A%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%AF%E7%9A%86%E3%81%A7%E3%82%84%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E7%A7%81%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%8C%E4%BC%91%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%AA?source=share
「…………」
目線は足元に向かい結局、その日は京に残った近藤達の詳細を彦五郎に訊けないまま一日を過ごすしかなかった。
自分のしたいこと、夢、が様々な問題で出来ず仕舞いということは、誰しも一度はあることで……。
麗も、今まさにそれに直面していた。
「……はあ……」
……今は此処が一番落ち着く……
その日の夜。
麗は再び、小川に足を運ばせていた。
自身の考えていること、周助の言葉、周りの考え。
この場所にくれば、少しだけ楽になれる自分自身が存在していた。徐に懐に入れた短刀を取り出し、暫し物思いにふけていた麗だったが次の瞬間ーー。
鋭い視線を右手方向に向けた。
「誰」
……鈴?……鈴の音
チリン……チリンッ、と暗闇から聴こえる不気味な鈴の音に、麗は警戒を露にし目を細めた。
近づいてきてる……鈴の音が……気味悪い
チリン、チリン、チリンチリンッーー。
鈴の音は徐々に近づき、麗はその場に立ち上がれば短刀の鞘を引き抜こうとしたが、その瞬間ーー。
音が止まった……消えた……?
困惑した。
鈴の音が止んだのだ。あれほど近づいてきた鈴の音が途端に止み、麗は暫くその方向を見つめ動けずにいた。
「……麗ちゃん?」
「……つねさん……」
「なかなか帰って来ないから心配したのよ……やっぱり、此処だったのね」
「……すみません……。お手間をとらせて……」
後方から提灯をもったつねが、麗に歩み寄ったが、麗は前方への警戒心はなかなか拭えずにいた。
なんだったんだろ……あの鈴の音……気になる……あの音……
帰る最中も、後ろを振り返り首を捻る麗の姿に、つねも同じように後方にふりむくそぶりを見せた。
「後ろになにかあるの?」
「……いえ、なんか気配がありませんか」
「気配?……私は全然分からないけど……」
……なにかいる……なにかがいる……絶対にいた……今もいる
疑惑は確信にかわった。
小川に目を向けた麗は、あれから時折、月夜に反射する影を見つめていたのだ。
そこに反射された影は、自身とつね以外に四つ……。
「……四人いる……」
麗は思わず顔をしかめた。
短刀で、四人を相手どるのは極めて困難。
寒気が身体を這い、心拍だけが上がっていった。
どちらともなく速足になり、口数がなくなる。
真剣な麗の表情につねは困惑し、腹を守るように片手をさするそぶりを見せ、足音だけが響き渡る。
カラン、コロン……カラン、コロンッーー。
女だから。
女だから。
女だから。
その言葉は、嫌でも聞こえてきた。誰も言葉を発したわけでもない。
ただ長年の付き合いになれば嫌でも分かるものがある。
問いかけた言葉に対して、沖田の目をさ迷わせる癖や……皆々の顔。それは、麗に隠し事をしたまま、話をはじめたことは確かで。
麗は、女だから。
と……結論は、話が出た時点ですでに決まっていた。
「女でなにが悪い……」https://debsy1.blogspot.com/2025/01/blog-post.html https://www.tumblr.com/debsyking/771850636271747072/%E4%B8%8D%E7%A1%AE%E5%AE%9A%E6%80%A7%E4%BC%9A%E5%B8%A6%E6%9D%A5%E5%8E%8B%E5%8A%9B-%E4%B8%8D%E7%A1%AE%E5%AE%9A%E6%80%A7%E4%BC%9A%E5%B8%A6%E6%9D%A5%E5%8E%8B%E5%8A%9B%E8%BF%99%E4%B8%80%E7%82%B9%E6%AF%8F%E4%B8%AA%E4%BA%BA%E9%83%BD%E6%B7%B1%E6%9C%89%E4%BD%93%E4%BC%9A%E6%97%A0%E9%A1%BB%E7%BB%9F%E8%AE%A1%E5%AD%A6%E4%B8%93-%E5%AE%B6%E6%88%96%E6%98%AF%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A4%A7%E8%84%91%E7%9A%84%E7%A7%91%E5%AD%A6%E5%AE%B6%E5%91%8A?source=share https://site-5818960-5564-8265.mystrikingly.com/blog/eae9892b8f7
麗は、握りこぶしを作れば血が出るほどに己の手のひらに爪を食い込ませたが、歩みを続けることが出来なかった。皆に追いつこうと幼少期から必死だった、麗。
袴だけではなく、言葉使いも、外見、中身までも男に近づこうと努力した日々が、今の一瞬で脆くも負の感情に押し潰されそうになりながら、麗は胸に巻くサラシを握りしめた。
誰よりも言われたくなかった。
誰よりも……。
身内のような存在であり、共に育ち、歩んできた家族のような存在の近藤達からは決してその言葉を耳にしたくはなかったのだ。
【女だから】時間とは、求める時にはすぐに流れ。
もて余すときには十分ほど、刻の流れは遅く感じる。
この二週間、麗は前者。時間の流れが早く感じていた。
「おい、挨拶ぐらいしろって」
「何故私なんですか」
「昔からのよしみはお前だろ」
小春日和を迎えた本日。
試衛館の門先には、浪士隊に参加する近藤達の姿があり、雑談を交わす間、原田は横に立つ沖田に声をかけた。
目線の先には麗の姿があり、ほうきで庭先を掃く麗とはここ数日、沖田はまともに会話をしていなかった。
麗の前に、歩み寄った沖田だが……二人の間にはぎこちない雰囲気ばかりが漂い続けていた。「いってらっしゃい」
口を開いたのは……麗だった。
目を真ん丸とさせた沖田だったが、沖田はすぐに。
「ええ……。行ってきます。周助先生や、道場をよろしくお願いします」
そう口にすれば、軽く頭を下げ身を翻していった。
麗は今にも自身の感情をぶつけてしまいたい衝動に刈られていたが、ぐっと我慢し、遠くなっていく近藤達の背中をただ見つめていた……。
京へ共に、連れては行けれない……。
道場を頼むと、近藤から託された言葉はどことなく麗にも分かっていた。
それを物語るように、誰も麗に「共に京へ登ろう」と声をかけた者はいなかったのだから……。
男所帯に女は足手まといになる。
分かっていても、胸が傷んだ……。
ほうきを握る手に力ばかりが入り、麗はゆっくりと身を翻した……。
「いってらっしゃい……。か」
「ありゃあ、あいつなりの強がりだな」
「歳……。麗には悪いことをしたな」
「なら連れて行くのか。あいつらも登る場所に……」
浪士隊に参加する大名行列のなかを歩く近藤、土方が口を開いたが土方は顎で前方を指した。
前には、一際目立つ姿が一つ浮き彫りになり。
その者……長く重たい鉄扇を肩に預けながら。
「本荘宿はまだか、新見」
「先生。まだです……。それにその鉄扇は」
「指図するな」
「……御意」
新見を差し置き、歩みを続けた。
道場やぶりに訪れた芹沢一派だ。
芹沢の右側を歩く眼帯をつけた男ーー平山は後ろをチラリと振り返れば。
「あいつら、登ってきたのか」
そう、ポツリと呟いた。
土方は、あの日から芹沢一派を警戒していた。
知識に長ける生え抜きの山南曰く、芹沢一派は元は水戸天狗党というではないか……。
不思議な出来事はまるで見計らうように、次から次へと起こる。
チャポン、チャポンと川の淵で足をつける人物ーー麗は一人物思いにふけていた。
数刻前に起こった出来事をーー。
【知っておるか、後の浪士隊の話を……。】
浪士隊って何?
……芹沢鴨……新見錦……平山五郎。あの三人は神道無念流って、それに彦五郎さんをいとも簡単にのめした……
【小娘、気になるか。小指が……】
芹沢を筆頭に、試衛館を出ていく際、麗は芹沢の右手を凝視していた。
芹沢の小指がないことに驚きを覚え、凝視していたのだ。https://nouw.com/debsyking1/moral-of-the-story-dont-be-shy-38622138 https://www.deviantart.com/debsyking/status-update/--1149553328 https://www.techsite.io/p/3831084
何故、あの時……芹沢は、近藤や沖田ではなく彦五郎を指名したのか……。
浪士隊の参加話を、何故近藤に問いかけたのか……。
何故、何故と疑問ばかりが浮かんでいた。
夕暮れを知らせる鴉が鳴き、ふと地平線に浮かぶ太陽に麗は目を向けた。
「変わった男だったけど……強者だ。あの三人」
「道場やぶりの話ですか?」
「……なんでいるの」
「先程からいましたよ、みんな」
「……そっか……」
「変ですね、朝から」
右手を向けば、沖田が腰を下ろし苦笑いを浮かべながら川に再び目線を向けた。春が訪れたといっても、まだまだ川の中は冷たい。
その中で騒ぐ人物達を見れば沖田は麗とは違い暫く笑っていた。小馬鹿にしながら……。
「気合い入れろ!!男だろうが!!」
「お前が勝手に入れたんだろ!!無理やり!!」
「おっ!?小魚がいんじゃねえか!!捕れ平助!!今晩の飯だ!!」
「……聞けよ、人の話……」
川の冷たさもなんのその。
原田は川の中を泳ぐ小魚を追いかけ、藤堂は無理やり川の中に入れられたせいか、げんなりしているが……。
傍観する永倉は、「アホにしか出来ねえ技だ」と、これまた小馬鹿にしていた。
稽古も朝のうちに終わり、道場やぶりの後、ふらりと一人試衛館を出ていった麗を追いかけた四人だがその事柄を麗自身が知るよしもなかった。
「気になりますか、あの三人が」
「……はっ?」
「そんな顔してますよ、今の麗は」突然、なんの前触れもなく振られた話に麗は口を閉ざしていれば。
「気になるのは分かりますよ。私も気になりますから」
沖田が先に口を開いた。
「普通の道場やぶりなら、名誉や金のため……。でもあの人達、芹沢さんは彦五郎さんと剣を交えただけで帰ってしまった……。何が目的だったのか分かりませんから、嫌でも気になりますよ。まるで……」
「……まるで?」
「何かを見に来た、品定めに来たというか……。私にはそう見えました。それにあの側近の二人も強者でしょうね、多分。尋常ではない雰囲気が滲み出ていましたから」
総司も分かってたんだ、強者だって……
感心するように沖田を見ていれば、沖田自身は小首を傾げ。
「帰りましょうか。あっ、麗。今年の夏も見に来ましょうね……」
「……夏、ああ」
……蛍のこと
ふっと麗に笑いかけた。毎年、試衛館から少しばかり北上したこの場所。綺麗な、綺麗な川に夏になれば光を灯す蛍を眺めにやってくる。
恒例行事に少しばかり胸のざわめきも、落ち着きを取り戻し麗は原田達を置いてふらりと先を歩きはじめたのだった……。
「こいつすばしっこくて、俺をおちょくってやがる!!」
今もなお、小魚に夢中な原田一人だけを置いて……。
おミツさんが来てからというもの、たくさんの人が駆けつけてくれた。
土方さんの盲目のお兄さん、お姉さんに、林太郎さん、おツネさん。
皆、皆、私達の無事を喜んでくれた。
中でも驚いたのが、
「立花さーん!?お客さんが!!」
「お鈴さん!?」
宿を出るとき、すごく心配してくれていた。
でも、彼女の声が、更に客人と言っている。
「なんかすごい綺麗な人ーー!!きゃ!ちょっと!」
何事か。
鈴が一人で騒いでいるのかと思いきや、またもや勢い良く襖が開いた。
「立花さん!!」
「あ…明里さん!?」
そう。突如姿を現した明里だった。https://mathew.anime-movie.net/Entry/9/ https://mathew.99ing.net/Entry/9/ http://carinacyril786.futbolowo.pl/news/article/news-9
「なっなんで!?」
そう言えば今日もう何度目かの抱擁をされた。
「はっ…はぁっ…し…知り合い?」
その後を急いで駆けて来たであろう鈴が息を切らしながら問う。
美海はその剣幕に驚き、頷いた。
「…その人っ…ね、途中の道で…立花さんはどこにいるかって聞いてくるもんだからっ」
「大丈夫?」
涙を拭い復活したミツが鈴に茶を渡した。
「ありがとう」
息を調えると、再び鈴は語りだした。
どうやらそう尋ねられたが、明里を官軍の差し金ではないかと思った鈴は言わなかったらしい。
だが、あまりにしつこく、素性を尋ねたら新撰組の知り合いだと言って、新撰組について事細かに話すものだから連れてきたようだ。
「なるほど…。でもどうしてこんなとこに…」
「どうしてって、立花さんは私の数少ない友達やもん!ずっと、心配してたんよ」
そう言うと明里はニカッと笑った。
雰囲気は変わったが、相変わらず、そういう所が、美しいなと思う。
この人は、こういう笑い方をする人だった。
「ありがとう、ございます…」
遠かっただろうに。
こんなところまで、来てくれたんだ…。
「蝦夷地でのこと、聞いて、ずっと心配しててん。
でも、立花さん生きてるって聞いて…。ほんまに良かった…」
美海はやっぱり涙を浮かべると、頷いた。
「全部、聞いたよ。
ようがんばった。うちらも、一緒やからね。一緒やから…」
他にも話してくれていたのに、そう明里さんが言ってくれたのが、すごく印象に残っていた。
周りにはおミツさん、お鈴さん、おツネさん、そして、明里さんがいて。
みんな、強い強い女性だな。と思った。
でも、今思い返してみれば、彼女達は、私の性別をどこかで知ったのかもしれない。
明里さんの言葉には、そういうことも含まれている気がした。
それから私達はしばらく彦五郎さんの所でお世話になることになる。
鉄くんに関しては3ヶ月。
本当に、優しい人だと思った。
優しいって言うと、それもおかしいんだけど、人間的に、優しい人だと思った。
私はというと…。
実は、最後まで鉄くんといれたわけではない。
いや、ある日を境に、私も自分の戦いに終戦を迎えることとなった。
新政府軍の監視も薄くなって、八木のおばさん達も一度来てくれた。
そんな頃。
「おい!おい!鉄!美海!!」
「なんですか?彦五郎さん」
すっかり馴染んだ彦五郎さんは、なんだか土方さんの面影さえ見える。
「てめぇらに、客だ!」
すごく、上擦った、興奮したような声。
二人は目を合わせると首を傾げ、立ち上がった。
「彦五郎さーん…あんまり興奮すると、血圧が…」
つべこべそう言いながら戸を開けると、物凄い光景が瞳に飛び込んできた。
「う…そ…」
「先輩?どうしたんですか?」
市村が後ろから声を掛ける。
そして襖を覗いた。
「…え………」
市村はポカンと口を開けたままだ。
「皆さん…」
「よう。久しぶりだな」
懐かしい顔ぶれ。
中には大口を開けて笑う原田、永倉、藤堂、それに斉藤もいた。
「……よう」
永倉は、憂いが含まれたような、そんな笑い方をした。
「み…皆さん…!無事だったんですね!」
「ははっ!美海。それはこっちの台詞だよ」
藤堂がそれを聞いて、笑った。
「お前らが蝦夷地で、どんなけがんばったか、聞いてたよ」
「土方さんも総司も、無茶しやがって。近藤さんなんて…本当にあの人は…」
永倉の後に原田が俯いた。
そして皆、思い詰めたように暗くなる。
「ごめんな…。あの時、離れて」
永倉がそう呟いた。
きっと、ずっと、そればかりが気がかりだった。
「いえ。きっと、どうなっても、こうなってたんですよ…」
それに美海は小さく笑った。
そうだ。どうなっても、きっとこうなってた。